「将棋界の一番長い日」の未来は明るい気がした
2月29日、静岡市の浮月楼にて将棋名人戦・A級順位戦の最終局が行われました。
将棋界のトップ10名の一斉対局、前夜祭もあり、
ときの名人――藤井聡太竜王・名人が大盤解説を務めるとなれば、タイトル戦もかくや、という盛り上がり。
一度でいいから、最終局の大盤解説に行ってみたいものです。
順位戦は、今期の結果が来期の順位に直結し、それによって昇級、降級に大きな影響があることから、いわゆる消化試合はありません。
さらに今期のA級は、挑戦、降級が決まらないまま最終局を迎え、まさに命運を決する一日です。
(挑戦権争いについては、プレーオフの可能性がありました。)
前日には、朝日新聞のYouTube「囲碁将棋チャンネル」で、将棋ファンおなじみの村瀬信也記者、北野新太記者にゲストの山本博志五段を迎え、みどころの解説がありました。
「角換わりは独身有利」
「子育てしながら△8四歩は凄い」
これらは山本五段のオリジナルではないそうですが、見かけのキャッチーさとは裏腹、現代角換わりの深淵、その重みに触れる言葉です。
だから、というわけではありませんが、今期、惜しくも降級となったのは、広瀬章人九段、斎藤慎太郎八段という既婚者お二人。
特に斎藤八段は、ここ最近なかなか調子が上がらず、ファンの一人として心配しています。
5年以上前になるでしょうか、JT杯(将棋日本シリーズ)で斎藤先生の暖かさ、読みの鋭さに心を打たれた者として、再起を願っています。
挑戦権争いも熾烈でした。
対局姿勢から闘志をむき出しにする菅井竜也八段に対し、すらりとした座り姿の豊島将之九段。
その豊島九段が徐々に前傾姿勢になり、読みに没頭する様は美しささえ感じます。
大盤解説会では、藤井聡太竜王・名人が、対局者の読みを立て板に水で披露していきます。
対局者心理に触れる解説者はおられますが、読み筋をここまで滑らかに語る解説は、凄い以外の言葉が見つかりません。
なかでも、佐藤天彦九段-稲葉陽八段戦での「7種穴熊」の解説は出色でした。
自玉の周りを全種類の駒で埋める穴熊で、本当にレアなようですね。
対局だけでなく、大盤解説会をwebで中継していただけるのは本当にありがたいことです。
運営の皆様には、感謝してもしきれません。
最後に触れておきたいのが、中村太地八段のYouTube「棋士中村太地将棋はじめch」です。
中村八段を応援するライブ放送という形でしたが、全5局の形勢が一目で分かり、それに伴う暫定順位がリアルタイムで変動していく、という画面構成は非常に分かりやすいものでした。
今期のように降級の条件が複雑な場合、ファンが一番知りたい情報はこれだと思うのです。
デザインもスマートかつ理解しやすく、ABEMAや新聞社のYouTubeでも導入してほしいですね。
年に一度はやってくる「将棋界の一番長い日」。
今後の将棋の楽しみ方、観る将の未来が拓けた一日になったように感じます。
対局者、関係者の皆様ありがとうございました。
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