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川上稔氏と、都市シリーズと、VIRTUAL-CITY

川上稔氏を知ったのは高校生のとき。

一番の友人から「パンツァーポリス1935」を薦められてのことでした。

史実からは離れた第二次世界大戦期の独逸、伯林(ベルリン)が舞台。
小気味いい文体に個性的なキャラクター、練られた世界設定に、没頭して読んだのを覚えています。

たとえ予想できたクライマックスでも、それを物ともしない勢いがみなぎっていました。

続くロンドン――「エアリアルシティ」が助走だとすれば、3作目の「風水街都 香港」で跳躍し、「奏(騒)楽都市OSAKA」において都市シリーズは頂点を極めたといえます。

「奏(騒)楽都市OSAKA」には、小説とゲーム、同名の作品があります。

東西で対立する日本、総長連合と呼ばれる学生自治組織のリーダー達が、覇権と誇りをかけて戦う小説と、
その2年後の1998年、世界初の広報塔BABELの使用権を企業と高校生が争うゲーム(PlayStation)。

舞台や設定は共通しますが、まったく別の物語です。

ゲーム版「奏(騒)楽都市OSAKA」はとにかく遊び尽くしました。
いや、あまりのボリュームですので、尽くしたとは言えないかもしれません。それだけの圧倒的な作品です。

ゲーム版OSAKAについては、別にnoteを書いていますので、興味のある方はご覧ください。

「パンツァーポリス1935」を薦めてくれた友人とともに、テーブルトークRPG「GURPS」で「奏(騒)楽都市OSAKA」を再現しようとしたのも良い思い出です。

人生で最も影響を受けたゲームは、おそらくこの「奏(騒)楽都市OSAKA」でしょう。


そんな作品を世に出してくださった川上稔氏――デビュー間もない頃、「先生」と呼ばれるのを嫌っておられました。そこでこの記事では氏と表記させていただきます。

川上氏が運営されているのが「VIRTUAL-CITY」というサイトです。

1999年2月から、とありますから、まさに小説版OSAKAが出版された時期。
川上氏が乗りに乗っている頃です。

このサイトによって、エッセイやイラストなど、文庫本からは知ることができなかった川上氏の才能、そして交友関係のディープさをファンは知ることになります。

MYA氏や破軍星氏との間で繰り広げられる「同人戦線第○射撃」は何度読んだことか。
プロとは、アマチュアとは何か、考えさせられたものです。

「VIRTUAL-CITY」には、今となっては懐かしい「掲示板」があり、ファンと川上氏が直接やりとりすることができました。
作風そのまま、長文を投稿してくださる川上氏に、コアなファン。

一つだけルールがあり、それが「議論禁止」というもの。
いくら有用なディスカッションでも、議論とみなされれば容赦なく削除されました。

当時は厳しく感じたものですが、思い返せば、掲示板を秩序立てる慧眼でした。


定額小為替で限定通販本を購入したり、年賀状を送ってお返事をいただいたり、SNS全盛期の現在とは違った交流がありました。

X(旧Twitter)でも発信されている川上氏ですが、今も「VIRTUAL-CITY」を維持されているのには頭が下がります。

かつての川上氏の主戦場、都市シリーズを懐かしむのも良いものです。


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