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モロッコ料理との運命の出会い。
2021年9月。
セラピストからの転職で2019年に始めた飲食の仕事は、緊急事態宣言による完全休業を余儀なくされていた。
当初、元オーナーがカフェバー として始めたお店なので、アルコールが出せない業態は考えがつかなかった。
飲食業ど素人にも関わらず、お店という場を失くしたくない一心で、もがいていた。
営業が再開したとしても、新規オープンしたばかりで常連さんも少ないお店にお客様が戻ってくるのか。
バーテンダーでもない自分に何ができるのか。
お酒を飲む気持ちになれないことは、もちろんのこと、食欲すらもなくなりかけて、とりあえず何でも良いからお腹にいれるだけのような毎日だった。
そんな時、友人から、ハーブのヘナで頭皮をデトックスして髪を染めるワークショップに誘われた。
何か行動をしないとという気持ちに駆り立てられ、重い腰をあげて、久しぶりにおそるおそる電車に乗った。
ヘナは何度か、したことがあったので、一通りが終わったあと、ヘナの先生が用意してくれたお昼ごはんを食べることになった。
これが、運命のモロッコ料理との出会いになる。
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食欲も気力もなくなりかけていた心と身体に、スパイスの効いたモロッコ料理が、するするすっーと自然に入ってきた。
自分でも驚くほど、無我夢中で食べた。
生まれて初めて食べる味なのに、懐かしいような味。
柔らかく蒸された野菜にしみいる異国の香りのスパイス。
ほろほろとろける鶏肉。
クスクス、思わず笑みがでるような名前の世界最小パスタ。
食べていくうちに、身体の奥底が、なんだか魔法にかかったように、力が蘇ってきて、澱んでいた視界が開いて、目の前の世界が色鮮やかにさえ見えた。
世界には、まだ知らないたべものがあって、たべものは、こんなにも人を元気にするんだ。
モロッコ料理を勉強してお店で出そう、出来るのかもやり方も知らないのに、そう決めた。
モロッコのお皿も可愛らしかった。
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先生に、お皿の購入先を聞いたら、コロナで雑貨屋さんが買付に行けないから、メルカリにあるよと教えてくれた。
まずは、肝心な調理器具のタジンをメルカリで探した。
今でも、毎日使っている、大切な相方。
タジン(=鍋)で蒸す調理法が、モロッコ料理の特徴のひとつ。
お皿もメルカリでたくさん見つかった。
最初に買ったのは、直径35センチの大皿。
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このお皿で、料理を出すと、お客様から「わ!!」と歓声があがる頼れるお皿。
クリスマスに買い足したお皿。
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最初にメルカリで購入してから2年。
日本でも数少ないモロッコ料理のお店だけど、代々木八幡のモロッコ料理のお店ビブグルマン3年連続受賞、「エンリケマルコス」の店主だった小川歩美さんが、沼津出身と分かって、去年、一緒に沼津ではしご酒をさせていただいたり、なかなかなじみのないモロッコ料理を広めるべく、うちのスタッフがモロッコ焼きそばを開発してくれたり、モロッコ料理との運命の出会いの物語は、続いている。
この春から、また新たなメニューを作るために、お皿を新調しようと思い、メルカリで探した。
使うには勿体なさすぎるお皿が見つかって、壁に飾った。
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一番最初にモロッコ料理を食べた時、先生のお家の壁にモロッコのお皿がかかっていた。
モロッコのお皿の裏の淵には穴があいていて、そこに紐を通して壁にかけられるようになっているのだ。
お店の壁のここしかない絶妙な位置に、もともと釘がささっていたのも、何かの偶然のみちびきみたいで。
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お皿を見るたびに綺麗な心持ちになり、お客様も喜んで眺めてくれて、お店を見守ってくれている。
海外旅行に行けなかったり、海外の欲しいものが新しく入ってこなくても、メルカリで世界が大きく広がった2年、これからも大切なものを探しにいこう。
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