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絵本 『メルシーのすてきなおへんじ』を作った時のこと。

今回は10月15日に発売したひるねこBOOKSレーベル絵本「メルシーのすてきなおへんじ」の絵本制作について書きたいと思います。

まず最初に、
ひるねこBOOKSレーベルとは、東京•谷中に構える「猫と北欧」を中心としたオールジャンル取り扱う本屋さん「ひるねこBOOKS」のオリジナル絵本レーベルのことです。猫が主人公の絵本となっていて、ご店主の小張さんが「児童書とイラストの未来を繋ぐの架け橋」をしたいという想いから、作家さんと二人三脚で作り上げ、これまで9冊の絵本が出版されています。そして、わたしは今回第8段目に起用していただくことになりました。

お話をいただいた時のことは今でもよく覚えています。いつものように私家版絵本の納品で訪れた時のことです。
「うちはレーベルの絵本を出しているんだけど、この絵本をきっかけに絵本の出版に繋げるために、来年の絵本を一緒に作りませんか?」
小張さんは平然と言いました。
わたしはレーベルの絵本があることも知っていましたし、密かにやりたいな…と思っていたので、お話を聞いて一瞬ポカンとしてしまいました。こんな嬉しいご依頼があっていいのかと、内心大喜びでお受けしました。

メルシーの元になったイラストレーション

さて、こちらはSNSアカウントのアイコン用に描いた1枚です。絵本が大好きなトラ猫さん。この時は動物の表情や仕草の描き方の研究をしていたのもあって、手足がしっかりとした猫さんの絵を描いていました。やがてメルシーという名前がつきました。これが今作の絵本の主人公「メルシー」ができた時のことでした。

この絵本の物語を考えるに当たっては、ひるねこBOOKSの理念である「こころ豊かな暮らし」という言葉を大切に、暮らしの中で起きた心の変化や気付きを描きたいと思いました。そこでメルシーとねこたちがどんな風に暮らしているのか、小さな絵を描きながら思い起こしていきます。ベットはこんな形かな、ティーポット、コップはこういうのを使っているのかな....という風に。

絵本の物語のきっかけとなるイラストレーション

こちらは企画をにあたってのきっかけとなった絵です。
手紙のモチーフは私家版絵本「わたしのおうちで」でも描いているので、わたしにとって、手紙の絵を描くことは特別なことではありませんでした。しかしこの小さな絵はを見ていたら「メルシー、それは誰からの手紙なのかしら?」と疑問が湧きました。その後はメルシーが映画のようにわたしの頭の中で動き出していきます。企画の絵本ラフはその時思い立って、3時間くらいで描き上げたと思います。

絵本ラフの制作がひと段落した時、ありがたいことに、もう1冊絵本11月25日発売「かくれんぼハウスへようこそ」(ほるぷ出版)の商業出版が決まりました。制作活動をして10年目に、好きな本屋さんから、そして好きな児童書の出版社さんから2冊絵本出版が決まったことは、諦めないで続けてよかったと、とても嬉しかったことを覚えています。しかし2冊同時進行での原画制作も初めてです。締切に間に合うのかどうか不安でしたが、今が人生で一番の勝負時でありこんなに楽しい制作はないと思い挑みました。予備校時代の夏休み合宿前のように好きなお菓子やお茶、肩こりの湿布、制作中の音楽の選曲など制作前にたくさん準備をしました。その準備もとても楽しかったです。

今回の絵本の本番制作で大切にしたことは「見ているだけであたたかくなる」絵作りでした。
主人公メルシーたちにも「ぽぽぽ」とあたたかくなるような洋服ともっちりふわふわのカシミアのセーターを着せました。コパンくんには柄がかわいいちょっと硬めのアンゴラのセーター、ローリエさんにはお花の柄が素敵なフェルトのコートを。文具店店主ねこばりさんのマフラーは以前ひるねこBOOKSの小張さんが巻いていたマフラーをモデルにして描きました。身も心もあたたかいというのは「こころ豊かな暮らし」にも繋がっていることなので、しっかりと描いていきました。

ひるねこBOOKS ご店主小張さん

ひるねこBOOKS 店主小張さんより

ひるねこBOOKSレーベル第8弾となった『メルシーのすてきなおへんじ』。作者は、絵本作家・ぬまのうまきさんです。

昨年、自作絵本の『わたしのおうちで』を取り扱い始めたことが彼女とのご縁の始まりでしたが、その温かな絵を一目見て「ひるねこBOOKSにとって大切な作家さんの一人になるに違いない」と確信したのを覚えています。

2月のグループ展「ねこのひるね展」への参加を早々に打診し、コンセプトを伝えたところ、「ねこのひるね」という当店にとっては特別なワードをしっかりと理解し、『ねこたちはきょうもすやすや』という本を作ってくださいました。この頃にはもう、「次のレーベル絵本をお願いするのはこの人しかいない」と決めて動いていたと思います。

そして出来上がった今回の『メルシーのすてきなおへんじ』。メルシーのところにおばあちゃんからお手紙が届いたことから物語が始まります。

「素敵なお手紙に、素敵なお返事をおくりたい」そんな発想にメルシーの優しさがにじみます。そして「すてきなおへんじってなんだろう?」とお友達に聞きに行くところにもメルシーの柔軟さ、他者への信頼が表れていて、ぬまのうさん自身の朗らかな人柄を重ね合わせています。

絵本の内容についてはぜひご一読いただければと思いますが、間違いなく、お読みいただいた全ての方の心を温めてくれるものと思います。

おばあちゃんを思うメルシーの気持ち、そんなメルシーのことを考えてくれるおともだちの優しさ。メルシーたちの可愛らしい仕草や表情。隅々まで丁寧に描かれたお部屋の中の模様や置物。この絵本には色々な「愛」が詰まっているなと思います。

オレンジや茶色を主軸にした色遣いも、秋〜冬の雰囲気にぴったりです。絵本を受け取ったとき、毛糸の手袋やマフラーをもらったような気持ちになりました。

今は10月。これからだんだんと寒くなる季節です。今年の冬はどこでどんなことをして過ごしましょうか。誰かにお手紙を書くのも、友達に会いに行くのも、お部屋でドーナツを食べるのもいいですね。

この絵本で、あなたの心も「ぽぽぽ」温かくなりますように。

ひるねこBOOKS 小張隆


最後に、
この一年半の間にたくさんのご縁が繋がって、活動の場も広がりました。この絵本はこれまでに出会った方々への「おへんじ」になってほしいと思っています。とてもあたたかくて可愛い絵本になりました。少しでも多くの方に届くといいなと願っています。


創作絵本『メルシーのすてきなおへんじ』(ひるねこBOOKSレーベル)
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ISBN 978-4-86774-052-1 本体1600円
2022年10月15日刊行


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