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観劇メモ:雪組『f f f ~歓喜に歌え!~ / シルクロード ~盗賊と宝石~』


ダスカァァァァアアア!!!


ハッ、つい取り乱しました。好きが溢れて。

雪組公演『f f f ~歓喜に歌え!~ / シルクロード ~盗賊と宝石~』見ました。見ましたよ!! 勧める相手は選ぶけど、めっちゃ面白かった。良き。良すぎた。

以下、パンフにある程度のネタバレを含みつつ、楽しかったという記憶を残します。めちゃくちゃ良かった……


fff。

聴力を失したベートーヴェンの第九に創作に至るまでの秘話(超ザックリ)。なぜ彼は聴力を失い、そうでありながらも数々の名曲を世に送り出したのか。史実をベースとし、ファンタジー的要素で間をつなぎながら、『第九』に至るまでの道筋を物語っていく。

出てくる地名・人物名は世界史や音楽史ではおなじみの人たちばかりで、人物設定や関係性は基本的に史実を踏襲されている、と思う。関係性や年代には大いに脚色がありそうだけれど、例えばゲーテとベートーヴェンが共にいた際、貴族に頭を下げるゲーテにベートーヴェンが憤る、というのはよく伝えられている話。いくつもの「本当」のディティールを拾い上げ、間をつなぐ「創作」が紡がれ、そうしてこの壮大な物語に仕上がっているのだな、と、しみじみと感心する。

宝塚を知ると歴史に詳しくなる、とは知人の言葉だけれど、まさにそうだな、って思う。歴史を知ることで、場面の背景や人物の背景などを知ることとなるし、ナイワとONCE UPON~の繋がりのような面白さを、もっと長期スパンで堪能できる。中学時代に宝塚見てればなぁ!!(世界史が大変苦手だったので)

ちょっと気になったのは、「対話」のシーン。一対一の会話劇になった際、そこで語られる情報の多さに、ふと足が止まってしまう気がして。ハイカロリー過ぎて脳の処理に時間がかかるせいか、「長い」って感じる場面も正直ありました。語られている内容は、この語りでしか伝えられない、伝えきれないもので、必要だしとてもいいんですが……ムズカシイネ。

もしこれから見る、という方がこの駄文をみていらっしゃったら、せめてもパンフレットは読み込まれてから臨まれた方がいいかな、と思います。終わって読み直すと、必要な情報は書かれているなと思ったので。

とはいえ、ラストの圧倒的なラスト感。こうくるだろうな、と予想をしていたにも関わらず、ものすごく泣けて仕方がなかった。その涙の種類は、喜び。凄まじい爽快感と、喜びが心の奥からブワァッ!と溢れるように出てきて、ついでに涙が出たって感じ。美しい終わりです。

全体を通して、一番好きなシーンは最後ではあるのだけれど、同じくらいオープニングも好きです。「三人の死せる音楽家」たちがワイガヤと動き回るアバン、からの序章。ベートーヴェン、ナポレオン、ゲーテという3人の姿は、それだけで重厚な物語の始まりを予感させてたまらない。

そして舞台機構の使い方が凄まじかった。場面と場面は繋がり、シームレスに繋がっている。暗転してセット替え、という印象はほとんどなくて、ものすごく流動的に物語が次の場面へと移り変わっていく感じ。裏で動かされている方は、とてつもなく大変だろうな!

そのためか、演者がものすごく走っている感(ドタバタしている、とか、忙しない、という意味ではない)。え、常からこういうものなの……? それなのに、1日2公演とかやってるの……?化け物なの??

あとオケピの使い方もとても面白かった。いまこのコロナ禍というご時勢、生オケでこの物語を観たかったな、という気持ちはあるけれど、この時期だからこその演出がとても面白かった。もし未来に再演されることがあるとして、同じようにはできないだろうな、と思うからこそ面白い。

作中にカントが出てくるなど哲学的な要素も多く、かみ砕き飲み干すのに時間はかかるけれど、それをひっくるめても面白かった。あと、朝美絢さんに落ちました。



シルクロード。

流転するホープダイヤモンドを追い、流れ着いた先でダイヤを巡って起きる物語を傍観していく、ということなのかな。彩凪翔さん率いるキャラバン隊が、時空を超え、狂言回しとしてこのダイヤを追っていく感じ。

冒頭から叫んだ「大世界(ダスカ)」は、上海の租界に実在した一大娯楽施設であるダスカを舞台に描かれたシーン。歌姫がクソカッコイイラップをかますクラブの中で、紅幇と青幇という二大秘密結社が衝突。のシーンが、最初から最後までクソカッコ良すぎる。あれだけで1時間のショーを作って欲しいです。見たいよ!!

そしてまんまとこれで彩凪翔さまに落ちる訳です。1公演で2人に落ちるとか予想外。いや、正直fffの時から気になっていた訳で、時間の問題で、でもこりゃ落ちたなーと終演後にパンフでお名前を確認した途端、「あああ、ご卒業なさる方じゃないか!!」となった初心者です。マジで泣いちゃう。

観る前は「シルクロードで上海……?」とかいう、些細でどうでもいい点に引っかかっていたわたくしですが、もうそんなんどうでもいいわ。カッコいいから。黒燕尾と同じくらいの勢いで、眼福の場面でした。

あとは場面前後しますが、fffで誠実なお顔をなすっていた朝美さんの、そのふり幅を堪能できる千夜一夜、そして彩凪さんの溢れる色気を全力で堪能できてしまう、フィナーレのはじまりも好きです。ああ、いいもの観た……。


卒業に向けて作られたショー、という背景から、ドハマりしたダスカにも、望海さんが以前に演じられたお役がかけあわされているなど、「これまでを観て知ってきた人たちへの、そして生徒さんへのごほうび」みたいなものがアチコチに散りばめられているようで。そういったことにまだ不勉強なわたしは、ただただ「あれ、めっちゃカッコイイねぇ」という、語彙力が消失した感想しか持ちえないのが残念です。

でも、そんな残念ヤロウであってさえ、なんらかの言葉を残したいと考えるほど圧倒される面白さ凄まじさ美しさ格好良さ。初見の終演後、「ヤバイマジカッコイイ」しか言えなかった自分に、深い反省を促したいと存じます。磨けよ語彙力。記憶が鮮明なうちに色々と思い出を残せるように。


オマケ。

とても良いお席で、肉眼でバッチリ見えるにも関わらず、なにかっていうとオペラでガン見した3回目の観劇について、深く反省しています。たぶん見られていた方も、気づいてしまったらさぞかし気持ち悪かっただろうな……。でも、次もしまたあのお席をゲットできたとして、またオペラ使っちゃうだろうな。

表情を見たいんだよ、眉間にふと寄せる皺、口角、目線、全部見たい。でも全体も観たい。困ったことです。