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家でラーメン自作の民

こちらはSplathon vol1. Advent Calendar 20日目の記事です。

昨日はperoliさんのゲーミングおつまみのレシピでした。実際にperoliさんが作った料理を食べる機会があって、彼の作る料理は美味しいものばかりでレシピとか出してくれないかな~と思っていたところだったので参考になりました。特にりゅうきゅうがオススメです。

なぜラーメンを作るのか

時は2020年、世はなんやかんやあってリモートワークの時代となり、多くの人々は自宅で過ごす時間が増えた。私も例外ではない。

リモートワークをしながら腹を満たそうとすると、自炊する、近所のスーパー等で出来合いのものを買う、外食する、といった選択肢がある。幸い徒歩圏内にスーパーがあったので、自炊経験のある身としては食べるのに困ることはなかった。
しかし、自炊生活を続けていると自身が作れる料理のレパートリーの乏しさに気付く。味付けも似たようなものになり、徐々に飽きが来ているのもわかった。食べて満腹になっても何か物足りない。体は腹ではなく心を満たす食事を求めていたのである。

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心を満たしてくれる食事の例

そんな、人と会えない寂寥感とは違う心の寂しさを覚える生活を続けていく内に、毎日Google Mapで近所のラーメン屋を検索し、心を満たしてくれるラーメン屋がないことに絶望を覚える自分が居た。この閑静な住宅街には、おいしいラーメン屋どころか飲食店すら近所に無いとわかっていても、毎日検索していた。

満足行くラーメンを自分で作るしかない。そう決意したのが2020年4月だ。

情報と材料を集める

※ここから豚骨(とその血)が含まれる写真が出てきますのでご注意ください

そもそも今の自分が食べたいラーメンとは何なのか。
自問自答した上で導き出されたのは、ラーメン二郎だ。

当時はいつも行っていたラーメン二郎は営業が不安定になっており、その次に通っていた店舗は電車を乗り継いで行かねばならない距離にあったため、気軽に食べられるものではなかった。
比較的近い場所にある二郎インスパイアを食べては「本物が食べたいなあ」と呟き、配給された固形栄養食を食べるSF小説の登場人物さながらのメンタルであった。

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本物の二郎(荻窪店)

ラーメン二郎を家で自作しようと決めたら、まずはレシピ集めだ。
豚が使われていることは恐らく全人類にとって既知の事実だと思うが、豚のどの部位が使われているのか、私は知らなかったのである。
調べてみると、豚のゲンコツ(大腿骨)、背ガラ(背骨)、背脂はどのレシピでも使われていることがわかった。肉のハナマサがあれば大体そこで揃うが、近所に豚骨を取り扱っている場所など無い住宅街の形をした砂漠に住んでいる私は通販に頼らざるを得なかった。
この頃は自炊や製菓の流行によってスーパーからパスタや小麦粉が消えており、ラーメン自作ブームによって市場から豚骨が消えることを危惧していた私は、考える間もなく注文ボタンをクリックしたのであった。
結果、豚骨よりも高い送料を払い、自宅に箱詰めされた豚骨が届いた。

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ゲンコツ(下)と背ガラ(上)

レシピであるが、ラーメン二郎を自作しようとする先人達は多く、検索すればすぐに出てくる。レシピ共有サービスや個人ブログ、Youtuberの動画まで参考に出来るものはとにかく参考にした。

参考例:
家二郎!ラーメン二郎っぽいラーメン☆
全て自家製!ラーメン二郎の麺とスープの作り方を写真で紹介 – 家二郎
※動画【二郎】店直伝のレシピで全マシマシマシマシマシマシ二郎ラーメン

鶏ガラを使っているもの、そもそも豚骨すら使っていないようなものを除き、集めたレシピのいいとこ取りをするという後発の強みを生かしたレシピで作ってみることにした。

レシピ

いいとこ取りをするといっても、このレシピのほぼそのまんまである。
家二郎!ラーメン二郎っぽいラーメン☆

色々なレシピを参考に作ってみたが、このレシピが一番それらしい仕上がりだった。ここから自分流に調整したいところだが、そう思っているうちにアドベントカレンダーの季節が来てしまった。時間の流れというのはラーメンの麺が伸びるように速い。

材料は以下の通り。

スープ(4.5L)
- ゲンコツ / 1kg
- 背ガラ / 1kg
- 背脂 / 1.5kg
- 豚肉(好みの部位) / 1kg
- 豚挽き肉 / 500g
- ニンニク / 2房
- 水 / 大量

カエシ
- 濃口醤油 / 500ml
- みりん風調味料 / 200ml
- うま味調味料 / 大さじ1

ブタ
- スープに使った豚肉 / 全部
- カエシ / 全部

トッピング
- もやし / 1袋
- キャベツ / 1/16
- ニンニク / 任意の量
- ブタ / 任意の量


- 低加水でオーションを使用した麺 / 任意の量

その他
- カエシとスープを合わせるのと一緒に入れるうま味調味料 大さじ1

スープを作る

まずは豚骨を10分ほど下茹でする。
この工程はする派としない派があるようだが、スープが不快な方向へ臭くなるリスクを考えると下茹でしたほうが無難だ。
下茹でしていると、日常生活では見ることはないであろう量の灰汁が表面に浮かび、地獄の様相を呈する。
これは骨に付いた血などが固まって浮かんできたものだ。すくって除去しよう。
結局この茹で汁は捨てるので、この段階では正直灰汁取りはしなくても良いのだが、楽しいのでやったほうが良い。
私が仮にラーメン屋を経営していて近所の中学生が職場体験に来たら灰汁取りをやらせることだろう。

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地獄のような灰汁

下茹でが終わったら、一旦豚骨をザルなどにあげて水洗いする。
黒っぽい血の塊のようなものや、背ガラの神経らしきものが残っているので、それらを取り除く。神経質になる必要はなく、大体取れれば良い。

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ある程度綺麗にした豚骨

豚骨の下処理が終わったら、ここからスープを炊いていく。
鍋に水と豚骨を入れる。
今回の分量だと4.5Lのスープを取るので、大きい鍋(10L↑)が用意出来るなら豚骨と水4.5Lを入れた状態での水かさを覚えておくと、炊きあがりのスープの量を調整しやすい。私は大体忘れる。
そこに横へ真っ二つにしたにニンニクを入れ、火を付けて一旦沸騰させる。

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この方向に真っ二つにする

沸騰したら少しだけ灰汁が出てくるので除去する。
灰汁が出てこなくなるのを待ちながら、肉を入れる準備だ。挽き肉は出汁を取った後に別の料理で使いたいので、回収できるようネットに入れる。
出汁取り用の袋があると良いが、排水溝用のネットで代用出来る。
意外と熱に強い。

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灰汁が出てこなくなったら、用意した肉と背脂を鍋に投入する。
水かさが一気に増すので、小さい鍋を使う場合、最初の豚骨と水を入れる工程では水の量を控えめにすると良い。何も考えずに入れると漏れなく洪水が起きる。

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10Lの寸胴にスープの材料を投入した状態

あとは焦げないよう20分置き程度にかき混ぜつつ、5時間ほど中火で、しっかり乳化させたい場合は強火で炊く。

無理矢理スプラトゥーンに絡めておくと、私の場合ガチマッチ2, 3試合終わる毎に1回のペースでかき混ぜるようにしていた。ラーメン作りはスプラトゥーンと相性が良い。
ちなみにこの記事は炊きながら書いている。
なお、ブタ用の肉は90分ほど炊いたら取り出してカエシに漬けるので忘れないようにしよう。
5時間ほど炊くと背脂が柔らかくなり、スープもそれらしい色になる。

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この段階で味見をすると塩気はないがうま味がある

カエシを作る

ネットで集めたレシピを見ると、カエシの醤油とみりん風調味料の比率は大体5:2であった。この比率で合わせれば量はお好みだが、今回は500ml:200mlで合わせていく。
合わせたら、そこにうま味調味料を加えてみりんのアルコールが飛ぶまで沸かす。
本みりんではなく、みりん風調味料をあえて使うと本家に近付くらしい。
カエシを作る時に知ったのだが、本みりんはアルコールがそこそこ含まれているため冷暗所での保存で良いが、みりん風調味料はアルコールが少ないので開栓後は要冷蔵である。ラーメン作りは我々に知見を与えてくれる。

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カエシ

ブタを作る

スープを炊いて90分経ったら豚肉を取り出す。
ラーメン二郎では豚のウデ肉を使用しているところが多いので、あればウデ肉、無ければそれに近い肩肉などを使うと本家らしいブタになる。
バラ肉で巻きブタにしても関内店のようにできるので、選択肢の1つだ。
袋かタッパーに粗熱の取れたカエシと肉を入れて漬ける。
この工程はブタの旨味をカエシへ移すのも兼ねているので、ブタ用に別のカエシを作る必要はない。
漬ける時間は好みだが、カエシが結構塩っぱいので1時間半程度でも十分に味が付く。一晩漬けると中まで味が染みるが、肉の水分が抜けて固くなるので注意が必要だ。

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袋だとカエシが少なくても全体が浸かりやすい

漬かったところで断肉式を執り行う。
人間の脳は大きな肉塊を切るという行為に対して快楽を得られるよう出来ているのか、テンションが上がる瞬間である。

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つまみ食いするか我慢するかの選択を迫られる

トッピングを準備する

キャベツ1/16を一口大の大きさに切り、もやしと合わせて茹でる。
茹で時間はシャキヤサイ派、クタヤサイ派の宗派に合わせて変えるが、
私はシャキ寄りのクタヤサイ派なので1分ぐらい茹でる。
2分も茹でればクタクタだ。シャキヤサイとクタヤサイのどちらが良いかを職場で話すと戦争になるので、政治や野球の話と同様に話題に出さないほうが良い。

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宗教によって扱いが変わる茹でられる前のヤサイ

ニンニクも刻んでおく。刻みニンニクの細かさにも宗派があるので、好みの細かさまで切る。文明の利器ことフードプロセッサーがあると速いが、無い場合は包丁で頑張る。店で入るニンニクは大きさにもよるが3, 4粒分ぐらいはあるので、ビビって1, 2粒にすると「あれ、思ったより少ないのでは?」となる。入れすぎると全てがニンニクになるので入れすぎには注意だ。

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宴の準備は整った

麺を茹でる

ラーメン二郎ではオーションという小麦粉を使った低加水の自家製麺が使われるが、ラーメン二郎ほどの低加水の麺を一般家庭用のパスタマシンなどで製麺しようとすると、マシンが麺帯の固さに耐えられずに壊れる場合がある。解決策としては鋳造された耐久性のある強い製麺機が必要だが、まだ入手出来ていないので出来合いの麺を使うことにした。
これは悔しいポイントで、出来れば製麺もしたかった。来年の課題とする。
オーションを使った麺はここなどで手に入る。オーション使用じゃなくても良いから早く食べたいと言うのであれば、スーパーでつけ麺用などの太くて強そうな麺を選ぶと良い。
私は固めの麺が好きなので、茹で時間を-30秒している。

仕上げ

麺を茹でている間にスープの仕上げをする。
先にお湯で温めていた丼にカエシ70mlとうま味調味料を投入する。
カエシが結構な量入っていることがわかる。ラーメン二郎のスープを完飲するというのは、このカエシ全てを飲むということである。
完飲は程々にしよう。

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逆にここまで入れないとあの味にならない

そしてここにスープ300mlぐらいを網で濾しながら入れる。
アブラも鍋の中に浮いているので掬って入れてしまおう。
茹で上がった麺を湯切りしてスープに入れ、各種トッピングを欲望のままに乗せれば完成だ。

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あとは啜るだけ

完全に店の味とはいかないが、近い味が家で作れた時、店で食べた時とはまた違った感動がそこにある。
自分で作ったものは旨いという言葉がよくわかる瞬間だ。
自分で作り、家で食べるのだから自由な食べ方が許されている。家系のようにご飯を添えても良いし、行きつけの店には無い調味料を掛けて楽しむのも良い。

ポイント

ラーメン二郎は豚骨を使ったラーメンであるが、ラーメン二郎をラーメン二郎たらしめているものは何かと言われると、恐らく豚骨では無いと思う。
九州地方でよく食べられている豚骨ラーメンも豚骨を使ったラーメンであるが、ラーメン二郎らしさを感じることはない。
私は、ラーメン二郎らしさとは肉と背脂によって作られているのではないかと考えている。私が1番参考にしたレシピの作者も「豚骨ラーメンではなく、豚の旨味ラーメンだと思う」と言っていて、その通りだと思う。
今回はお財布事情と一人暮らしで食べきれないという理由で肉の量を減らしているが、本来はもっと肉を入れるべきなのだろう。
また、この記事を書くまでに試作したものはいずれも「何か違う」もので、思い返せば背脂の量が今回の1/3ほどだった。
豚骨をベースに、そこへ肉と背脂の旨味を乗せたパンチのあるラーメンがラーメン二郎なのだろう。

コストパフォーマンスについて

Twitterで何度か自作のラーメンをUpしていて「店で食べるより安い?」と聞かれることがあるが、結論から言うと店で食べるほうが安い。
材料費自体は思ったほど高くないのだが、そこに人件費や光熱費などを乗せると1杯数千円になるし、何より労力が掛かる。ラーメンを自作するというのはコストを抑えるためではなく、その手間暇も含めて楽しむ1つの趣味として捉えたほうが良いだろう。

実際に作ってみてわかったこと

先ほどのコストパフォーマンスとも被るが、ラーメンを自作してみてわかったのは、日本のラーメンの値段に対するクオリティの高さは素晴らしいということだ。
1000円札を握りしめてラーメン屋に入れば、スープやトッピングの仕込みに手間暇を掛けた美味しいラーメンがすぐに食べられる。

ラーメン屋のスープへのこだわりとして「n年研究して完成したスープ」といったものがあり、これまで私は「そこまで時間が掛かるものなのかなあ」と正直思っていた。
実際にスープを作った今は「それぐらい掛かるだろうな」という感想だ。
スープを作るという1回の試行に必要な時間と労力が大きく、味を安定させるために使う材料の多さを考えても、短期間に試行回数を重ねるのは容易では無い。ラーメン作りを独学で研究し、脱サラしてラーメン屋になったという話は耳にするが、仕事しつつスープを研究するなんて相当の熱意が無いと無理だろう。

ラーメンが好きでうまいうまい言いながら食べるだけであったが、最近はどんなラーメン屋で食べても、このラーメンが生まれるまでにどんな積み重ねがあったんだろう、と思いを馳せるようになった。

ラーメン、それどころか料理でなくても、自分で作ったことがない、やったことがないというものを自分で作る、やるだけで、これまでの日常が今までと違った見え方をするかも知れない。

まとめ

リモートワークでラーメン二郎が気軽に食べられなくなったので自分で作ってやる、というモチベーションでラーメン自作を始めたところ、ある程度ラーメンが外で食べられる今となっても自作を続けてしまうぐらいの趣味になった。
ラーメン自作に限らず、やったことの無いことを始めてみると、いつもと違う視点でものごとを見れるようになるかも知れない。
近頃はまた家の中に居る時間が増えそうな状況なので、家に居ても出来る、何か新しいことを始めてみてはいかがだろうか。


明日はVol.1ではけーふかさんの「何か書きます」、Vol.2ではいかずちさんの「2020秋アニメ話数単位ランキング」です。
お楽しみに!

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