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「王様のような豊かさを日常の食卓から」料理研究家 佐々木 晋さん

“毎日の食が豊かになると、幸せになれる”と、食の魅力を発信し続けている ささキングこと佐々木 晋さんにお話を伺いました。

プロフィール
出身地:福津市
活動地域:添田町
経歴:高校卒業後は調理師専門学校へ通い、後に保育園、病院に7年間勤務。その後海外へ留学し、世界のさまざまな食に触れる。「食の持つ力をもっと多くの人と共有したい。自分の料理を通して、人を元気づけたり、安心させたり、ほっこりできるような場をつくり、料理を通して社会に貢献したい。」という想いから2019年1月から料理研究家としての活動を開始。2020年に独立予定。
現在の活動:現在は添田町の「地域おこし協力隊」として、地元の野菜の販売・加工、料理イベントなどを通して、食と共に地域の魅力も発信している。今まで手がけたレシピは1,000以上に上る。
座右の銘:「対等であり自由(自らに由る)であれ」 「吾唯足知」


Q:どのような夢をお持ちですか?

佐々木 晋さん(以後,佐々木 敬称略):一言でいうと、「ひとが大切にされる。ひとりひとりが幸せだと感じることができる社会」をつくりたいです。

そのために「食」という切り口で学びの機会を創出したり、人と人とが繋がるきっかけとなる場づくりをしていきたいと考えています。

毎日生きるうえで欠かせないのが「食」です。
食べることで人の身体はつくられているので、日々の食事の重要性にもっと目を向けてお手伝いができたらいいなと思います。
料理をすること、食べることは、毎日の習慣や心の在り方につながりますし、料理を行う過程そのものが生きる力を育むことになると考えているからです。

 私は、料理教室を行っていますが、家庭に持ち帰って実践してもらえるような料理教室を意識しています。その場で「楽しかった!」と思えることはもちろん、そこで学んだことを試してもらうのも意味があるものになると思います。

中でも大切にしている考え方は最初にもお話しましたが、人と人が関わる場をつくること。料理には人と人を繋いでくれる力があります。それは料理教室という場の中だけでなく、家庭の中での大切な人との関係もしかりです。例えば、教室で作った料理を日々の生活に取り入れて、お子さんにつくってあげるというのも家族の仲を深めることにつながりますよね。
 
現代社会はインターネットも発達して、便利になりました。素晴らしいことだと思います。その一方で、人との本当の繋がり(関係)が希薄な社会になりつつあると感じています。
これは私の考えですが、人は本来、一人では生きていけないと思っています。
「人間」とは「人」の「間」と書きます。だから料理が人と人とが「関係」を構築する懸け橋のようなものになってくれるのではないかと思っています。

記者:素敵ですね。


Q:「食を通して人と人が繋がり、ひとりひとりが幸せだと感じられる社会を創る」という夢に対してどのような目標や計画を持っていますか?

佐々木:今は料理研究家の活動を始めて5ヶ月くらいなので、まだ長期的な計画とかはあまり立ててないです。最初から独立をしようと思っていたわけではなく、自分ができることから始めようと思っています。

活動を行う基準としては、「自分がいま少しでも優れていて人の力になれるかもしれないと思うこと」「三方良しであるか」です。
今やっていること全てが自分にとっては新しい挑戦になるので、目の前のことを精一杯頑張っています。失敗したとしても、やってみないと見えてこないというところもありますし、失敗から何を学ぶかが大事だと思っています。
 
また、地域おこし協力隊が今年(2020年)の12月で任期満了するので、それ以降は独立し、ささキングとして活動を継続していけたらと思っています。


記者:挑戦し続けるその姿勢と、失敗したとしてもその失敗から何を学ぶのかというのは、大切なことかもしれませんね。


Q:目標や計画に対してどのような活動指針をもって、どのような基本活動をしていますか?

佐々木:基本活動という観点で、料理教室に関してお話ししますと、「家にある調味料や、普段使っているもので作ることができる」ということを心がけています。食材もなるべく旬のものを使います。

 あとは、「料理初心者です」っていう方でも大丈夫です。ということを大切にしています。料理教室って敷居が高いと思われることも多いと思うんですけど、料理ができないと思っている方にも来ていただきたいですし、料理を好きになっていただけたら嬉しいですよね。なので、初めての方も気軽に来ることができて、簡単に作れるようなレシピを考えています。

 その他でいうと、ずっと私が話すというようなスタイルではなく、ひとりひとりが話してもらいやすく、参加してもらいやすい環境作りを心がけていますね。参加者の皆さんはいろんな思いを持って来られているので、その思いなんかもアウトプットして頂きやすい、周りの方ともご縁がつながりやすい環境なども心がけています。なので、勝手に参加者さん同士で仲良くなったりすることも多いです。

あとは、「失敗しても大丈夫ですよ」といつも言っています。料理は正しく行うことも必要ですけど、それよりも「こういうふうにしたらおいしそうだな。」っていう感性を大事にしてもらいたいからです。

記者:家にあるものでできるのはすごく嬉しいですし、簡単に作れるレシピというのもすごく有難いですね。参加された方ひとりひとりと繋がっていくことを大切にされていることもすごく伝わってきますね。


Q:そもそも料理研究家、ささキングの夢を持ったきっかけは何ですか?そこにはどのような発見や出会いがあったのですか?

佐々木:私は調理師専門学校を卒業後、調理師として働き、病院の食事を作ったり、海外に行ったりと色んな経験をしました。夢を持ったきっかけはいくつかあります。

その中でも大きなきっかけになったのが、「働き方や社会への在り方」や「料理をしている目的」に対して「問い」を持ったことかもしれません。

 私自身、料理の専門学校にいたときから調理は好きだったんですけど、「トップダウンな料理界の世界観が合わないなあ。」と思っていました。
社会に出てからは、例えば職場で仕事ができない人や時間がかかる人に対して、「あの人は仕事ができない」と除け者にしたり、悪口を言ったりしている場面を見ることが何度もありました。

食べてくれる人達を幸せにしたくて料理をつくっているはずなのに、裏で料理を作っている人達は幸せそうではない。
その時、「なんなのだろう?この違和感は。」と思いました。

 その後職場を病院に移し、自分の作った料理が「患者さんの役に立てるのではないか」と思い働いていましたが、「美味しそうと素直に思えないこの食事を誰が食べるのだろう、食べた方たちはどう思うのだろう?」と自分自身思うようになり、次第に仕事が作業になってしまいました。
実際に調理の現場からは自分が作った料理を誰がどんな風に食べているのか見えない環境で、当時の自分にとってはやりがいが見えにくかったのかもしれません。

後になって「仕事は工夫次第でいくらでも楽しむことができるものだ」ということに気づきましたが、当時は分からなかったですね。

 料理は楽しいし、好き。食べることも好き。でもその反面、「もっと自由に料理を作りたい。」「人と関わる料理がしたい。」とすごく自分と葛藤しながら仕事をしていました。

 その後海外に留学をしたり、日本にやってくる留学生をサポートする仕事をしたりもしましたが、自分の理想の料理や仕事の意味を考えていった結果、「フリーでできる自分のスタイルにあった料理の仕事を自分でつくろう!」という結論にたどり着いたので、料理研究家という道にトライしてみることを決めました。


Q:専門学校を卒業されてから、食という分野においてさまざまな経験をされていますが、それだけの葛藤がありながらもなお、料理の道を続けていく背景には何があったのですか?

 もともと調理の道に進んだきっかけは、食べるのが好きということが始まりでした。
高校の進路選択の時、「大学に行ってなにを勉強しようかな?」と思っていたのですが、当時の私はこれといってやりたいってことがなかったのです。

そこで、「食べることが好きだし、調理の道にいってみよう!なにかスキルを持っていたらこれからの時代は強いかもしれない。」はじめはそのような軽い気持ちでした。食いしん坊だったこともあり、自分でおいしいものを作れるようになったら、おいしいものを食べられる!と思っていました。単純だったんですよね。

結論を言えば、誰かのためになり、世の中の役に立つことで、私に今できることが料理だったんです。レシピを試しに作ってみたり、料理の楽しさや様々な新たな発見があるからこそ、続けてこられたのではないかと思います。
 
最終的には料理を通して、「人との関係性が豊かになる。心が満たされる。幸せは日常の中にある。それを一人でも多くの方に味わっていただくためにお役に立てばいい。」と思うようになりました。

最近はメディアでも「フードロス」「貧困」「孤独」「働き方」「コミュニケーション」などの言葉がよく取り上げられていますが、「料理」が教えてくれた今までの経験の中で見えてきた社会の課題解決にもこれから取り組んでいきたい想いも強いですね。

それこそ私は小さい頃、学校から帰ったら母がよく手作りのおやつを作ってくれて、そのおやつをみんなで食べたり、ご飯を家族で食べたりというのは当たり前の環境でした。
それとは対照的に、貧困や様々な家庭環境の理由で食事を一緒に食べることができない、ごはんを準備してもらうことすらないような家庭で育つ子供たちも少なくないと聞きます。

皆忙しく、働いてもなかなか経済的に豊かになりにくい時代というのもあると思いますし、最近は「食事」が持つ意味が「ただお腹を満たすこと」という目的に形骸化されてしまっているのではないかな、とも思います。

私は幼少期の家族との食事の時間があったからこそ、幸せは日常の中にあるのだと気づくことができました。食の豊かな時間は身体だけではなく豊かな心や幸せを育んでくれます。そのような感覚を子供さんたちにはもちろん、忙しく働くお母さんやお父さんたちにも味わってもらえたら嬉しいです。

記者:料理とは何なのか?簡単そうですごく深く難しいテーマを追及し続けてきたからこそ、佐々木さんが毎日の食を通して人と人とがつながり、自然体で生きれる社会を作りたいという夢につながることが分かりました。本日はありがとうございました。


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佐々木さんの詳細情報はこちら

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【編集後記】

今回のインタビューの記者を担当した山口&曽田&加藤です。
終始笑顔が絶えず、穏やかに話されていたのがすごく印象的で和みましたし、話していて本当に人を大切にされていらっしゃることがすごく伝わってきました。
特別でなくても毎日の食が豊かになると幸せになれる、と語る背景にある思いは計り知れないものだ、と感じました。ぜひ今後も何気ない日常に欠かせない食の魅力を発信し続けて頂きたいですし、佐々木さんのご活躍を心から楽しみにしています。本日はありがとうございました。

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この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。


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