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2020 年4月28日、地点 新作「君の庭」製作発表会について

2020年4月28日(火)、ロームシアター京都主催のもと「2020 年度自主事業 地点 新作『君の庭』製作発表会」が開催されました。同発表会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ZOOMを利用してのオンライン会見となり、三浦基氏(地点代表、演出家)、橋本裕介氏(ロームシアター京都 プログラムディレクター)が劇場現地から参加。そのほかに『君の庭』の作・脚本を担当する松原俊太郎氏、矢作勝義氏(穂の国とよはし芸術劇場PLAT 芸術文化プロデューサー)、 堀内真人氏(KAAT神奈川芸術劇場 事業部長) がそれぞれ遠隔から参加しました。

作品内容についてはロームシアター京都より発表された記事をご参照ください。本記事では、以前より問題になっていた元劇団員へのハラスメントに関する部分のみを抜粋して構成しています。

同件に関しては、係争状態にあった地点側と元劇団員の支援窓口となっていた映演労連フリーユニオンとのあいだで「話し合いを通じて,元劇団員を含め関係当事者間で解決に至った」との、両団体による共同声明が今年3月5日に発表されています。また、それまでの経緯を受けて、三浦氏の2020年度のロームシアター館長就任は1年間の延期となりました。しかしながら、三浦氏本人によるコメントは今年1月16日にロームシアター京都で行われた新館長発表会見以降、いっさい発せられてきませんでした。したがって、今回のオンライン会見がハラスメント事案後初となる、三浦氏による肉声での応答となりました。

ZOOMを用いてのオンライン会見という特性上、質疑は前半部の記者会見終了後、出席者によるチャット入力による質問の事前提示というかたちで行われました。そのため、質問者と回答者との対話的なやりとりはなされなかったことを付け加えます。

前半部:記者会見

橋本 もうひとつ伺いたいと思います。地点はその昨年、元劇団員の方の申し出により団体交渉がありました。そして、それをもとにして周囲からも劇団に対する批判なども発生しています。いろいろと劇団としてもその対応に苦慮されたと思いますけれど、ひとまず解決ということになって、それを振り返って今回の件をどのような風に振り返っておられるのか。そしてまた、いまそれが劇団に与えた影響、そしてそれをふまえて今後取り組んでいきたいことがあればお聞かせいただけますでしょうか。

三浦 あのー、、ほんと久々に、こういうかたちで、ビデオの前ですけど、いわゆる人前でしゃべってますね。久々に。ちょっと緊張してるんですけど。

大変いろんな立場の人を結果的に巻き込んでしまったな、ということが、まず振り返りで印象としてものすごいあります。そのことは本当にご迷惑をかけたな、とか、心配をかけたな、という、、それはあります。

ただ、まあ、あのー、、解決したときにね、解決したときに、、ちょっとやっぱり声明、、何か声を発したほうがいいのかなという気持ちもあったんです。それがちょっとタイミングがいろいろ複雑で、いろんなこともあってなかなか声にできなかった面もあるし。

ただ原稿は、用意していたんです。3月、、用意してたんです。ちょっと今日、もしかして、あのー、そういった問い合わせがあったら喋ったほうがいいのかなと思って持ってきたんですけど、、。

橋本 ぜひ。

三浦 ただ時間的にその当時書いたものなので。ちょっとアレなんですよ。ただ読み直してみて、その時の気持ちといまほとんど変わっていないので、あらためて読まさせていただきます。

※()カッコ内は、声明の内容に対して、三浦氏本人が会見内で註釈を加えた発言です。

このたびは、劇団地点の団体交渉中だった件でみなさまをお騒がせしたこと、心よりお詫び申し上げます。双方合意のもと解決にいたりましたこと、劇団より報告させていただきましたが(これはホームページでさせてもらいました。あのー、、ユニオン側との共同声明で出したものがあります)今後このようなかたちで二度とご心配をおかけしないように、私個人としても精進していきたいと思っております。自身の言動がどう受け止められたかということを相手の気持ちになって常に気遣う必要があることを学びました。このことは人と接する職業である演出家にとって、もっとも大切なことだとあらためて認識しております。これまで、私は地点の演出家として独自の演劇作品を発表することに誇りを持ってまいりました。その独自性こそが社会に認められたと自負してもおりました。しかし、このたびの騒動を通し、多くの誤解や疑心を同時に招いてしまっていたということを真摯に受け止めております。劇団を超えて、影響を及ぼしてしまったことを、関係者のみなさまに重ねてお詫び申し上げます。ロームシアター京都の館長就任にあたり(これも一年延期とかそういったことはまだわからない状況のときでした。そのとおり読みたいと思います)舞台芸術より広い公共性について体現しなくてはならない立場になることを重く受け止めております。演出家としても公職である館長としても、よりみなさまの信頼を得られるように努力して参りたいと存じます。それには、何よりもみなさまの心を揺さぶるような作品を作りたいと思います。そして、劇場文化の一翼を担えるよう、仕事に尽力いたします。今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。  三浦基

三浦 これは、、あの、、この当時と気持ちはぜんぜん変わってないです。


<後半部:質疑応答>

質疑応答のパートでは、主要全国紙記者と筆者による質問がありました。上記したハラスメント問題に関する直接的な質問をしたのが筆者のみだったため、以下ではそのやりとりを再録します。なお、橋本、三浦両氏への筆者からの質問は本来ひと続きでしたが、回答内容に応じて、本記事では3つに分割して再構成しています。両者の回答は発言そのままです。

 美術ライターの島貫です。橋本さんと三浦さんの両者に質問です。橋本さんに質問です。地点と三浦さんのハラスメント問題に起因して、2020年度はハラスメント対策や劇場のあり方についてのシンポジウムなどを行うと発表していますが、今回のコロナウイルス流行で施行に影響はありますでしょうか? またどのような内容を予定していますか?

橋本 現在ロームシアター京都では、内部の職員とのあいだでハラスメント防止ガイドラインをどのように作っていくかの議論を始めています。

その内部での話がある程度かたちが見えてくる段階になれば、それをもとに市民の方を交えたトークなどを含めて、そのプロセスとその策定について共有できたらと思っておりますが、そういった公の場をいつできるかということに関しては、方法も含めて考えていかなければいけないという状況だと理解しています。

 三浦さんに質問です。2021年4月からの館長就任が予定されていますが、京都の顔である公共劇場における「いじめ」などのハラスメント防止や「公共」が担うべきコンプライアンスに関してどのような姿勢で臨まれたいと思ってらっしゃいますでしょうか? アーティストとしてではなく、館長(候補)としてお答えください。

三浦 公共の、っていうことが非常に館長職というのは大きく、重責だということは重々承知しています。そうしたかたちでの対外的なことに関しても、この一言に尽きると思います。

真摯な態度で対応していきたい、という風に考えております。真摯な姿勢をわかっていただくように努力していきたいと思っています。

 また、上記した問題は「劇団」というコミュニティの集団性に起因して生じるものと私は理解していますが、演劇とハラスメントの問題について、アーティスト個人としての見解をお聞きしたいです。

三浦 もちろんあってはならないことだという風に思っています。演劇に限らず、あらゆる職場、あらゆる集団というところで起こりうることだという風に思っています。ただ、先ほどもその、劇団の特性のところでちょっと答えさせていただきましたけれど、どうしても俳優と演出という立場というのは上から命令するようなかたちに見られがちだと思います。

ので、それは同様にスタッフへの指示とかいうことだと思っているので、その点は、それぞれの立場、それぞれの演出家やいろんな人がいろんなやり方で工夫していって誤解を招かないようにするしかないんだろうなと思っています。

大事なことは、、、まあアーティストなんで、、そこの信頼っていうか、ものづくりをしているという信頼を絶対に手放さないようにしないと、すぐに組織はトラブルを起こしてしまうという風に、あらためて感じています。


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