190919_はあーあ

毎日の「はあーあ」、の向こう側

Googleカレンダーには次の予定をお知らせしてくれる通知機能があって、わたしは1時間前に携帯が震えるようになっている。
ちょうど10分ほど前に、バイトのお知らせがあった。

はあーあ。行ったらなんてことないし、何が何でも行きたくないってわけじゃないけれど、はあーあ。
(ところでこの「はあーあ」は明確に音がきまっていて、結構軽く可愛い感じなんだけど伝わっているんだろうか。や、伝わってないんだろうけど。
そうだな。赤ちゃんがタオルを抱え込んで口に加えたりしているところを若いお父さんが覗き込んでいたら、ぱっと顔を上げて「だぁだ!」って言う、あの音なんだけれど。)

行ったらなんてことないしと言えば小学校卒業まで通っていたピアノも、その類の一つだった。

個人でやっておられたピアノ教室で先生のおうちには柴犬が飼われていたんだけど、玄関を開けるやいなやそこにおかれた細い針金でできた柵を飛び越えるのではないかと思うような勢いで歓迎してくれた。
ああ、なんて名前だったっけ。

先生のご主人が面白い人で「家にいなくてもしばの様子を確認できるように」と言って、当時まだまだガラケーなんならプリペイド携帯が生きていた時代に、玄関に小型カメラを取り付けインターネット回線を介させ携帯電話から24時間しばが見られるようになっていた。
わたしはその話を先生を介して伺った。ご主人に直接あったことはなく「うちのおじちゃんがね」と、変な恥ずかしさや自慢は微塵もなくただ楽しそうに先生はお話してくれた。
そんな「おじちゃん」はわたしが中学に上がると同時に引っ越し、それから数年経って亡くなった。先生から送られてくる年賀状には毎年家族4人の名前が書かれていたけれど、ある年それは寒中見舞いになり翌年には3人になった。

先生は気がついたら音楽療法士になっていた。それも年賀状で教えて下さった。介護施設やらなんやらで音楽を通じてお年寄りや病気のひとを元気にしているらしい。
先生だっておじちゃんが亡くなって辛くなかったわけないだろうに、それこそ普通の人よりもちょっぴりあの世が近いと思われる人たちと一緒にいるのだ。

そして先生は気がついたらジャニーズのファンになっていた。これはここ2~3年の年賀状で教えてくださって、どうやらケンティーのファンらしい。いまも推し変することなくケンティーから元気を貰っているんだろうか。

先生は元気だろうか。

はあーあ、なんて言ってないでバイトいこ。
年賀状とはいわず久しぶりに、いや、初めて、お手紙でもだそう。


この度は読んでくださって、ありがとうございます。 わたしの言葉がどこかにいるあなたへと届いていること、嬉しく思います。