2019.09.29 木次線・芸備線
地味ながら、とことん秘境……失礼かもしれないが個人的な中国山地のイメージである。古くからこの山あいには複数の陰陽連絡線が走っているが、あまり足を踏み入れたことはなかった場所の一つだった。数日の休みが重なった消費増税前の月末。迷わず関空へ飛び、一路中国道を西へ走った。
朝、空は青く微笑んだ。まずは木次線のサミット出雲坂根へ。圧倒的な緑、圧倒的な自然。歩くような速度ですすむディーゼルは、いずれ自然に負けてしまうような気すらする。緑に包まれた無機物の輝きを、国道のおろちループに隣接する道の駅から切り取った。
出雲坂根駅は国内でも数少ない通過不能型スイッチバックの駅だ。それだけ急峻な山を切り開いて敷かれた線路である証左である。備後落合を出てサミットを超えた列車は一度方向転換をしてから出雲坂根駅に到着する。客扱いを終え、再び方向を替えて木次へ向かうのである。背中に駅の存在感を背負いながら、上りと下りの勾配差を特徴としてシャッターを切ってみた。
午後になり木次線のクイーン、奥出雲おろち号が戻ってきた。よく考えたらDE15が牽引する客レ…なのだが、被写体としての人気はあまり高くない気がする。そんなに嫌いな塗装ではないんだけどね。
今更ながら木次線は黄色い塗装が特徴的。日が暮れるとその淡いカラーリングが思いのほか強調された。短い単行列車は終点に向かう。
かわってこちらは芸備線。備後落合〜備後庄原は西城川に沿って走る区間である。木次線に比べ幾分か「里山」感が出てくる長閑な路線だ。ゆるやかな川のせせらぎを聞いていると、軽いエンジン音が聞こえてきた。