リストのメフィストワルツ3番は良いぞ
リストのメフィストワルツといえば調弦の響きで始めるあの激しい音楽が有名である。
それは4曲ある「メフィストワルツ」シリーズの最初の1番であり、居酒屋で取り憑かれたかのようにヴァイオリンを弾くメフィストを描いた、ピアノ技術の迸る若々しい名曲ではある。
リスト「メフィストワルツ1番」
トリフォノフ演奏
今回取り上げる3番は、1番から20年後に作曲されたもので、年老いた頃の作品だ。
晩年のリストは、いわば“クラシック”な響きよりもより近代的な斬新な和音を頻繁に用いているが、
この作品もドビュッシーのアナカプリの丘や、スクリャービンのソナタを想起するような穏やかで幻想的な響きを思い起こす。
ドビュッシー「アナカプリの丘」
ミケランジェリ演奏
スクリャービン「ピアノソナタ4番」
プレトニョフ演奏
この独特の清潔感のある響きと、この泥臭い世の中とは無縁そうなアッチの世界の感じ、私はとても好きなのだが、メフィストワルツ3番はこの「アッチの世界」のイメージがより強くなった、とても幻想的な音楽なのだ。
ピアノの黒鍵によるメロディはすでにクラシックのしがらみから完全に開放され、とても自由にふわふわと構成されている。
あれよあれよと転調し、どこか夢を思い出すような温かいメロディがゆるやかに、しかし駆け回るように展開する。
リストの中では私は最も好きな音楽であり、シンプルながら魂の奥底にかたりかける智慧と優しさを感じる名作だと思う。
ぜひ他の作品ともども聴いてみよう!
リスト「メフィストワルツ3番」
ジョン・オグドン演奏
ちなみに似た系統でリストの「忘れられたワルツ」もいいぞ。
リスト「忘れられたワルツ」
ジョン・オグドン演奏
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