マーダーボット・ダイアリー(上)

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マーサ・ウェルズ著のSF小説「マーダーボット・ダイアリー」。macky氏に勧められたので買ってみた。300ページしかないのに¥1,000円もすると知ってちょっと躊躇したが、ヒューゴー賞(ファン投票)・ネビュラ賞(批評家投票)・ローカス賞を受賞したとあっては、面白くないはずがない。上下巻それぞれに中編が2本ずつ収録されている。それぞれ1話完結だが、シリーズとしても楽しめるようになっている。

まだ上巻しか読んでいないが、実際、期待を裏切らない面白さだった。
この物語はマーダーボット、つまりロボットの一人称で語られる形式なのだが、この人工知能は「ロボットらしさ」と「ロボットらしくなさ」を併せ持っており、その独特の存在について興味をひかれる。彼(実際には性別は無い)は基本的に人間に好意を持っているのだが、人付き合いが苦手で、気まずくなったとき、思わず表情に出てしまったりする。すると人間達は彼に気を使うようになり、それに気づいた彼はますます恥ずかしさに苦しめられる。こういったやりとりは実に微笑ましくてほっこりとなる。また彼は連続ドラマを見るのが好きで、自由な時間ができるやいなや大好きなシリーズのエピソードを見て心を落ちつかせたりする。ロボットだから科学的な話が好きなのかと思いきや、むしろ娯楽作品が好み。人工知能はメロドラマを見ながらいったいどこを楽しんでいるのか?人間と同じ感覚なのか?などと想像するだけでも興味深い。人間らしさとはいったい何なのか?高度に進歩した人工知能は人間よりも人間らしくなるのか?などといったことに空想を膨らませながら宇宙冒険活劇を読み進め、あっという間に300ページの上巻は読み終えてしまった。

というわけで、ステロタイプではない人工知能の物語に興味をもてたら、ぜひ読んで欲しい作品だ。読み終えた時にはきっと誰しもマーダーボットが好きになっていると思う。




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