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歌劇八雲『白井解』という男について


はじめに

これは『特殊ミステリー歌劇 心霊探偵八雲 呪いの解法』に登場する『白井解』という男についての感想と考察です。考察というほど高尚なものではなく妄想と言った方が正しいかもしれません。独自の解釈やネタバレを多く含むので読まれる際はご了承ください。また白井解が好きすぎるあまり気を付けてはいますが、かなり入れ込んでいる、正当化・美化している可能性が高いです。

『歌劇八雲』を知ったきっかけ

私は2023年の5月頃から俳優の土屋直武さんを応援しています。
応援するに至った経緯などは他のnoteを興味があれば読んでみてください。
なので『歌劇八雲』の情報は公式SNSの告知で知りました。

そしてその時の私の反応はこちら。

発表当時、直武さんが所属していたグループ『AVEST』のファイナルツアー『BEST NIGHT TOUR』の真っ最中で、12月22日の誕生日を以てグループからの卒業が決まっていたので、2024年の仕事が決まっていることを喜びました。
応援していることを差し引いても今回の『白井解』という人物のビジュアルは一際良く、写真が公開された時点でどんなキャラクターなのか知りたくなりました。それだけ顔立ちが良く綺麗で繊細な雰囲気のある彼に第一印象から惹かれていたのです。

発表に合わせて原作の神永学先生のブログに『歌劇八雲』の情報と原作小説の紹介がまとめてあったので、翌日すぐに購入して読みました。

…が、『白井』の名前が出てくるのは第二話の魂の素数。その名前が出てきた時点で文章的に嫌な予感がしたので途中で読み留めました。(今は観劇したので読了済みです。)

ゲネプロ映像

土屋直武ファンクラブ画像

『白井解』という男について

プロフィール

白井 解《しらい かい》
演:土屋 直武
学年:明政大学3年
所属するサークル:ミュージカルサークル『ヒツジタチノカンタービレ』
プロフィール:端正な顔立ちで、俳優部のトップとして数々の主演を務め、仲間や後輩達からはカリスマ的存在として認識されている。

特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」-呪いの解法- 公式X(Twitter)より
@stage_yakumo

彼は原作小説には存在しない歌劇版オリジナルのキャラクターです。
元の設定では女性の『白井 萌』として登場します。

白井 萌《しらい もえ》
学年:明政大学(描写はないがおそらく2年)
所属するサークル:オーケストラサークル
プロフィール:長い黒髪で、整った顔立ちをしているが痩せすぎているせいか、何処か暗い印象が付き纏っている。

『心霊探偵八雲 INITIAL FILE 魂の素数』より

彼、彼女が登場する話の本筋はおおよそ原作も歌劇も同じではありますが、設定は全く異なります。
性別はもちろんのこと、所属しているサークルも違い、特徴も引き継がれているわけではありません。
顔立ちがとても良いところが唯一の共通点かもしれません。
原作では白井萌が言葉を発している場面が一度しかないため、人伝に聞いた程度のパーソナリティしか読み取ることが出来ないです。
『白井』という同姓の別人と捉えた方がしっくり来ます。

観劇前のビジュアル、キャラクター紹介のみでの私の予想・想像の『白井解』はサークル内外に関わらず一目置かれる存在で、演じる上で物腰柔らかなのかトップ俳優としてストイックなのか、どちらともとれる印象を受けました。

AVESTの『BEST NIGHT TOUR』福岡公演の際の特典会では、直武さんに歌劇八雲の出演のお祝いと原作を読み始めたことを伝えると、彼は「原作では女性のキャラクターですが、今回は男性として演じさせていただくことになりました。なのでレアキャラです!」と仰っていました。

年齢と大学について

参考としてドラマ版での主人公・斉藤八雲の誕生日が1986年8月3日です。
それを基準とすると八雲が大学1年生の話であることから、2005年頃の事件だと想定されます。
しかし、白井解の年齢が劇中で『22歳』と言われているため、一年浪人して明政大学に入学したと考えられます。(学年が間違っているとしたら先輩・後輩の学年もズレてしまうので)
このことから白井解は1984年もしくは1985年生まれ、2024年では39〜40歳になっています。
さらに夏の事件でもあるので誕生月は4月〜8月だと思われます。
また同年齢であれば、松永・横澤に敬語ではなくタメ口でも良いのではないかと思いますが、その辺りは年功序列を重んじている、演出家の方が立場が上などが理由になるのではないかと考えられます。(あとは単純な計算ミスとしか…)

明政大学(学年)
1年生:斉藤八雲
2年生:川端上也、前山田アンカ(原作では前川花子)
3年生:白井解(原作では白井萌)
4年生:松永弦太、横澤健一(原作では2年生)、縦川雅巳、矢口更紗

明政大学(学部)
文学部:前山田アンカ
医学部:川端上也、矢口更紗(学部の記載はないが、看護科の授業を受けている)
理工学部:横澤健一(御子柴ゼミ)
※白井解、松永弦太、縦川雅巳は学部の記載なし

ミュージカルサークル『ヒツジタチノカンタービレ』

ポジション
俳優部:白井解、川端上也、前山田アンカ
舞台部:横澤健一
音響部:縦川雅巳
演出家:松永弦太



所属していたOB・OG
俳優部:前山田一歩、マリア(名字不明、一歩の彼女)、水川栞
衣装部:塩谷冨美香

学校祭公演『女神と旅人』
◆現在
女神:白井解
旅人:川端上也
運命の女性:前山田アンカ

◆時期不明
女神:水川栞(伝説と言われている)
旅人、運命の女性は不明
※4年生は水川さんが所属していたことを知っているので、それほど離れてはいないと思われる

◆15年前
女神:マリア
旅人:前山田一歩
運命の女性は不明

原作ではオーケストラサークルであるため、設定は歌劇オリジナルです。
話の内容やキャラクターの性別などが改変されているので、一見すると別作品のようですが、歌劇の『女神と旅人』は原作の『白山神社の噂』と本筋は近いものがあります。

ヒツジタチノカンタービレは古くからあり(少なくとも15年の歴史はあり、1990年頃から存続している)、明政大学の講堂の使用権利と『女神と旅人』という伝統ある作品を保有しています。
現在の所属人数は6人と少なく、上演する際は他サークルから助っ人を呼んでいます。技術部門のみなのか客演も呼んでいるのかは不明です。
以前は所属人数が今より多かった描写があり、組織体制の古い考えや上級生からのパワハラ、特定の役者を贔屓にするなど歪なヒエラルキーが構築されていったことから離れていく人が増え、退所したメンバーで新しいミュージカルサークルを新設したりしているとのことでした。

白井解と松永弦太

松永のセリフで「何も出来なかったお前をここまで育ててきたのは俺だ」と言っていることから、白井解が本格的に演劇を始めたのは大学に入ってからだと思われます。
これは完全な推測でしかないのですが、他者から見てとても顔立ちの良い白井解にアプローチしたのは松永ではないかと思いました。
入学時にどれほど目立ったかは分からないのですが、「すごいイケメンが新入生にいる!」などミーハーなサークル勧誘もあった中で、松永自身も見た目の第一印象から声をかけていて、「一度で良いからミュージカルを観に来ないか」と熱心に誘ったのではと思いました。

白井解としては「何かにのめり込めるって幸せなことだ」というセリフがあるので、別段ミュージカルサークルでなくとも最初は良かったのだと感じました。
白井解の夜の仕事(おそらくホスト)をこなせるくらいの社交性と愛想の良さと、松永の諦めを知らない粘り強い勧誘で「分かりましたから、そんなに言うなら観に行きますよ」くらいの社交辞令で、そこまでやる気があったとは思えません。

それでも演劇の道に進んだのは、観劇したヒツジタチノカンタービレの作品で何かしらの感情が揺さぶらて「自分でも演じてみたい」と心境の変化があったと思います。

白井解の入所当時は、まだ松永たちよりも上の上級生がいたと考えられるので、主演を演じるようになったのは、それこそ1年の終わりにかけてから2年になってからだと思います。

『女神と旅人』

歌劇の『女神と旅人』は原作の『白山神社の噂』と本筋は近いものがあると書きましたが、所謂悲恋的な内容で演劇に落とし込んだ際に説明的な箇所を省いてミュージカルとして成り立たせています。
『愛の女神』が『旅人』を想いすぎるあまり愛に溺れていく様は、白井解と松永の関係性を裏テーマにしているとも取れました。

また、学生課の職員の水川栞が伝説といわれる女神役だったにも関わらず、水川のテーマ(女神の呪いの都市伝説と御子柴先生の心霊相談販促曲)が始まった時の白井解は大先輩の水川に追従する訳でもなく、困惑しながらその後を追っています。途中で音楽に乗って動く姿もありますが、それは役者としての条件反射で次第に慣れていってのラスト…だと感じました。

2005年頃と想定しているので、それよりも前の学生演劇の映像が残っているのは難しい気がします。資料としてあるとすれば、音声を録音したカセットテープ、当時の台本などではないでしょうか。
(映画研究会のようなところに依頼してフィルムで撮影してビデオテープにダビングなどしていない限りは…)

なので、白井・川端・アンカは『学生課の水川』は知っていても『サークルOGの水川』は知らなかったのではと思います。

夜の仕事

さて、演出家の松永がダイヤの原石を発掘したかのように大事に育ててきた白井解を主演に抜擢します。
仲間内の評判で少しは話題になるかもしれません。
大学のサークルであるため、大学の援助を受けられるのは表彰されたりなど大学側に何がしかのメリットがなければいけないでしょう。
となると、舞台装置や衣装、小道具などの材料を購入するための諸経費を稼ぐには公演チケットを売ることとサークルメンバーのバイト代で資金繰りをしていたのではと考えます。
しかし、まだデビューしたての白井解にいわゆる固定のファンはいません。
最初のうちは友達や家族に観に来てもらったりもしたでしょう。
ただそれも毎回必ずとは言えず、自身の努力で売れるチケットは多くなかったと思います。
それは彼だけでなく、他のサークルメンバーも同じで、主演・白井解がたとえどんなに素晴らしい演技をしていようとも一生懸命であろうとも高々一介の学生演劇、売り上げは伸び悩みます。

そうした時に、誰かしらが白井解に「お前、顔が良いんだからホストとか夜の仕事で稼げるんじゃねーの」と飲み会などで冗談めいて言ったのではないかと思います。(個人的には横澤が言いそうだなぁ…と)
もしくは自分で稼ぎの手建てを考えた末が夜の仕事だったのかもしれません。
工事現場のような肉体労働も選択できたとは思いますが、そこは顔や身体を傷付けないことを制約に入れていたと考えます。

そうして夜の仕事を始める訳ですが、皮肉のようである意味彼にとっての天職だったのでしょう。
ただ、少し気になるのはいくら金払いがいいと言えど、酒焼けして喉に負担がかかるのではないかというところです。
ミュージカルサークルの主演俳優が喉ガラガラなのは流石にどうなのかと思いました。(劇中はもちろんそんなことはなく聴き惚れるくらい美声です。)

どれほどシフトを入れていたかは分かりませんが、基本的には松永の都合に合わせてスケジュール調整をしていたように思えます。
最初はそれこそ、サークルのために松永のためにと思って深夜2時まで働いて、泥酔するほど酒を飲む生活…。

段々と夜の仕事で頭角を現し、本指名の客も増えてきて、その客に公演のチケットを買ってもらうようになっていきます。
次第に夜の仕事は売上に直結するため彼の中で「これは悪いことでは無い」と正当化していきます。
そして単純に店内ランキングで目に見える形で自分の人気さを確認出来る=誰かに必要とされている安心感と優越感、自尊心を夜の仕事で補っていたのかもしれません。

遂には「200人の客を1人で」動員することになります。
松永のために、松永に認めてもらいたい一心で始めた夜の仕事もこうして貢献出来たのですから白井解にとっては何が間違っているのか、何故否定されなければならないのか分からない状態になります。

松永のスケジュール都合で合わせていたとしたら、夜の仕事のためにサークル活動の穴を空けたりはしないと思います。
レッスンや身体作り、稽古も欠かさずこなしているのに、演劇で手を抜いたり、支障になるようなことはしていないのに。

しかし松永はそうして形成された『白井解』を良いとは思いませんでした。
言わば解釈違いとでも言いましょうか、演劇人とはこうあるべきだ、という考えがきっと松永の中にはあってそれと白井解を比べた時にとても歪に見えたのです。
初めの頃はチケットが売れることを喜んでいたでしょう。
ただ、売り上げがエスカレートしていくうちに「これでいいのか?」と疑問に思うようになります。
白井解に対しての接し方も主演俳優として起用したいと考えていた頃の叱咤激励ではなく、純粋に演技をすることが好きだった白井解ではなくなった彼に当たりが強くなっていきます。

そこからは悪循環の始まりです。松永が白井解を否定する→なぜ分かってくれないんだと苦悩する→それを忘れるように酒に溺れる…そうして出来上がったたのが今の白井解です。

ちなみに「女に買ってもらう」が比喩表現なのかガチだったのかは正直気になるところです。

俳優『白井解』

白井解は「与えられた役を全うするのが役者でしょう」「演じられるならどんな役でも良かった」と言っていることから、女神役に固執していたわけではありません。
白井解が強く希望していたのは『松永が指名した役』を演じ切る事でした。
それは配役が決まったと同時に揺るがない彼なりの信念だったように思えます。

残酷なことにトップ俳優としての白井解が独り歩きをしてしまっており、サークルメンバーの言葉は全て憶測で、それぞれが作り出した空想の白井解が言いそうなことでした。

川端「僕が白井さんに旅人役を譲っていれば」
縦川「後輩の白井って子がオシャレな新興サークルに誘われているみたいなんだよね、僕だったらそっちに行っちゃうな」
横澤「ゼミの後輩に聞いたんだけど、お前他のサークルから声かけられているんだって?」

世話になった先輩であり、最初に自分のことを認めてくれた松永は誰よりも自分の理解者であってほしかったようにも思います。

原作では松永と白井萌は恋人関係なこともあり、歌劇ではそういう類の描写はないですが、恋愛感情ではないにしても、他のサークルメンバーよりは特別な存在だったのではないでしょうか。

最後に

書き切れていないような気もするので後ほど確認しながら、追記をするかもしれませんがこんなにもただひとりのキャラクターである『白井解』をひたすらに考えることになるとは観劇前は思ってもみませんでした。
何度も違う角度から観劇することによって回によって変化する演技に、その場でしか体感できない熱量に絆されたのかもしれません。
正直私が生で観劇した中で直武さんが演じたキャラクター第一位です。
想像以上の演技を見せつけられるので毎回塗り替えられているわけですが、忘れられないくらい好きなキャラクターになりました。
白井解としての物語はこの作品で終わってしまうのですが、願わくば別のキャラクターとして歌劇八雲で演じる直武さんの姿を観たいと思いました。
これだけ書いても気持ちが収まっていないので、本当に今週末の直武さん本人のカレンダーイベントでやらかさないか不安です。今の気持ちは完全に白井解のファンなので。
それではここまで読んで下さりありがとうございました。

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