スーパーで買い物中にBGMが《ろくでなし》。意識してなかったけど《ろくでなし》だった。 いつもなら聴き流してしまうインストだけど、意識したのは近くにいたカップルの会話のせい。 彼女のほうが曲にあわせて“ろく〜でなし〜”と歌っている。彼女は親切なことに“ほら、ろくでなしがかかってるよ”と彼に教えてあげた。 “そんなわけないやろ、おまえはネガティブすぎるねん”と彼は言って、彼女はそれでも鼻歌を歌い続けていた。2人の間にしばしの沈黙が流れたあと、彼は“まぁおまえにはそう聞こえる
ナゲッツに追いかけられることを生き甲斐にしているよっしーは、わずかな物音にも振り返り、目を細めて宙を睨みつけていた。 〝ちのせいかよ…〟 舌足らずのため発音がおぼつかないが〝気のせいかよ〟と呟いている。 ナゲッツはソファの下、つまりよっしーが寝ている真下に潜伏していた。スナイパーのように。 静かに息を潜め長距離から一発の弾丸で相手を仕留めるスナイパー。 かつて兄と妹は、アメリカ同時多発テロの映像を観た衝撃でアメリカ陸軍特殊部隊に入隊。 卓越した潜伏技術と優れた射撃技
