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虎に翼 第70話

やっちまった……組織で生きる大人として、最悪のタイミングで怒り爆発させてしまった。寅子(伊藤沙莉)が落ち込んでいて、ちょっと安心した。
そして家庭局の扉をピシャアン!と音高く開けた穂高先生(小林薫)に、ちょっとびっくりした。この後は穏やかに話し始めるものの、穂高先生もギリギリまで態度を決めかねていたんじゃないかなあ。

それにしても、発言について撤回や謝罪をするつもりはないにせよ、ひどい態度であったことは確かなので(だからこそ落ち込んだわけだし)本来であれば寅子から先生のもとに出向く必要があったかと思うが―多岐川(滝藤賢一)が少々軌道から外れた人物なのでそうはしないが、直属の上司が促すくらいはあってもいい事態だった。それを
穂高先生から歩み寄ってくるなんて、懐が深い……いや、ひとえにスッキリした顔で笑ってお別れするためなのだ。そう自分に言い聞かせて家庭局まで足を運んだに違いない。

「佐田くん。気を抜くな。君もいつかは古くなる。常に自分を疑い続け、時代の先を歩み立派な出がらしになってくれたまえ」

温かな口調で、とんでもなく厳しい言葉……素晴らしい叱咤激励だった。

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梶山栄二(中本ユリス)の親権問題については、栄二自身が頼りたい大人はいないかと問い、父の姉であるおばさんが看護者となり、父が親権を取って解決した。寅子の言う

「ご両親にこだわる必要はないと思っているの。もっと本音を言えば、ご両親にあなたを任せたくない」「あなたが生きて大人になるまで、見守り育てることは、私たち大人全員の責任なの」「栄二くんが頼る大人は、親である必要はないの」

これは栄二への言葉だが、寅子の実子である優未(竹澤咲子)にも当てはまってしまわないか……子を育てるのは親である必要はない、実の親よりも親身になってくれるおばさん。それはそのまま、花江ちゃん(森田望智)にもスライドしてしまわないか。
栄二のことは一件落着、最後に見せてくれた微笑みも併せて本当によかったね……!とじんわり安心できたが、寅子自身の家庭を思うと不安が増してしまった。

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穂高先生が亡くなり、桂場(松山ケンイチ)ライアン(沢村一樹)、多岐川と寅子。教え子たちで献杯。
山盛りあんこだったり「お前友達いないもんな?」だったり皿かじり割りだったり、コミカルな場面であり、更に

「司法の独立を守る!二度と権力好きのジジイどもに好き勝手にさせない!
法の秩序で守られた、平等な社会を守る!」

この桂場の宣言は素晴らしい。ただ穂高先生の寅子への激励

「気をつけろ。君もいつかは古くなる。常に自分を疑い続けろ」

これは、この教え子たち全員に気をつけろというものだろう。彼らが偉い人物に、権威・権力を持つジジイにだってなり得るんだから。

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その翌朝、酔って帰った寅子を見つめる、優未の冷めた目……
今回は穂高先生のお通夜だったけれど、多岐川が普段から飲み会で仕事の根回し・交渉をするタイプであることを思うと、寅子は酒の匂いをさせて帰ることは珍しくないのだろう。
ああ、なんてことだ。ドラマ放送序盤では、おいしそうにビールを飲み干す寅子に視聴者が拍手を送っていたというのに、今は「酔っ払い、いやぁね」という姿として反転させてくるとは。
何度目の感想かわからないが、本当に油断できない作品であることよ。

(つづく)

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