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【光る君へ】ドラマレビュー第20回公開されました

クロワッサンオンライン 連載中、大河ドラマ「光る君へ」ドラマレビュー第20回更新されています!こちらからお読みいただけます↓

クロワッサンオンライン光る君へドラマレビュー第20回

長徳の変の発端となった、花山院襲撃事件―藤原隆家が花山院に放った一本の矢から始まった20話でした。ドラマレビューでも触れましたが、ドラマ内で一条帝が「高貴な者の従者たちの乱暴を禁ずる旨、厳命したばかりだというのに」という台詞がありました。この長徳の変の前年に、隆家の従者と道長の従者は場外乱闘状態にあったことが『小右記』に記されています。

そして、ドラマでは今回一方的に被害者であった花山院ですが、この長徳の変の翌年は加害者側となる事件がありました。
藤原公任と斉信(光る君へでは町田啓太と金田哲)のふたりが同乗した牛車が、花山院の館前を通り過ぎようとしたとき門前から飛び出してきた花山院の従者たちに取り囲まれ、一斉に投石を受けたというのです。従者たちは手に兵杖を携えた武装姿で、公任と斉信の従者、牛飼いの童たちを捕らえ、公任の実資への訴えでは「その間の濫行は言葉にできない」という表現だったようなので、かなり酷い乱暴を働かれたのではないでしょうか。

なぜ突然こんな暴行を……と思いますが、当時の貴族社会には、大臣クラス以上の身分の人物の屋敷前を牛車に乗ったまま通過するのは無礼というマナーがあったようです。万寿元年(1024年)4月13日の『小右記』にも、そうしたトラブルとマナーについての記録があります。

なので、花山院の屋敷門を守っていた従者たちは、門前を通り過ぎる牛車の無礼を咎めてそうした暴力に出たと考えられます。ただ、マナー違反だからそうした被害を受けても仕方がないよね!という話でもなかったようです。
公任が実資に被害の報告をした翌日、花山院は賀茂祭見物に出かけたところを、一条帝の勅命を受けた検非違使と放免に取り囲まれるという事態になりました。投石事件の容疑者……院の従者を捕らえるためだったのですが、従者たちが我先にと逃げてしまったので、花山院の乗った牛車は祭り見物の人々の中で検非違使に囲まれた上、ぽつんと取り残されるという相当恥ずかしい状況に置かれたそうです。

花山院は「還御した」とあるので、検非違使に送られて屋敷にお帰りになったと思われます。そして、その日のうちに今度は検非違使が花山院の屋敷を取り囲む……『光る君へ』で伊周・隆家がいる二条邸が包囲されたのと同じ状況になったのだとか。「容疑者を差し出さねば、院の屋敷内を捜索する」という帝の綸旨があったことが告げられ、翌日、花山院は投石事件の下手人を差し出したのでした。

一条帝が暴力事件について、相手が貴族だろうが院だろうが関係なく取り締まろうとしたことが伝わる話だと思います。

私、これまでは本を読んで頭の中でぼんやりと思い描いているだけだったのですが、大河ドラマを経て、それぞれのエピソードを俳優さんたちで想像するという楽しみを得ております。
投石を受けて驚く町田啓太と金田哲、門前での騒動を聞いて、ふっふっふと不敵に笑う本郷奏多、驚く秋山竜次、怒り命を下す塩野瑛久。
牛車の中に取り残される本郷奏多、恥ずかしくて赤面する本郷奏多、家を取り囲まれ恐怖する本郷奏多……ほぼ本郷奏多。

こういった想像ができるのも、大河ドラマの醍醐味の一つかと思います。

21話から、いよいよ越前編がスタートする模様。そして枕草子も生まれます。
放送が待ち遠しいです。

(つづく)



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