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虎に翼 第14話

よね(土居志央梨)に、なんと声をかけたらいいのか……と、トラコ(伊藤沙莉)が頭の中でシミュレーションする。想定問答を繰り返すたびに、よねとトラコの顔が少しずつ接近しているのに笑う。
昨日のなんとも言葉にし難いラストからのこれ……軽くしてもらうつもりはなかったが、フフッと笑って気持ちが軽くなった。

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一日も大学も仕事も休まず、というよねの言葉に、
「お月のものがきた時はどうしてるの?」というトラコの問い。
ヒロインの月経が重いという描写に続き、月のさわりにはそれぞれ個人差があるよねえという話まで来るとは思わなかった。

「僕、席をはずそうか?」と気まずそうに言い出す増野(平山祐介)に
「お気になさらず」と、ちょっと圧が強めの梅子さん(平岩紙)。このあたり、意識して作っているのであろうが、とても現代的であった。
そもそも、成人男性にとっても月経は本来は無関係ではない。職場にも家庭にも女性はいる。お月のものはどうしているのかということ、個人差があるということ、知っていて損にはなるまい。

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私にはお付きの女中はいない、おにぎりを人に施す余裕も、留学させてくれる家族もいない、昼休みに水泳したり歌ったりする余裕もない。
……と言うよねは、トラコが羨むほどに月経が軽い。

育った境遇、周囲の環境の差はあろう。どうにもひっくり返しようがないほどの不幸もある。が、人はそれぞれ苦悩を抱えているのだ。自分と他人を引き比べてアンタは恵まれているだろうというのは、針山地獄で苦しみながら血の池地獄でのたうっている者に「そっちは楽なんだろうな」と叫ぶようなものではないだろうか。それよりも、お互いに地獄から抜け出る道を探すなり、この地獄を改善できるように奮闘するなりしたほうが、甲斐があるというものだ。

それはそうと涼子さま(桜井ユキ)、
「お気立てに難がおありでしょ」
この名言は、いつかどこかで使わせていただこうと思います。

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毒饅頭を作りながら梅子さんの
「男ってバカなのよ。別れた女はいつまでも自分が好きだと思ってるのよ」
これに、はるさん(石田ゆり子)が(わかる……)と頷いてることに笑ってしまった。「男って」と一括りにしたくはないが、ある程度の経験を積んだ女には思い当たる人がきっと多い、梅子さんの言葉。
申し訳ないが、別れるには理由があるのだ。例え振られて泣いたとしても、ハッと我に返り「どうしてあんなのとつきあってたのかね、私」となったりする。
別れてしまったけれど俺のことを好きでいてくれるはずだと勘違いし、久しぶりに会った女とワンチャンあるなどと、くれぐれも思ってくれるな。

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「いくら、よねさんが戦ってきて立派でも、戦わない女性たち、戦えない女性たちを【愚か】なんて言葉で括って終わらしちゃ駄目」
はて?が口癖のトラコが間髪入れずに「それは絶対に違う」と、よねの言葉に反応した。トラコは自分の中に浮かんだ疑問と常に向き合い、そして自分の身の内に一本芯がある。
この台詞「括っては駄目」ではない。「括って終わらしちゃ駄目」だ。
その先を考えようと呼びかける、細やかな台詞だ。

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涼子さまの告白。法廷劇の題材となった毒饅頭事件は、学長が法廷劇用に実際の内容を改変して涼子さまに伝えていた…第13話の「私の筋書きとおり、よく書けている」という台詞に引っ掛かってはいたが、そういうことか。
加害者は医者よりも女給のほうが同情を集められる。民事訴訟を起こして勝てるような有能な女性より無知無力な女のほうが、助けられるヒロインに値する。
……このあたり、これまでの朝ドラヒロイン像の「けなげなヒロインのほうが応援できる」という意識を反映してないか。
この作品、なにをどこまで掘り下げてくるのか全く予想がつかない。

「私たちは、いつの時代もこんな風に都合よく使われることがある」
おや、と思ったナレーション。尾野真千子は一体、どこからトラコたちを見て語っているのだろうか。

さあ、明日は金曜日。学長たちにどう決着をつけるのか。そして、はるさんと花江ちゃん(森田望智)のわだかまりに決着は着くのか。
楽しみだ。

(つづく)



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