虎に翼 第67話
泣いてしまった。星長官(平田満)が読み上げる『日常生活と民法』の序文
「今次の戦争で日本は敗れ、国の立て直しを迫られ、民法も改訂されました。私たちの現実の生活より進んだところのものを取り入れて規定していますから、これが国民になじむまで、相当の工夫や努力と日時を要するでしょう。人が作ったものです。古くなるでしょう。間違いもあるでしょう。私は、この民法が早く国民になじみ、新しく正しいものに変わっていくことを望みます。民法は、世間万人知らねばならぬ法律であります。けっして法律家にのみ託しておいて差支えない法律ではありません。私のこの拙著がいささかにても、諸君の民法に対する注意と興味とを喚起するよすがとなることを得ましたならば、まことに望外の幸せであります」
ああ、そうだ。自分が小中学生の頃に手に取った、専門知識をわかりやすく社会にひろめようとした書籍の序文は、こんなふうに易しい言葉で、すっと読み手の頭と心に入ってくるような文章だったと、その懐かしさと平田満の名朗読の力とに泣かされてしまったのだ。
最初は(おいおい、大事な打ち合わせを長官室ではない、他のお客さんもいる『竹もと』で……)と思ったけれども、梅子さん(平岩紙)も『竹もと』主夫妻もそして他のお客さんたちもじっと聞き入り、読み終わると同時に拍手が起きるという演出のおかげで、泣きながら一緒に拍手できた。
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航一さん(岡田将生)、前回はすごーく感じ悪いな?と思ったけれど、あれはもしや前々から寅子の話を父や穂高先生(小林薫)から聞いていて憧れていた……だから星長官は彼に「びっくりする人が手伝ってくれる」という、いたずらっぽい予告をしたのか?と思うくらい、今回の彼は寅子に対しての心の壁が低い。もともと法律家としての佐田寅子に好感を抱いていたところに、一緒に仕事をして個人的に惹かれていったということなのだろうか。
彼の口癖であるらしい「なるほど」も、前回と今回すべてを見比べてみると、少しずつニュアンスが違う……特に『日常生活と民法』に補修著者として自分の名前があるのを見た寅子が、優三さん(仲野太賀)の抱いた夢と思い出を語るのを聞いたときの、痛みを含んだ「……なるほど」。
あのね航一さん、もし寅子を女性として愛し始めたのでしたら、そして近い将来その気持ちを抑えきれなくなったら、直接的な言葉で言わないと未来永劫伝わりませんよ?このひとは他人が自分に向ける感情というものについては、とっても鈍感ですからね?それは優三さんが経験済みですから。
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しかし、娘の優未(竹澤咲子)が寅子に対して何か複雑な感情を抱いているらしい、このタイミングで寅子に再婚話が浮上するとしたら。
それはたいへん……微妙なオハナシですね。
そして優三さんとの結婚時と違い、キャリアを積んで「佐田寅子」として世間に名が轟いた寅子が再婚で改姓するのか、という問題が。
ここからヒロインの恋愛展開が来るのかあ……とテレビの前でソファにダラッとなりそうになったけれど、そうだ!ついに働く女性の夫婦別姓問題くるかも!とガバッと起き上がった。
やってくれたら嬉しい。寅子を応援してる。
(つづく)