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虎に翼 第66話

2023年後期朝ドラからの越境登場人物・茨田りつ子(菊地凛子)が協力した家庭裁判所の広報効果は絶大だ。

「東京在住の困っているご婦人方はぜひ佐田寅子さんをお訪ねになって♡」

…しかしこれは、家庭裁判所というよりも判事補・佐田寅子(伊藤沙莉)個人の広報になっていないだろうかという予想通り、相談者がサイン色紙持参で殺到するという異例の事態になっている。そして最初は困惑していた寅子も「喜んで!」と慣れた様子で、すらすらとサインするように。この姿が周りの反感を買わない筈がない……というか、視聴者にもカチンとくるように敢えて作っていうのだろうなと思う第13週のスタート。
今週のサブタイトルは『女房百日、馬二十日』
どんなものも最初は珍しがられるが、いつか飽きられてしまうことの例え。
大人気の判事補・佐田寅子、一体どうなる……いや別に芸能人じゃないんだから、家庭裁判所の広報が成功した後は、静かになるのがいいんですよね。

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寅子は全く気づいていないが、優未(竹澤咲子)を中心に、猪爪&佐田家には静かに不穏の空気が漂っている。
朝起きて隣に母親が寝ていない、冷たいままの布団をじっと見つめる優未。一日の内で母子ふたりきりで会話できる唯一の時間に、優未は「花江ちゃん(森田望智)とおつけものを作ったの」と家庭でのことしか話さない。小学校1年生、学校では新しい経験を沢山しているはずなのに。
「学校でお友達はできた?」という寅子の問いかけに、うん!と元気よく答えるものの、お友達の具体的な名前が出てこない。
皆を送り出したあとに厳しい表情となる花江ちゃん……寅子自身が優未の異変に気づくことを待っているようだ。

星朋彦(平田満)最高裁判所長官の著作の改稿の手伝いを、休みの日にすることになったという報告に、花江ちゃんの「お仕事なら仕方ないわよ」という言葉以外に、家族全員……いつもならフォローにまわる直明(三山凌輝)まで無言なのが気にかかる。優未の背中だけ映っているのが、この先がこわい。

忙しく働くヒロインとその娘の衝突、お母さんは仕事ばっかり!という展開は、朝ドラでは枚挙に暇がない。正直言うと、過去作品では(またこのパターンか……娘との戦が終わったらまた観よう)と、一旦視聴から離脱することすらあった。おなかいっぱいなのだ。
ただ『虎に翼』は、これまでの朝ドラ作品の蓄積から全く違う展開を生み出して見せてくる作品なので、見守ろうと思う。

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再開した『竹もと』で働きながら、轟法律事務所で暮らす梅子さん(平岩紙)が充実した生活を送っているようでホッとした。大庭家から相続分をもらっておけばよかったのに……とは思うが、あのクソな一族ときれいさっぱり縁を切る方を優先した結果、この笑顔があるのなら、これが正解だったのかもしれない。

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星長官の息子・航一(岡田将生)の、すごーく頭がよさげで、すごーく絶妙に感じ悪い言葉と表情を差し挟んでくるこの感じ……

航一「『あの』佐田寅子さんが手伝ってくださるとは」「気になさらないほうがいい」

これは……家庭裁判所・広報の顔として活躍している寅子の評判は、かなりよろしくないぞ……

(つづく)





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