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虎に翼 第17話


梅子さん(平岩紙)の夫、大庭氏(飯田基祐)。
すごい。すごすぎる。よくもこんなに、上手に女性を怒らせることができるなあと感心して観ていた。
妻の容姿をジョークのネタにする、容姿は未婚の女性にとって何よりも大切、はて?と異を唱えれば

「そうだね、勿論違う。君たちとは」「君たちのように容姿端麗で優秀な女性たちとは」

いやいやいやいや……そこじゃない。という以上に、他の女性を見下して踏みつける仲間に、勝手に引っぱりこまれる不愉快さ。くっそうと拳を握りしめるがしかし、大庭氏が妻の容姿をジョークネタにした際、ドッと笑った男子学生の中で花岡(岩田剛典)と轟(戸塚純貴)だけは笑わなかった。花岡はこの手のことを下品だと感じているのか、轟は単純に(なんだそれ…?)と大庭氏の言葉を疑問に思ったのか。ふたりそれぞれに、笑わない理由は違うのかもしれない。

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冷たくスンッと固まったままの梅子さんとは違い、トラコ(伊藤沙莉)、よね(土居志央莉)、涼子(桜井ユキ)、崔香淑(ハ・ヨンス)の怒りのボルテージはみるみる上がってゆく。表情にはっきり出ている。よねの眉毛が震える様を見よ。
それなのに、大庭氏はぜーんぜん気づかない。だって関心がないから。目の前の女子学生たちが自分にどんな感情を持とうが、別にどうでもいいことだから。

夫が立ち去ったあと「すぐ私を使うのよ。話の潤滑油に」と奇妙にはしゃぐ梅子さんが痛々しくて、泣けてくる。
こうしないと、みじめさで潰れてしまうのだ。幾度こうやって自分を支えてきたのだろう。入学初日から「ま、こんなことだろうと思った」と諦める仕草が身についていた彼女の、これまでを想像する。

よかったのが、花岡に「意見をしている時の猪爪くんを見てるの、好きなんだよね」と言われたトラコが、全然ときめかずに低い声で「……えっ」となったところ。キュンともキャッともしない。「今それ言う?」的な。トラコのこういうところ、本当に好きだ。

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帝大生の前でスンッ……となってしまう明律大男子学生たち。男性版「スンッ」の劇伴が面白い。面白がれる場面ではないが、低く重いバージョンに耳を澄ませて聴いた。

俯いてしまう、コンプレックスを自覚させられてしまう。いたたまれない……というのは、女だけではないという回。しかし困ったことに、俯かされた後の彼らは己を奮い立たせるかのように、法律を学ぶ女学生たちを仲間内で嗤う。踏みつけることによって少しだけ、自分達が高く在れるかのように。
「言わせておきなさい」という梅子さん、本当にそれでいいんですかと思った瞬間に轟く、大きな声。
「それはいただけないな!」「男として!恥じぬ行動をすべきだ!」「花岡!今の言葉を撤回しろ!撤回しろ!撤回しろおっ!」
カカトが地面から浮き上がるほど力んで叫ぶ轟。酷いジョークに笑わなかったことにも注目したが、君、意外といいやつなのか…それとも、自分の考える「男らしさ」に固執してるだけなのか。

こんな雰囲気でハイキング行って、果たして楽しいのか?!

(つづく)


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