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虎に翼 第13話

度重なる侮辱、よね(土居志央梨)に対する暴力についに激昂したトラコ(伊藤沙莉)の前に立ちはだかり、その爪を顔面に受ける優三(仲野太賀)。不良男子学生を守ったのではない、トラコを守ったのだ。衆目のなかで暴力を振るったら取り返しがつかない、それならばいっそと…!!ゆ、優三さーん!

その捨て身も、よねが不良男子学生の金的を蹴り上げたので無駄になってしまったが。暴力のリスクを彼女は十分知っている。第10話、DV夫に妻を「殴らせればよかった。私たちが証人になれる。暴行罪の現行犯で逮捕できた」と言ったのは、よねなのだ。それでも堪えきれない、ここで退いてはならぬという思いがあっての蹴りだった。
ナニがとは言わぬが、潰れて二度と役に立たなければいいのに、というのが正直な気持ちである。

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当然大騒ぎになり、新入生となったかもしれぬ女の子を連れて母親たちは次々退席、新聞沙汰にまで。
ネガティブな内容の記事であってもトラコが映ってるからと喜んでスクラップする、父・直言(岡部たかし)のお気楽さと大いなる愛が、この第13話の救いだ。

そして、学校から処分を受けるのはどうやら女子学生だけらしい。彼女たちを侮辱し煽り、暴力を振るわせた側の男子学生には何もないのか。まったくもって理不尽だ。
「とにかく、今後は女性らしい振る舞いをだな……」
そもそも女子の身で法律を学ぶということ自体が、当時の感覚では「女性らしい」行動ではないのに。大学が彼女たちに求めることが矛盾している。
トラコと共に「はて?女性らしい振る舞いとは?」だ。

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カフェー『燈台』店長の増野(平山祐介)が語ろうとする、よねの身の上話を遮るトラコ。
「よねさんの話を、よねさんがいないところでよねさんじゃない人から聞くのは、違うと思うんです」

朝ドラに限らずドラマのセオリーとしては、ここで増野の語りを聞くだろう。が、自分のこととして考えたら、いくら自分のためを思ってくれたとしても、知らないところでプライバシーを明かされるのは確かに嫌だ。
やはりこの『虎に翼』は、観ている私たちに「自分のこと」として意識させる仕掛けがありとあらゆるところに為されている。

そして、よね自身の口から語られる、彼女の過去……あまりにも辛く重い「ありふれた話」。
彼女の男装、周囲を拒絶する態度、そして「あんたらとは違うんだ」「法律はぶんなぐる為の唯一の武器」などの言葉、それらの意味が明らかになる。ある程度予想はしていた。
これまで、朝ドラヒロイン周りの女性たちが性的搾取される場合、ギリギリで回避されることが殆どだったのだ(例外もある)。朝だからという理由はあったろうし、観ている女性たちを傷つけまいという配慮もあったろう。

本作では「なぜ法律が必要なのか」を真正面から描くつもりだ。観ている私も、向き合ってみせる。

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よねは姉を「男を作っていなくなった」と言ったが、そうだろうか。
自分がこれ以上傍にいては、妹がまた誰かに身を任せてしまうと恐れたのではないか。弁護士を雇う金などないことはわかっている。ではどうしたのかは、容易に想像がつくだろう。
男と逃げるのならば金を持っていくはずだ。でもそのまま置いていった、妹のために。仲の良い姉妹が、お互いを思ったばかりに引き裂かれる……こんなことが許されてたまるか。

幼いころから家のために働いていたよねは、学校に行っていない。大学の法科女子部に入るための勉強は、文字通り必死、死に物狂いだったろう。
「私とあんたらは違う」は、まさにその通りかもしれない。しかし、だからといって同志でないとは言えないはずだ。どうか、よねの、そして法科女子部の未来に光を。

(つづく)







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