可愛そうにね、元気くん(8)最終巻

最終巻。語るべきことがありすぎて、かえって何も語れなくなる。八千緑姉弟のお母さんが、お姉さんである七子への関心が乏し過ぎて辛い。ヤケになった励一が姉に関連する爆弾をお母さんの眼前に放り込んでも知らぬ存ぜぬ。

同じ家族の中でこうも贔屓されてる子とそうではない子がいる風景ってしんどいよね。親子関係はつかず離れずの適度な距離感がいいと思うんだけど、過干渉だったり逆に無関心の家庭があったりする。

そういう問題を抱えた家の子供が大人になり新しい家庭を持ったら、今度はもう少しマシな家族を作ろう…と思いつつも、親に思考が似ていたりすることがある。

そんな真面目な話はいいんだけど文化祭の模擬店のラーメン屋で、店員の制服がチャイナドレス風でATKが強化されすぎている。お団子の守がかわいい。いつもは悪魔なのに。さすが学園のエンジェル鷺沢守。モービッド・エンジェル鷺沢!


完結…ちゃんとしたのは良かったなと。


「他者とどんな風に関わりを持っていくか?」ということにわりと正面からぶつかっていく作品だったと思う。

そのとっかかりとして、主人公の元気くんや励一などの江戸川乱歩的な性癖や変態性をフックにしているのは、ヤングジャンプらしさといえる。真面目な話ばっかだと重いし。

連載誌のヤングジャンプが、岡本倫の『エルフェンリート』や、岡本倫×横槍メンゴのきみだら等を掲載していた雑誌だけあり、エロ関係についてはそこそこ自由度がある。


『元気くん』の作品中では、いい意味で他人の考えに干渉したり無理に人を変えようとしていない人物を挙げると美術教諭の小柴川先生や、八千緑さんになる。

鷺沢守も常軌を逸した行動で人を自分のペースに巻き込もうとはするけど、基本的には相手の決断を尊重しているように見える。

働きかけて変化しそうな人に軽く働きかけるのはまだいいけど、変わりそうにない相手に執着することほど無駄なことはない。

よほど生死に関わるとか大勢の人に迷惑をかけるとかの行為でない限り、他人と他人の人間関係の問題になるべく自分は口を出さないようにしたいと考えているんだけど、そういう意味ではしっくりくる物語だった。

ヤングジャンプ『可愛そうにね、元気くん』


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