秋雨物語

貴志祐介、よく名前を聞く作家だけれども小説は初読み。なんとなく読まず嫌いだったかもしれない。贔屓の作家さんが激推ししていたので、それなら一つ読んでみようと手を伸ばした。

ジャンルは分からないけど、たぶんホラーの短編集。こわい。著者が非常に博識な人で、かつ隅々まで丁寧に念入りに描かれているので読み応えがある。かといって知識一辺倒でごりごり押すのではなく、情景描写も豊か。

そして、たぶんホラーなんだけどむしろミステリに限りなく近い感触がある。事実を積み重ねつつも虚構を織り交ぜてきて匙加減がちょうど良い。めっちゃ嘘つくのが上手。嫌な人間のいやらしさを書くのがとっても上手。いそう。いて欲しくない。

何か疑問に思ったことはたぶんすぐ調べる人で、かつノートなりデジタルガジェットなりにまめに記録していそう。

不世出の歌姫ミツコ・ジョーンズの謎を追う話『白鳥の歌(スワンソング)』に、バチバチのオーディオオタクの老人が出てきたのは面白かった。電柱は重要らしい。

実際にあるものをしっかり調べて、かつ机上で終わるのだけではなく体験とか取材もみっちりやってるように感じさせるリアリティがある。最近(といっても半年は経過している)読んだ中では佐藤究『テスカトリポカ』『Ank:mirroring ape』なんかはそう。

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