リミット・アトラクター
10^24ジュール。
地球の水を全て蒸発させるのに必要なエネルギーだ。
そいつが上空100km、虚空に開いた窓から顔を覗かせている。悪魔のチューブ。俺達には理解できない方法で宇宙に編まれた靴下の奥底から。
正確には、それはエベレスト1000個程度の鉄の塊で、この100年近く俺達はその塊が落ちてこないように必死で押し戻そうとしている。試みは部分的にはうまくいっており、俺達はまだ滅びていない。
誰がそんなものを地球に送りつけてこようとしているのか?
目的ははっきりしている。そいつが実際に落ちてくれば人類は…いや、ほとんどの生き物は滅亡する。生き残るのは昆虫と微生物くらいだろう。
だがそのプレゼント主は?誰も知らない。今日までは、だ。
「中佐、3分後に中和ビーム出力臨界です。」
我に返り、俺はコックピットで緑のスクリーンをチェックする。見ていろ、俺達はこんなことで滅びたりはしない。【続く】
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