映画:Oppenheimer鑑賞

映画”Oppenheimer”を観ました。
日本では劇場公開されていませんから、米国で11/21にリリースされた4K/UHD版のディスクをAmazon(米国)で買いました。
Oppenheimer

鑑賞には4K/UHDディスクが再生可能なプレイヤーが必要です。(手元にあるPanasonic製のDMR-ZR1では再生出来ました)

尚、日本語は入っていません。

観て正直に思うのは、確かにこの映画は、日本での公開は難しい、躊躇されるだろうと思います。日本は、言うまでもなく被爆国で、核兵器やその周辺の話題にはある意味センシティブで非常に感情的にならざる得ないと思います。

しかし、この映画は、核兵器の開発すらも歴史のひと幕として描きます。(ともするとアメリカの偉業の一つくらいの勢いです)

日本が受けた核の惨禍をオッペンハイマー自身が知るのは劇中、彼がニュース映画として広島で起きた事の断片を映像として見た時と描かれています。実際そうだったのでしょう。

また、彼の持つ国家機密情報へのアクセス権限(Qクリアランス)更新の審査の際、白熱した応酬の中、"広島への核爆弾投下は技術的に成功だった"、”私は自分の仕事をした"とセリフとして描かれるあたりは、非常に大きな熱意を持った科学者が起きるだろう破滅的な結果を想像せず、新しい何かを産み出してしまう恐ろしさを垣間見せ、核兵器に対する日本人の感じ方とは相容れないのでしょう。

当時は、ナチス・ドイツに先んじて核兵器を開発するのだ、という非常な熱意で科学者達は開発を進めます。しかし、当時のナチス・ドイツの国内状況を見ると果たして核兵器など作れたのか?それを兵器として使えるような余力があったのか、限られたリソースを考えると甚だ疑問です。

結局、戦前の共産党との関わりもあり、オッペンハイマーの機密情報へのアクセス権限は更新されません。

しかし、間もなく米ソの冷戦が始まろうとする時代、赤狩り・マッカーシズムの時代には、1930年代後半、スペイン内戦時の反フランコ政権、ナチス・ドイツの脅威に対する抵抗といったファシズムとの戦いの為、当時のインテリ・知識人が流行のようにこぞって所謂、左派を支持し、それだけでなく国を挙げて当時のソ連はじめ共産主義勢力を支援したことは顧みられない。

この映画を反戦映画だとする向きもあるようですが、私は科学者が情熱にかられてヒトの力でコントロール出来ないものを産み出してしまった姿を描いていると思います。それは、エンディング間際、池のほとりでオッペンハイマーがアインシュタインに言った言葉、連鎖反応が世界の全てを破壊してしまうのか?にもあらわれています。

この映画に影響を与えたとされる、カイ・バードとマーティン・J・シャーウィン著作のタイトルが"American Prometheus"というのは言い得て妙だと思います。
American Prometheus

この本、来年には日本語でハヤカワ書房から文庫(上中下の3巻構成)で再販
されるようです。

・オッペンハイマー

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