読後感想:資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか

ナンシー・フレイザー著「資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか」
原題:CANNIBAL CAPITALISM First published by Verso 2022


ナンシー・フレイザーの著作、"資本主義は私たちをなぜ幸せにしないのか"
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480075659/

原題:CANNIBAL CAPITALISM First published by Verso 2022
https://www.versobooks.com/en-gb/products/2685-cannibal-capitalism

(共食い資本主義とでもいうべき?)を読みました。

ここ数年、過剰な自由主義や資本蓄積主義に異様さを感じ、次のあり方を探る中で読んだものです。最初に違和感があったのは、全体の構成や論旨や繋がりに統一感が希薄でやや散漫だった点。

しかし、謝辞(本書のほぼ終わり近く)を読んで初めて分かりますが、章立てになっている本書の各章はそれぞれ時間軸が様々な時期に書かれたの個別の論考でした。

さて、本書で言われる資本主義の問題点として
1.無際限な資本の蓄積。
2.返却の無い自然(資源)からの収奪。自然(資源)の補充のコスト、回復費は支払われない。
3.社会的な再生産、ケア労働を無償労働、もしくは低賃金とする。
※現代の所謂"西側諸国"の一番の課題だと思う。

これらの問題、課題を乗り越える方法として著者は社会主義を挙げますが、果たして社会主義でこれらの問題を乗り越えられるのか?著者の論考は中途で終わっている気がします。

社会主義は前世紀に終わったイデオロギーではないのか?
社会主義と聞くと、スターリン治世下の旧ソ連で行われた集団化が起こした飢餓と殺戮、毛沢東時代の中国で行われた大躍進運動とそれに続く文化大革命によって失われた膨大な物的、人的損失を思い起こさせます。

果たして、社会主義が資本主義を代替するとすれば何によるものなのだろうか?果たして、資本主義の不正義や不合理絵を社会主義で救えるのか?社会主義をテコにして反知性的な煽動やムーブメントに堕した過去を乗り越えられるか?疑問が残った読後感でした。

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