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2023年プラチナ需給見通し改定

総需要が上方修正されたが総供給には制約がある

2023年のプラチナ需給見通し

 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が定期的に発表しているプラチナの需給見通しが改定された。前回に比べても需要超過が拡大する見通しとなっている。2021年、2022年は、コロナ禍の影響もあって、需要が低迷したため、供給超過の状態が続いてきたが、今年、2023年は、コロナ後の需要回復に加えて、供給面での制約が強まっているために、需要超過状態となっている。
 とりわけ、自動車向けの需要が急拡大する見通しになっていることと、このところマイナスが続いていた投資向けがプラスの需要となったため、全体として、年間31トンもの需要超過となると予想されている。
 全体としての供給不足分に関しては、地上在庫(市中在庫)の取り崩しで対応することになる。これは、コロナ禍の影響で、鉱山からの採掘量が大きく落ち込んだ2020年以来のことである。

需要を牽引する自動車向け

 2023年の自動車向け需要は、前年比12%増の101トンに達すると見込まれる。自動車1台当たりのプラチナ使用量が増加していることが要因として挙げられている。世界全体で、大型車両の生産が6%増となることも影響している。さらに、パラジウムの代替品としてのプラチナ需要も増加している。パラジウム代替品としての需要だけでも、年間19トンとなると推計される。相対的に高価なパラジウムから、プラチナにシフトしていることが指摘される。

自動車以外の工業向けも増加

 自動車以外の工業用途の需要も拡大している。2023年は、中国におけるLCDガラス向けの需要が前年比10トンも増加すると見込まれている。また、医療セクターやその他の工業セクターでも増加するため、自動車を除く工業向け全体では、前年比12トン増加し、過去最高の82トンの需要になるものと予想されている。
 世界経済は、景気後退が想定されており、低調な見通しになっているが、プラチナ需要に関しては、拡大するものと考えられる。

総供給は2023年も低迷

 2022年の鉱山からのプラチナ供給は低水準であったが、2023年についても、引き続き低調に推移するものと見込まれている。
 これは、一重に南アフリカにおける採掘量が低迷していることに起因している。南アフリカでは、慢性的な電力供給不足で、プラチナの採掘、精錬が打撃を受けているとされる。不安定な電力供給によって、南アフリカの生産量は、引き続き120トン程度にとどまるという予想になっている。南アフリカは、世界のプラチナ産出量の3分の2以上を占めており、その影響は甚大である。
 ロシアは、戦費獲得のためもあってか、年間20トンの生産を計画しているが、南アフリカの不振を補うことは全くできていない。鉱山からの供給量は、前年比2トン程度減少し、171トンにとどまるという予想になっている。
 鉱山だけでなく、リサイクルによる供給も低水準にとどまる見通しである。新車販売が不振のため、自動車から回収されるプラチナの量が限定的となっている。全体のリサイクル量は、前年比1トン減少し、52トンにとどまると予想されている。

投資対象としての魅力度が高まる

 2023年は、プラチナ需給全体が、非常に引き締まった状態で推移している。供給量が増加しない一方で、自動車及びそれ以外の工業用途のプラチナ需要は、堅調に推移している。
 プラチナは、水素エネルギーの活用に際しても、需要が発生するものと考えられる。ヨーロッパなどでは、グリーン水素の生産が活発化するものと見られるが、プラチナは、グリーン水素を生産する際の電気分解にも使用される。いわゆる脱炭素化の流れの中で、中長期的にプラチナの需要を拡大させる要因として認識されよう。
 さらに、投資向けの現物需要は、拡大するものの見込まれている。地金やコインの需要も拡大傾向だが、現物の裏付けのあるプラチナETFにも資金の流入が期待される状況である。水素需要関連との認識が広がれば、脱炭素という大きなテーマにも乗って、プラチナ投資が活性化する可能性が高まるものと考えられる。
 プラチナ投資については、需給逼迫が予想される2023年はもちろんだが、中長期的にも投資妙味があるものと見ている。金との比較においては、相対的な割安感も強いため、買いやすい状態にあるとも指摘される。
 金融資本市場の不安定性が増して、金価格がさらに高騰すれば、プラチナ価格にも影響が及ぶ可能性もある。

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