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新春を寿ぎ、100年ピアノの調べに酔う 〜NTS吉田社長の寄贈ピアノ演奏会〜

 NTS吉田社長のご母堂芳枝様は、晩年に絵画、機織り、ろうけつ染めと芸術や手芸に長けた才媛でした。
 その名残は社室に飾られた絵画の数々と共に神保町ブックカフェ二十世紀(神保町@ワンダー2F)に鎮座するレンナー製ピアノもその一つです。
永六輔 中村八大 坂本九は、昭和の歌謡史に燦然と名曲を残しましたが、芳枝様は久留米で中村八大と共にピアノ練習をされていたそうです。その後ピアノは長崎から千葉に運ばれ、その後芳枝様の松戸の住まいに運ばれ、長く芳枝様の目を喜ばせたのでした。
 中村八大氏も触れて奏でたであろう、そのピアノは100年の歴史を過ごしてきています。芳枝様が岳父より買い与えられた名器は、当時の家一軒分に相当する価格だったらしいのです。いつしか音楽を奏でる弾き手もなくなり、手狭な住まいから消え去る運命に抗い、縁あってカフェに置かれたピアノが今年、息を吹き返しました。
 カフェの壁沿いに飾られた芳枝様の水墨に彩色を施した優しい作風の絵画も十余点が連なり、参座に憩いの空気を生み出していました。
 吉田社長の新年の挨拶と共に母の思い出、名家の行く末を語りながらピアノの由来を紹介し、拍手を受けて登場したのはピアニスト順いづみさんです。
 中村八大作曲の『黄昏のビギン』からはじまり、ご自身のオリジナル曲目を披露されました。

ドイツRENNER社ピアノ1930年購入  
塗色の黒は漆よりも深みがある
昆虫体液のシェラック塗装仕上げ

 新春を祝うにふさわしい一晩でした。
 NTSとブックカフェ二十世紀はさらにつながり、古書店街にあらたなNTS情報拠点が生まれた瞬間でした。

<2023/01/11 NTS Journal編集長 花房 >
ブックカフェ二十世紀URL
https://jimbo20seiki.wixsite.com/jimbocho20c