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「だが、情熱がある」第13話:まだ漫才はしたいですか?

これはふたりの物語。言っていたように友情物語でもないし、今現在、2023年の段階ではふたりにとってサクセスストーリーではない。そして、ほとんどの人においてまったく参考にはならない。

予想を大裏切りしてきた神最終回

終わってしまった。4月から6月、こんなにも毎週日曜日が楽しみになるなんて思わなかった。当初は「たりないふたりなんてニッチなテーマ誰が見てくれるんだろう」とか「ジャニーズ主演って大丈夫なんだろうか」とか思ってたけど、第1話を見終わったぐらいには不安なんてなくなっていた。この主演2人に任せれば大丈夫。脚本だって若林さんや山里さん2人への愛とリスペクトが詰まっている。絶対これは最高の作品になる、と確信した。

ちなみに、最終回当視聴前に展開予想をしたのだけど

この予想は、全然当たらなかった。唯一蒼井優ちゃんがちらっと出てきてくれたところは当たったけど、それ以外は全然だった。予想をはるかに上回る展開で、途中からパニックになっていた。

インタビュー記事で

「本音を言うと本当に迷っています(※取材は5月中旬)。最初に全体像を組んだ時に考えたのは、以前やった『銭ゲバ』のような最終回を想定していました。つまり、“もしも”の世界を描く」
(中略)
「ただ、今はちょっと違うんじゃないかなって思い始めてます。それを果たして視聴者の方は見たいのかって。まだ結論は出てないです。」

山里・若林の物語の行方は「迷っています」 『だが、情熱はある』プロデューサーが最終回の落としどころの苦悩について語る【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】

とあったので、IFルートにはいかないんだろうなって思っていたけど、まさか世界線交差ルートに入るなんて思いもしなかった。若林正恭と山里良太と髙橋海人と森本慎太郎が1つの画面に映った瞬間、何が起きているのか訳が分からなかったし、その後若林さんの差し入れシーンや森本さんの「不毛な議論」の出演シーンが出てきたときには、あっけにとられて笑うしかなかった。

若林さんの結婚や、なぜ解散することになったのかという部分がはしょられていて、「たりないふたり」を知らない人は何で解散するのかわからないまま進んでしまったんじゃないかなって思うけど、まあそれはディレクターズカット版に入るんですよね?または映画ですよね?

「明日のたりないふたり」の漫才シーンもどこを切り取るんだろうと思ってたけど、やっぱりヘリコプターのところだった。わがまま言うと、汚いブリブリヘリコプターの音も入れて欲しかった。本当は竹槍のシーンも欲しかった。けどこのシーンだけに絞った結果「たりなくてよかった」というメッセージがシンプルに伝わってきてよかった。

「今幸せ?」という祈り

ドラマ中、ふたりは最後までたりなかったし、幸せそうかと言われたらそうか?となるし、サクセスストーリーじゃないと言うぐらいだから、成功しているわけでもない。
たりてる世界にいくことが、成功なのか。幸せなのか。満たされていることが幸せなのか。それをずっと、問い続けていた作品だったように思う。これは逆説的に、たりていなくても幸せになれるんじゃないか、という世界への宣戦布告のようにも感じ取れた。

タニショーさんが何度も問いかけてくる。

「今幸せ?」

この問いはドラマ中に何度もタニショーさんから若林さんに投げかけられてきたけど、6話のラストではタニショーさんから島さんへ投げかけられる。それを受けた島さんからの答えが「幸せになったらなと思ってます」だった。
その瞬間、幸せかどうかの問いは、祈りでもあるんだと気が付いて涙が止まらなくなった。幸せでいなきゃいけないという縛りのようでもありながら、問いかける側からの祈りでもあるんだ。どうか幸せであってくれという。

もう亡くなってしまったマエケンさん(タニショーさんのモデル)からの、時を経た若林さんへのラブレターのように思えて、しばらく涙が止まらなくなった。

「漫才したいなあ」って今でも思ってくれてますか?

ふたりの最後のセリフが「漫才したいなあ」だった。たりないふたりファンとしては、それが本心であってくれと思いながら、エレベーターの扉が閉まる瞬間まで見守っていた。再結成します!とか発表してくれ、と願った。

なにもなかった。まあだろうな、と思っていたらTwitterに飛び込んできた「文責若林」。
ドラマの余韻も相まって馬鹿号泣してしまった。

最終回でドラマと現実が交差して、ここにきて現実につながった。物語がまた1つ始まってしまった。その物語を公開するかしないかは彼ら次第だし、私たちファンはそれを知り得る方法はない。待つしかない。まあ贅沢言うと見たい。課金はいくらでもするから。

けど、どこかの公園でふたりが、ふたりのためだけの漫才をしているのかもしれないと思い浮かべるだけで、ファンとしては幸せ、だ。

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