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ライブは「エゴのぶつけ合い」なのか。その真髄を確認すべく、私はウマ娘のライブに足を運んだ

2022年8月24日の夜、ベッドの上で私はスマホ片手にボロボロ涙をこぼしていた。その日公開されたゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」の新シナリオ「グランドライブ」を遊んでいただけなのに、あまりにもそのストーリーが刺さりすぎて、一人泣いた。

ストーリーを簡単に説明しよう。勝利したものだけがセンターに立てる「ウイニングライブ」とはまた別に、みんなが平等に輝ける「グランドライブ」を復活させようと様々なウマ娘たちが奔走する物語である。そこで「なぜグランドライブをやるのか」という意義を問うシーンがある。本当は全部シナリオを読んでもらいたいのだけど、アグネスタキオンというウマ娘が放った言葉から引用しよう。

「君たちとファンのエゴがぶつかり合う場所だ!…夢の集まりだ」

グランドライブは、ウマ娘と、私たちの、エゴがぶつかり合う場所。そのセリフに、感情を揺さぶられた。ライブにしょっちゅう行っている身として、思い当たる節があるからだ。「好きだー!」とこちらの感情を一方的に押し付けている、と言われればそう、かも。ただ、エゴと聞くとネガティブな印象が強い。利己的で、他人を顧みない。エゴ、なのか?ライブってそんな場所なんだっけ。ライブは、君と、私の、エゴのぶつかり合う場所なのか。

その真髄を確認すべく、私は埼玉の奥地へ向かった――。
(訳:シナリオを読んだ直後、ウマ娘のドームライブがあると聞き速攻チケットを買った)

2022年11月6日、埼玉のベルーナドーム。ウマ娘の4thイベントの最終日。ペンライトも買い終え、客席へ腰かける。ステージは、メインステージと長い花道で構成されていた。芝のレースコースをイメージしたグリーンの花道がぐるりと客席を囲い、花道の途中にはミニステージが3箇所、そして円の中央に広めのステージが。その構成がゲームのラストに行われる「グランドライブ」のステージとそっくりだった。その時点で胸がぶわっと熱くなる。伝説の「GIRLS’ LEGEND U」が生で、このステージで聞けるのか。ずっと画面の中のウマ娘だけを見てきたけど、ようやくこのライブという場で、彼女たち会えるのか。胸を高鳴らせ、開始を待つ。ステージ裏から彼女たちの気合いの掛け声が聞こえてくる。開演前から会場は拍手に包まれた。

巨大なステージに彼女たちが出てきた瞬間、なぜか喉の奥がぎゅっと締まり、目が自然と潤んでいた。あ、ウマ娘って存在するんだと思った。いや違う、しないんだよ、しないんだけどさ。いたんですよ。歌って踊っているのは確かに声優さんなんだけど、ちゃんとウマ娘のソウル(魂)が宿ってた。推しがいた。私がいつもゲームの中で育てている、応援している、私の大好きなウマ娘ちゃんたちが歌って踊っていた。私は彼女たちがウマ娘の依り代のように思えて、心の中で何度も「演じてくれてありがとう」とつぶやいていた。

さて、この日はライブの真髄を確認するためにも足を運んだんだった。「ライブはエゴとエゴのぶつかり合いなのか」
途中まで正直その感覚は全くなかった。なぜなら今はコロナ対策として声を出せないから。想いもマスクの中でもごもごと消えてしまう。声出し可だったら「ありがとー!大好きー!」って叫んだのに。あとウマ娘の楽曲は「コール&レスポンス」にぴったりな曲が多すぎるため、叫べないことがもどかしすぎた。仕方ないので今はただただペンライトを振って、愛してるよビームを飛ばすばかり。伝わってるかな、私の愛。私の応援。私の、透明な声。

そうこうしていたらあっという間に終盤だ。セットリストが全部最高だった…あの娘があの曲歌うの…と感動していたら、「ウマ娘アニメ3期制作決定」の映像が流れた。ずっと待ってた続編アニメ。嬉し涙をこぼしながら、その瞬間、わかってしまった。ああ、エゴまみれだった私。

もう、こうやって足を運んで、ペンライト振って、応援していることが、もはやエゴなんだよ。「お願いします、終わらせないでください」「お願いします、ずっと応援させてください」と自分勝手な願いを押し付ける。だって、推したちが私の生きる糧だから。なくなってしまったら、私が息絶えてしまうから。だから、祈る、願う、押し付ける、「続けてください」わたしのためにも。
けど、これは一方通行の、ただのわがままじゃないと思いたいの。「推したい」「推されたい」「応援したい」「応援されたい」「ずっと続けてほしい」「ずっと続けたい」は相互に連動していると思いたいの。
推したちの「ずっと愛してくれてありがとうございます」の言葉は嘘じゃないって私は信じてる。そこに複雑な意味が込められていようとも、私は純粋にその言葉を受け取りたい。その言葉で、私は生きていられる。

推したちの存続が、私の延命措置になる。

人にエゴをぶつけることは良しとされない風潮にあると思う。だけど、時にはそれが大切な「想い」になり、双方向に通じ合うことにより相乗効果をもたらすこともあるんじゃないか。だったら、せめてライブの間は許されていいよね。お互いの声をぶつけ合って、ライブ空間を盛り上げる。大声で「大好き」って叫ぶよ。だから、あなたも笑顔で応えて。

ずっとずっとずっと、長く続けてください。愛を示すために、私はまたライブという場に、あなたに会いに行きます。次は、声出しがOKになった世界線で会いましょう。ありがとう。大好き。私のエゴ、という名の願いをどうか受け取ってほしいです。だから、あなたのエゴ、想いも私に下さい。

そういえば、ゲームのシナリオのラストにこんなセリフがある。
「『彼女たちに負けないように、私も精いっぱい輝きたくなった。そして全力で応援したくなった』その想いをまた新しくデビューする子たちへ。そして、新しくファンになる方たちへ。――つないでいってもよいでしょうか?」

想いは連鎖する、繋がっていく、広がっていく。広げていくために、終わらせないために、私は今日も推しへ愛を注ぐ。

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