「ミッドナイトスワン」ネタバレ感想。これは1人のプリマが生まれる物語。

※10月に書いて下書きに保存しっぱなしでした…。お焚き上げのつもりであげます。

なんか映画観たいな〜と思ってたらどうやら評判が良いらしいということで、予告の時点では観るつもりなかった「ミッドナイトスワン」観てきました。

今回もネタバレありなんで、ご注意ください。最近note、ネタバレ対応機能つきましょね、素晴らしい。

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予告だとか番宣だとかでは草なぎ剛さん演じるトランスジェンダーの凪沙さんがフィーチャーされがちで、てっきり主人公は凪沙さんだと思ってたけど、私的にこの物語の主人公は一果だった。一果という1人のプリマが生まれる物語だった。その物語に、凪沙さんという1人の人間がが大きく関わってただけ。ほんとそれだけ。トランスジェンダーだからこその部分もあったけど、物語の主軸に持ってくるのはなんか違うんだよな、という感覚。
凪沙と一果の根底には、弱者であるという共通項がある。凪沙はトランスジェンダー、一果はネグレクトされている子ども。互いにその存在が響きあって、新たな生き方を見出す様は見ていて心震えた。2人で夜中の公園で踊るシーンなんかは本当に綺麗。
ただ、一果が東京に戻ってきたあたりから、ああ、もう、そういうことかと。まじか、と。ああ〜…そういう現実もあるのか…と…。そういう意味ではリアルだった。今まで確かに見たことないリアルさがあった。

実は私的にはツッコミどころもたくさんあって、りんちゃんあんな終わりになったことを知った一果はどうなったのかとか、目の前で息絶えるとかやめてくれ〜トラウマになる〜とか、一果のメンタルめちゃくちゃになりそうなことたくさんあるのがしんどい。個人的にりんちゃんが最後までいい子だったのが救いなんだが、そこも最後が悲しすぎてつらい。

母になるって、なんだろうね。バレエの先生に「お母さん」って言われた凪沙がめちゃくちゃ笑って、なんだか嬉しそうだったのが印象的だったよ。ただ、実のところ一果は一回も凪沙の名前も、お母さんとも、呼んでなかった気がするんだよね。お母さんになりたかった凪沙さん。けどお母さんにならなくても、一果は凪沙さんのこと好きだったと思うんだよね。けど、不安になるのよ、凪沙は女で「ない」から。女になれば「母」になれるって、せめて性別が一致すれば、って。ねえ、凪沙さん。

登場人物、みんな不器用だったな。想いが噛み合わず空回り。もう自己犠牲型の愛はみんなやめよ。悲しいだけだから。

あと、弱者のあり方をまざまざと見せつけられたよね。才能があってもお金がなかったらバレエできなかったり、仕事もなかなか見つからなかったり。あーあ、まじ優生社会。

「よっしゃ、感動させたろ！」な物語はうんざり

ラスト、流れるエンドロールを見ていたら、周りからすすり泣く声が聞こえてきた。正直「えっ？」と思った。私は全然泣けなかったからだ。たしかに、ラストシーンの一果の踊りの素晴らしさには鳥肌が立ち、みにくかったあひるの子が白鳥になり飛び立つ様にグッときたけど、泣くほどではなかった。(というか上に書いたツッコミどころのせいで、わりと途中から冷めてたのもある)
こんな大舞台で踊る一果を天国にいる凪沙さんも見てくれてるよね、感動、なのかな。いや、違うでしょここでのベストはあの会場で凪沙さんが一果を見てることでしょ。人が死んでお涙頂戴はうんざり。「泣かすで」満々なの、冷める。今日見た映画の予告も、基本誰かしら登場人物が泣いてた。いやもう日本人感動物語求めすぎやない？確かに私も泣きたい時は泣ける映画見るけど、みんなそんな泣きたくなるくらい疲れてるん？大丈夫？
言ってしまうと、もう「社会的弱者」をくいものにしてお涙頂戴しようとする物語がうんざり。ここで必要なのは、エンタメ化ではないでしょ。「あ〜泣けた〜」の感想じゃないでしょ。エンタメ化して感動物語にもってこうとするから凪沙さんは死ぬし、逆に死という結末を辿らなくても良かったんじゃない？って思ってしまう。
もしかすると、凪沙さんの死が今の日本の現状に近いのかもしれない。私が平和ボケしてるから、知らないだけかもしれない。けどどうしても、私は凪沙さんが死なない世界線を探してしまう。

最後に、みなさんやっぱり演技は抜群で、もう一果ちゃん新人だけど本当にすごかった。もともとバレエやってたのもあるけど、踊る姿が本当に繊細。あとスタイルが良すぎ。今後の作品が楽しみ…！

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おまけ
個人的に映像ってとても伝わりやすいコンテンツだと思っていて、だからこそ伝えたいこと全面に押し出して作れば社会現象起こすレベルになると思ってんだけど、映画は楽しむものなのでいつまでもエンタメ止まりだよなあ〜なんて思ったりしましたとさ。海外の映画事情が知りたい。
予告の時点で「感動した〜」の一言で終わりそうな映画は、しばらく観ないかな。今の私には必要なさそうだ。