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『スイート・ホーム・スイート』


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作・中村冬雪

登場人物

スイート(17)・・・王族の娘。

レイ(25)・・・執事。既に死んでいる。

王(45)

王女(44)

執事大勢


〇回想・王室前庭園

7歳のスイートが遊んでいる。それを見守る王と王女。するとそこに暗殺者が出てきて銃を向ける。レイが走ってきてスイートを庇って撃たれる。暗殺者は他の執事に取り押さえられる。スイートがレイに駆け寄る。

スイート「レイ! レイ!」

レイはスイートにポケットに入っていた懐中時計を渡して息絶える。

スイート「レイ!」

〇王室内・廊下

執事たちが慌てて走り回っている。王が歩いてくる。

王「まだ見つからないのか」

執事1「すみません…」

王「どこへ行ったんだ…」

〇王室ゴミ捨て場

リネンを入れるカートのシーツの中に隠れていたスイートが出てくる。そのまま裏口から出ていこうとする。

レイ「どこに行くんですか?」

スイート「なんだ、レイか。びっくりさせないでよ」

レイ「これから先代の王を祭る式典ですよ。わかっているでしょう」

スイート「うるさい」

スイートは出ていく。

〇街中・街道

スイートは逃げるように歩いている。レイが追って歩いている。

レイ「戻ってください」

スイート「たまにはいいでしょ!ずっと誰かと会って笑顔作ってみんなの前に出て笑顔作って堅苦しい言葉で話しての繰り返しじゃない」

レイ「戻らないなら夜中に化けて出ますよ」

スイート「怖くないわよ」

レイ「じゃあ呪いますよ」

スイート「それが執事の言う言葉?」

レイ「もう死んでますしね」

スイート「少しは遊ばせてよ」

レイ「あなた様は本国の姫なのですから」

スイート「あ、あそこ気になってたとこ!」

レイ「聞いてますか?」

スイートがアパレル店に入っていき、レイも追う。

○アパレル店内

試着室から着替えたスイートが出てくる。

スイート「どう?」

レイ「失礼ですが絶望的にダサいです」

スイート「失礼すぎる」

スイートが別の服に着替えて出てくる。

スイート「これは?」

レイ「クソですね」

またスイートが別の服に着替えて出てくる。

スイート「これなら」

レイ「シーツ体に巻き付けてる方がマシな見た目です」

スイート「なんなの、じゃあレイが選んでよ」

レイ「かしこまりました」

スイートが着替えて出てくる。

スイート「うわ、すごいかわいい」

レイ「クラシカルにしながらも現在のトレンドを組み込んでみました」

スイート「やっぱ執事としては有能だね」

レイ「もちろん、当たり前です」

○街道
2人は街道を歩いている。

レイ「満足されましたか?」

スイート「…ねぇ、嫌になったことないの?」

レイ「何がでしょう」

スイート「執事としてずっといること。あなたも生まれながらに執事になることが決まってたんでしょ?」

レイ「…ありますよ」

スイート「じゃあわかるでしょ? 私の気持ち」

レイ「わからないと言えば嘘になります」

スイート「なんで私は人の前に立たなきゃいけないの? 私は素晴らしい人間でもない。誰かより優れてるところなんかない。…おじいちゃんみたいにはなれない」

レイ「…スイート様。それでも人には生業というものがあります」

スイート「生業?」

レイ「どんな家に生まれるか、どんな運命を背負っているか、それは決めることが出来ません。やりたいことを阻まれれるかもしれません」

スイート「私は…」

レイ「しかし、先代の王が話す言葉は民に生きる希望を与え、前に進む力をもたらしていました。それを見た時に、そんな素晴らしい人を支える執事という仕事も悪くないと思いました」

スイート「…私は」

レイ「いいですか、あなたには、スイート様には人を救う力を持つ言葉を持つ、そんな能力が備わっています。だから私は命を賭けました」

スイート「…レイ 」

レイ「なんでしょう」

スイート「一緒にいてくれる?」

レイ「…あなたがその懐中時計を持っていてくれる限りは」

スイートは懐中時計をポケットから出す。

スイート「また抜け出したときは、オシャレなコーデ見繕ってね」

レイ「もちろん。絶望的なセンスの服でプリンセスを外に出すわけにはいきません」

スイート「一言多いよ」

スイートは笑う。

〇王室

スイートが歩いて戻ってくる。走って出迎える執事たち。

〇王室・更衣室

スイートは正装に着替える。懐中時計を握って微笑み、市民の待つ方へ歩き出していく。

〈了〉

【下記の記事の続きでこれは書いてます】



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