日記(2021/04/20) #まじ日

「マチネの終わりに/平野啓一郎」読了。
普段あまり恋愛小説は読まない。人間関係を書いた話は好きだが、恋愛に限定されると、途端に共感しづらくなる。あまり恋愛にピンときていない。恋愛礼賛も好きではない。そんな中で読んだマチネの終わりに。この本が、いわゆる恋愛ものなのかと言われると、恋愛を手段としただけで主題は違うような気もするが、うまく説明できない。とはいえざっくりと恋愛小説で間違ってはいないはず。

天才ギタリスト蒔野とイランに取材に行くジャーナリスト洋子がひょんなことから出会い、惹かれ、すれ違い、道が別れ、そして…という話。そもそもなぜ2人がこんなに惹かれあったのか(3回しか会っていないのに人生で1番愛した人と言えるほど)、どうしようもない結果だったとされる。たぶん。後半、映画監督の洋子の父が「人間は結局、もう一度運命劇の時代に戻っているのではないかと近頃よく思う」と言うが、なぜか説明できない関係は、すなわち、運命なのかも?と思ったりする。
また「過去は変えられる」というのが本作の大きなテーマである。つまり、過去を意味づけできるということ。今から過去を振り返った時に、その間を過ごした自分は当時と同じようには過去を思えない。感覚とは不可逆なものだよな〜とぼんやり思う。逆に、今から未来の枠を想定することもできる気がする。今のこの気持ちを将来の自分が見た時こうやって懐古するだろうなと考えてみる。わりとよくそんなことを思ってしまう。

にしても、途中から蒔野のマネージャー三谷がうっとおしくて仕方がない。こういうポジションの人の中ではうっとおしくない方だけど、やっぱり、邪魔だなという思いが拭えない。マンガ「あずきちゃん」でも、さっさとあずきちゃんと小笠原くんがくっつくことを望んでいたし、付き合ってからを描いた「恋愛カタログ」が好きなのもそういう理由だと思う。とくに、男性側を狙う女ライバルの存在がもうダメで、本作はそいつがまた運命を動かす役目を担うものだから、余計耐え難い。これは趣味嗜好の問題だろうな。

平野啓一郎の小説を読むのは初めてだったが、結構好きな文体だった。小難しくてわかるようなわからないような言い回しな身を委ねる心地よさもある。返却期限が迫っているのでザーッと読んだだけだけど、よかった。

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