日記(2021/12/10) 「その日暮らし」の人類学 読んだ #まじ日

「「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済/ 小川さやか」読了。

「チョンキンマンションのボスは知っている」に続き、小川氏の新書を読んだ。Living for Today、その日暮らしに生きるとは?タンザニアでの参与観察(この言葉を久しぶりに聞いた)の経験を中心に、インフォーマル経済、下からのグローバル化について書かれた本。
規格化された資本主義にどっぷり浸かって生きてきた私には、肌感として理解しにくい感覚ではあった。が、将来のことを考えない、合理的であるより自律的である方を選ぶといった考え方と、そういう考え方が醸成される文化、コミュニティや経済の形成は、おもしろかった。「新しいメガネを手に入れた」という感想を見たが、まさにその通りだと思う。私の考えを大きく変えることも、生活がガラリと変わることもないだろうが、全然違う常識で動く世界を知ることはおもしろいし、数ミリでも、行動に影響を及ぼすような気がする。
チョンキンマンション〜は香港にいるタンザニア人の話だったが、本著はタンザニアでの話が中心になるので、少し理解に奥行きが出たのも良かった。

海賊版商品についての章はイメージしやすくておもしろかった。「法律的に違法」と「道義的に違法」は区別されており、単なる前者は必要とされる場面や理由があるということ。海賊版だから買っているのではなく、よく行く店で買ったカバンが、ブランド品と似たロゴがついているという感覚。全くの模倣品ではなく、あえて海賊版だとわかることが良心だという主張。とはいえ、中国人は、非難の対象であること。だからといって、長持ちする日本製が必ずしも喜ばれるわけではなく、オーバースペックは粗悪品より役に立たないことがある。
開き直りとはまた違う感覚、というか、開き直っているとすること自体が、西欧の価値観の押し付けでしかないのだろうな〜と思った。

小川氏の「都市を生きぬくための狡知: タンザニアの零細商人マチンガの民族誌」は、出版された当時、興味を持ったのだが、高くて買えなかった覚えがある。図書館で調べまでしたけど、当時は図書館も利用してなくてよくわからなかったのでそのまま有耶無耶にしていた。あのときの、あの人か!!!という約10年越しの再会に感慨深いものがある。今は図書館の利用方法も知ったので、予約待ちの状態。順番が回ってくるのが楽しみ。

10年て……

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