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インド旅行記①(成田→デリー)

2023インド旅行記:目次はこちら


ついにインドに行ってきた。
私はもともと、あまり進んで旅行に行きたがる性分ではなく、特定の土地に対するイメージが充分すぎるくらいに蓄積されたら、「そんならひとつ行って確かめてみるか」くらいのスタンスである。
今回も、物心ついた頃からのインドに対する蓄積が臨界に達し、巡り巡ってついにインドに行く時がきた。私にとっても初インドは大きなイベントだと思うので、記録として残しておきたい。

出発日。早速早朝の成田空港のマックで、自分の注文したハンバーガーを白人の兄ちゃんに持っていかれかける。声を掛けて気づいてもらったが、幸先の良い滑り出しだと思う。
エアインディアでまずデリーに入るのだが、成田ではチェックイン列の並びが多く、日本人もかなり多い。最近は大学生グループもインドに行くんだなぁと思ってたら、その列はクアラルンプール行きだった。正しくはその隣にひっそりとあったインド人ばっかりの列。そりゃそうか。

諸々の手続きを済ませ、搭乗。席毎にディスプレイが付いているが、自分の席はUSBポートが外れかけているし、コントローラーも収まっていない。前の列に至ってはブルースクリーンになっている。

エア・インディア機内
USBポート外れ
ブルースクリーン

非常時の案内ビデオが流れるが、スピーカーとの接続が悪いのか音が流れず、何度も最初から再生。最初の部分を何回も見て、その都度天井のディスプレイが上がったり下がったりする。ブルースクリーンの席の人は無言で移動していた。それと後に判明するが、自分の席はリクライニングが効かなかった。
離陸後シートベルトマークが消えると、飲み物と小袋のお菓子が配られる。どこからインド時間に合わせるかだが、この時点でインド時間だと朝の8時くらい、日本時間だと11時半頃。朝早くから動いてたから、そりゃお腹も空いてくるわけだ。お菓子はコーンを炒ってサワークリーム味にしたもの。手に葉っぱの欠片が残るので、色んなスパイスも入っているのだと思う。普通に美味しい。エアインディアの飲み物タイムには温かいスープはなかったが、ビーフィーターとかバランタインとかワイルドターキーとか、アルコールは色々ある様子だった。

たいへんおいしゅうございました

しかし機内で北インド古典音楽のドキュメンタリーが見れたり聴けたりするのは、当然といえば当然だがありがたい。ザーキル・フセインだけでアルバム三枚くらいある。サントゥールのシヴ・クマールも二枚くらいある。

そうこうする内に機内食の時間。ベジかノンベジを聞かれ、ノンベジならチキンかフィッシュ。皆に先んじて個別に届けてもらっていたお客さんもチラホラいたが、あれはハードなベジタリアンだったりムスリムだったりなんだろうか?
隣の日本人のおじさんがフィッシュを頼むと、自分には自動的にチキンが来た。どうやらそういうシステム?らしい。本当か?CAさんちょっとサボらなかったか。
機内食は非常に美味しい。トマトの効いたチキンカレーとオクラのカレー、ご飯に全粒粉のパンとバター、ズッキーニとジャガイモとパプリカのマリネに、チョコケーキのデザート。あと何故か木曽の天然水。

パンをいつ食べたらいいのか分からなかった

チキンカレーは日本のインドカレー屋の一番辛いやつくらいの辛さ。辛いものが苦手な人にはつらいだろうと思うが、オクラのカレーは間違いないし、マリネも箸休めとしてとても良い。フワフワしたガトーショコラのようなチョコケーキは爽やかな酸味のあるレモンソースの上に乗っていた。上から掛けられていたのではなく、ソースの上に乗っていたのは何故か?それは誰にも分からない。食後にはコーヒーまで頂いた。大変おいしゅうございました。

食事の後は消灯されて、強制的にお昼寝タイム。暇潰しに適当に映画を流してみるが、普通に良すぎて泣いてしまう。『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー3』、良いですね。

実感は写真よりだいぶ暗かったです

ちなみに左斜め前の日本人の兄ちゃんは『アバター』『インターステラー』『テネット』を立て続けに観ていた。何という体力か。自分だったら絶対持たない。しかし映画のラインナップも二時間半~三時間のものが多く、コッテリマシマシチョイスだった。これを朝飯前に観こなすくらいでなければ、もしかするとインドは渡っていけないのかもしれない。

離陸から五時間ほど経つとスナックが配られる…筈が自分だけスルーされ、CAさんに声を掛けて皆が食べ終わった頃にようやく貰える。チーズサンドと野菜サンド、バニラムースにお馴染み木曽の天然水。

野菜そのもののうまみを久しぶりに感じた

チーズサンドはマジでチーズのみ。しかもこのチーズがかってぇ!口のなかがすぐにモソモソになる。カッテージ(固ってぇ)チーズってこういうことを言うんだろうか。野菜サンドはレタスとキュウリとトマトのみで味付けなし。久しぶりにこんなにシンプルなサンドを食べたが、チーズサンドよりは美味しかった。

八時間ほどのフライトで、最後の一時間くらいは体勢がきつくてもぞもぞしていたが、何とか到着。そういえば出発も予定より10分早かったし、到着も予定より45分早かったとのこと。エアインディアは遅れるという口コミが多かったが、早く着く場合もあるみたいです。ただ設備がボロいというのはその通りだと思う。CAさんもサバサバ系ですけど特に不満はありませんでした。

使う機会がないことを祈る

空港に到着し、入国手続きも完了。ビザは事前にオンラインで手続きしておいたが、特に問題ありませんでした。「インド国内の知り合い」って項目があって「そんなんおるかい!」と「該当なし」と手入力して申請したけど、すんなり承認。あとは発給されたPDFのビザを印刷して持参すればOK。ちなみに航空券は旅行代理店から見積もりを取ると格安航空券比較サイトの最安値よりも安かったので、そこだけお願いしました。H.I.Sでお願いすると、コンシェルジュみたいな形で旅行前も旅行中も担当の方に相談できて、出発前はかなりお世話になりました。
空港だと為替レートが悪いそうなので一万円だけ換金して5000ルピーちょっと。今回は中古のSIMフリー端末とインドSIMを買って行ったが、着陸後自分の荷物を棚から下ろす頃にはアクティベートが済んでました。

この先に例の壁から釈迦の手のオブジェがある
ここで両替したけど、今見るとパンジャーブ州の銀行ですね

荷物も無事帰ってきて、メトロ(地下鉄)でニューデリーへ。そもそも日本人が全然おらず、チケット窓口にもデジタルペイメントオンリーとの表記があり、よく知らないインドのローカル決済マークが並んでいる。もしかしてクレジットカード使えねぇの?と思ってカスタマーサービスカウンターに行くと、その場でクレジットカードで決済してくれた。日本に比べるとそれはそれは無愛想だったけど、まぁそういうものなんだろう。
チケットはQRコードの付いたペラペラのレシートみたいなやつで、そのコードを改札機にかざして入る。あと入る時にも空港みたいなセキュリティチェックがあった。今でもテロの脅威なんかがあるのだろうか。
入国してからずっと、ほんのりスパイスの香りに包まれている。これからの日々を楽しみに思う。

こっちに行く人は皆無だった
ナマステしてる
使った後だしQR載せても大丈夫だよね…?

メトロのニューデリー駅で降りて2時間ほど経ってようやく予約したホテルに到着したが、ここまでの道のりが本当にタフだった。さすが聞きしに勝るニューデリー。

まずメトロのニューデリー駅で降りたところ、ホテルは電車のニューデリー駅の向こう側。何とか線路を越えないといけない。しかも『地球の歩き方』にも沢山実例が書いてあるが、この「ニューデリー線路越え」は1番よくあるカモられスポットらしい。
しかしたかが線路越え、駅は渡れなくともちょっと歩けば陸橋や踏切があるだろうと思ったのが甘かった。道に出てすぐ無茶苦茶に声を掛けられるのは想定内のこと、無視を決め込んで駅から離れて少し歩くも、あれですね、ニューデリーの道は基本的に車両の為にあって、歩行者が歩くことはあまり想定されてないところが多いんですかね。グーグルマップで線路を横断してる大きな道まで来たが、どうも車両しか通れなさそう。歩行者は皆無。

一人一人の活気が凄かった

すわここまでか、と徒歩は諦め、その辺りにいた1番気の弱そうな兄ちゃんのリクシャーに声をかけて、「ただ線路の向こうに行きたい」と伝えると50ルピーで了承してくれた。ここまでは良かったのだが、いざ乗り込もうとすると、ずっと付いて来てた声掛けの兄ちゃんが「俺なら10ルピーだ!!」とムンムン近付いて来る。こっちはもう話が付いてるのに進路に立って行く手を阻み、挙げ句こっちのリクシャーのエンジンを無理矢理切ってしまった。気弱そうな兄ちゃんが抗議すると二人の間で口論が始まり、どうもこっちの兄ちゃんが言い返せなくなってしまったらしい。まぁそういう押しの弱そうなところを見込んでお願いしたのだが。
自分はこっちの兄ちゃんに「早く出して」「どうして進まないの?」と話しかけるが、力なく笑うばかり。その間にも押しの強い兄ちゃんはグイグイ来る。「私はこっちの兄ちゃんに話している」「あなたには頼んでいない」と散々断ったが埒が明かないので、「あんたのリクシャーにだけは乗らない!」とちょっと(かなり)大きい声を出してその場を離れるしかなかった。離れるフリして気弱兄ちゃんのとこに戻ってみるも、やはり押し強兄ちゃんが目ざとく見つけて戻ってきて同じ展開に。やはり無理だ。気弱な兄ちゃんにごめんね、と思いながらとりあえず駅まで戻る。

いきなりハードな洗礼だった

あの気が強くて篦棒に安い(行き先の話をする前から10ルピーと言っていた)リクシャーに乗ると、彼にバックのある割高なホテルとか旅行代理店とか土産物屋に連れて行かれるんだと思う。しかも彼自身は運転せずに別の運転手がいたから、彼は自由に動き回って今回のように強引に客を捕まえる役割なんだろう。

この時点でも結構疲弊していたが、駅まで戻る途中に眼の前でアイスを落とした別の兄ちゃんがいて、目が合うと悲しい顔をしてたのでつい「god bless you.」と声をかけると、今度はそのアイスの兄ちゃんがしつこく付きまとってくる!「リクシャーは乗らないのか」「良いホテルがあるぞ」云々。おぉニューデリーよ。お前は善意で他人に声を掛けることすら赦してはくれないのか。

夜の街角に神々が打ち捨てられていた

結局ニューデリー駅の入り口で寝たり座ったりしている人達に混じって座り込み、「ニューデリー駅 反対側」とかで調べると、「ニューデリー駅攻略マニュアル」なるページがヒットする。先人達よありがとう。知は継承することにこそ意味がある。先達はあらまほしきことなり。

攻略マニュアルによると、駅に入るゲートはセキュリティチェックが物々しいが、あれはほんとに入る人の持ち物をチェックしてるだけで、検札は乗り込んでからとのこと。なので通り過ぎるだけなら普通にセキュリティチェックを越えて構内陸橋を渡り、反対側から出るだけで良いらしい。そんなに簡単なことだったんかい!

マニュアル通りにセキュリティチェックを過ぎて、呆気ないほど普通に反対側に出られてしまう。…これが人生というものなのかもしれない。或いは、ただ単に私の下調べ不足だったのかもしれない。

こっちは大変なのに皆楽しそうだなぁ

その後ホテルまで、日本だったら10分程度で何のストレスもなく歩ける道を、リクシャーや車や犬や座り込んでいる人達をよけながら、30分程かけてようやく到着。グーグルマップも、通れない筈の道があったり通りの数が違ったりして、細かいところまでは反映できていないような気がした。

ニューデリーでは道を歩く時に常に気を張っていないと、すぐに轢死しそうな気がする。バンコクも車やトゥクトゥクの勢いはすごかったが、車道と歩道が明確に区別されていて、信号でお互いの流れも制御されていた。しかしこちらでは、全ては個々人の動物的感覚と、シヴァ神の思し召しのまま。

あと何か周りの全員がケンカしたら負けそうというか、自分が弱い立場なんだということをヒシヒシと感じる。道端で写真撮っててもふと背後が不安になる。これはかなりニューデリーの洗礼にやられてしまっているのだろうか。

今夜のホテル。すげー路地裏だけど大丈夫だろうか。

這う這うの体でホテルに辿り着くと、思ったより暗めのホテルでヤカラ感のある兄ちゃんが取り仕切っている。あ、今回ホテルは全て事前にネットで予約しておきました。今は予約ポータルサイトも色々あって、海外のホテルも国内とそんなに変わらない感じで予約できるんですね。
そして今回のホテル。薄暗い路地裏にあり、これまでの件もあり微妙に警戒したが、このお兄ちゃんは普通に良い人だった。支払いで多くお札を出してしまったのだが、コレはいらないよ、と返してくれて、隣にいた同僚に「このお客は俺に〇〇ルピーもチップくれるとこだったぞ」なんて話しかけている。黙っていれば私も気付かずにポケットないないすることもできただろうに。これだけのことで、久々に人の優しさに触れたようでグッときてしまった。部屋も古さが隠しきれない感じだったが、まぁ一泊900rp(1600円くらい)なら妥当だと思う。シャワーは水のみだったけど、一応エアコンは付いてたし。

テレビはずっとこの画面だった
シーツは心なしかしっとりしてました

パハールガンジ(メインバザール)まで繰り出す元気もなく、近場のパンジャーブ料理屋でマタルプラオとkyao paneerを食べる。マタルとは何か、店員さんに聞いても分からなかったが、出てくるとどうもグリーンピースのようだった。kyaoの方はグレービーが欲しいというとオススメしてくれたが、パニール(チーズ)のカレーということ以上は分からなかった。美味しかったが疲弊してしっかりと味わうこともできず、ミネラルウォーター含めて245rp。自分の前の席には西洋人カップルが来ていて、女性の方は奇抜なピンク髪だった。ふと、ねこぢると山野一のインド旅行のことを思い出す。

道に開けたお店
マタルプラオとキャオパニール
口に入れるもの(食後のリフレッシュスパイス)の上にお釣りが乗って帰ってきた

水を求めて散策するも、グーグルマップにあるコンビニは存在しない。仕方なく露天のおばちゃんからミネラルウォーターを買う。キャップは開栓されてなかったから大丈夫の筈。この旅は1週間しかいられないこともあり、お腹を下すことには注意したい。ホテルに戻り9時過ぎには就寝したが、日本だと深夜1時くらいか。ヘトヘト。しかし神経が昂ぶってなかなか寝付けず。テレビの映し方も分からず、天井のファンをじっと眺める。
1日目からこんな感じで、この先大丈夫なんだろうか。

(インド旅行記②に続く)


パンジャーブ料理屋の外観を取り忘れたので翌朝撮影
道の向かいに厨房があった
エアインディアチケット裏の広告
インディラ・ガンディー空港はとにかく広かった
柱にタブラのイラスト
こんな体勢で寝て、起きた時に腰が痛くなったりしないのかな

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