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仕事

 生まれ変わったら、月か鴎になりたい。ふとそんなことを考えながら、私はお客様のお会計を済ませる。
閉店後、店を片付けて足早に退店し、道中のコンビニで500mlの缶ビールを2本買った。店員は、お釣りの小銭とレシートを青色のトレーに放った。1円玉3枚が落ち着くまで私は待ち、財布に仕舞った。店内放送のラジオが、最後まで私を追いかけて、夜の暗がりにまで漏れだしていた。
家に着くと、ベランダに出た。ビールを一口のみ、月を見た。雲がまだらに掛かっていて、体内から発光している大魚のようだと思った。
客は今日も、生に従順で、俺はただ呼吸を失っていた。
生まれ変わるならば、俺は、月か鴎に。
客は・・・。

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