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10月26日 中央社会保険医療協議会 総会(第530回)傍聴録 No55

10月26日中央社会保険医療協議会 総会(第530回)傍聴録


今回は総会に先立ち開催された薬価専門部会に興味深い議論があったため、そちらの傍聴録を記します。

薬価専門部会 令和5年度薬価改定に向けた関係業界からの意見聴取について

意見陳述


*日本製薬団体連合会:原材料コストが高騰し影響を受けている。医薬品は製造効率化・価格転嫁・製造量調整は出来ない。よって薬価引き下げ状況になく、薬価緊急引き上げ措置も提案。
*日本ジェネリック製薬協会:後発医薬品企業の原価率は5%上昇し、設備投資は対売上12%。後発医薬品全体で製造原価80%超えの品目が30%以上あり、現状は薬価を引き下げる状況にない。
*日本製薬工業協会:医薬品市場は世界で5%の成長の中、日本はマイナス成長。市場拡大再算定や毎年薬価改定が要因。日本市場の魅力が低下している。国内未承認薬が増加し、日本への投資優先度が変化している。特許期間中の新薬は中間年改定の対象外とすべき。
*米国研究製薬工業協会: 薬価制度は投資に強い影響を持つ。日本の優先度が低下、新薬上市割合が低下しドラッグラグ再燃の兆しあり。日本は世界唯一の市場マイナス国。薬価下落は将来の新薬価格を推察させる。新薬の価格は特許期間中維持されるべきである。
*欧州製薬団体連合会:日本の市場魅力はefpia構成企業でも低下。要因は予見性の低下による。特許期間中にも関わらず薬価下落は増加。薬価改定の在り方も抜本的検討必要。
*日本医薬品卸売業連合会:卸売業の現状は①需給調整による現場逼迫②コスト増による収益悪化。毎年の価格改定のコストは548億円と試算、これに需給調整コストが加わる。現場の疲弊による事業継続が危ぶまれる。

質疑応答


*2号側意見
長島委員:・物価上昇の影響はどのカテゴリーの医薬品に影響があるか(→回答:以下略)低薬価品への影響。
・新薬と長期収載品の状況の違い→新薬には将来の研究開発費が含まれる。長収品は安定供給に懸念を生じる。
・英国のドラッグラグと自由価格の米国掲載の意味は→英国のドラッグラグは不明、米国は世界1のイノベーション先進国として掲載
・安定供給の仕組みは→薬価の下支え、不採算薬価制度の見直し。
・新薬の薬価は維持される考え方は議論の余地がある。新薬創出加算の適応範囲は次期改定で改めて議論する。
有沢委員:・現状下で安定供給不安に繋がり、ドラッグラグやイノベーション投資が弱まる中間年改定は実施すべきでない。実施なら範囲を検討するべき。
・製造時の赤字対応は→価格転嫁できず法規制もあり製造工程は対応不可。人材確保も将来的に困難になる可能性。
・安定供給のコスト説明は→増産、在庫の積み増し等見えないコストも増加中

*1号側意見
安藤委員:・ドラッグラグ増大の危惧。何故日本に未申請なのか→大事なのは日本に新薬を届けることだが日本独自の投資が必要。官民のパートナーシップや簡単な薬事が必要。現状では日本に対する投資増は難しい。薬事承認は世界レベルになったが薬価によって日本市場の魅力が落ちているのでは。
眞田委員:・一般産業と異なる医薬品産業のコスト対策は厳しいことを理解した。
佐保委員:・安定供給は重要であり今後詳細な資料提出が必要。
松本委員:・中間年改定の実施判断は大臣合意であり中医協判断の範囲を超えている。
・乖離の「著しい」増加の具体的考え方は
・研究開発環境や薬事承認に本質の問題があるのでは→先駆的薬品のインセンティブが十分ではない。臨床試験の病院規模が小さく私立も多いため治験コストが上昇する。
・卸の疲弊は医療機関との契約に起因するものではないか→その通り。需給調整で通常の1.2倍の時間が掛かっている。情報伝達と価格交渉の阻害懸念がある。
・コスト増加の為替レートのウエイトは→海外展開の程度で違う。想定レートからかなりの乖離がある。


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