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【進撃の巨人】本誌エンドは『その世界を生きた「人」の話』、単行本エンドは『その人たちが生きた「世界」の話』だと思った話

◎最終話ネタバレあり/アニメ派非推奨


単行本34巻は別マガ本誌の最終回に少し加筆がされていて、本誌はミカサの"ありがとう"&鳥のアップで完。単行本はその後のミカサの人生と、さらにそのずっと後の世界の様子まで描かれている。


1.本誌エンド

本誌エンドは、エレンやミカサ、大使になった104期といった"人"に感情移入できるし、ミカサがエレンを想う言葉で終わったことで「これはエレンとミカサをはじめとする"人"の物語だったんだ」という印象を受けた。

エレンが守った"人"たちが未来に向かっていざ歩みを進める場面で物語は幕を閉じるから、"人"に対してきらきらした希望を感じるし読後もその余韻が残る。
争いは無くならないとアルミンは言うけど、それでも彼らなら争いを無くせるんじゃないかっていう希望を"人"に見出すことができる。

一方、単行本エンドの視点は4ページのうちにどんどん"世界"へ移行する。

2.単行本エンド

エレンが守った"世界"は再び戦争を初める。未来に向かって歩みを進める"人"に希望を感じたあの場面は歴史にとってはほんの一瞬の出来事に過ぎなかったんだ、争いはやっぱり本当に無くならないんだ、人類の歴史は戦争の歴史なんだ、っていう現実を叩き付けられる。

それまで感情移入して読んできた"人"がその生涯を終え、感情移入できるキャラクターがもう存在しない中で、ただただ"世界"が描かれる。

"世界"は、"人"が人生を終えようが終えなかろうが、容赦なくずっと続いていく。

あの丘の木も、137話のアルミンの話や本誌最終話、そして34巻の表紙絵でもすごく尊くてきらきらした希望の象徴のように描かれていたけど、単行本では光るムカデがいた木とほぼ同じフォルムに成長していて、戦争の歴史を繰り返そうとする"世界"の意思のように感じる。

3.ふたつのエンドを読んで

本誌最終話を読んで感じたものと、単行本最終話を読んで感じたものが自分の中であまりにも違っているので、同じ物語で2パターンの終わり方を体験できた事がまずはただただ凄いなと思う。

本誌エンドの方が前向きな気持ちで読み終われるし、エレンのした事の意味(もちろんエレンの罪が人道的に許されない事なのは大前提で)が感じられるというか、この状況を作りたくてエレンは進み続けたんだなと思える。

けど、やっぱり単行本エンドのように、徹底的に容赦なく現実を叩きつける終わり方こそが進撃の巨人だとも思う。

どっちがいいっていうのは個人的には実は無くて、「"人"の話」としての進撃の巨人も素晴らしいし、「"世界"の話」としての進撃の巨人も心に突き刺さるものがある。
最終的に先生が単行本を最終形として出したという事は単行本の形が先生の意志なんだろうなと思うし、単行本だけで読了した読者さんにとっては本誌エンドは存在しないから比較のしようが無いんだけど、本誌エンドは本誌エンドですごく良かったんだっていう事をすごく言いたい気持ち。
そして、短い期間だけど本誌を追ってたからこそ2つのエンドを体験する事ができたのは本当に貴重な経験だったなと思う。

一つ気になる事があるとすれば、どういう心境の変化から、何をどう見せたくて先生はエンドを変えたのかな、というのは知りたい。
いつか何かのインタビューで聞けたらいいな。

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