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【番外編】Youtubeより「岡村吉起さんと桜井正博さんの対談」の中の「定数」と「変数」の話から考えたこと

 


1.岡村𠮷起さんと桜井正博さんの対談(Youtube)

 いつもは本や論文をざっくり要約した上で感想を述べるのですが,今日は以下のリンクにあるYouTubeを観て思ったことを少し書いてみたいと思います。岡本さんはCAPCOMのストリートファイターや古くはsonsonなどのゲームを手掛けたクリエイターで,対する桜井さんは任天堂で星のカービィや大乱闘スマッシュブラザーズを手掛けたプロデューサーです。この2人の夢の対談が全8回にわたって展開されており,どの回も非常に面白いものとなっています。今回はその中でも第3回目の話を考えてみたいと思います。

2.定数と変数

 第3回目では,なぜスマッシュブラザーズを開発したのかということを岡本さんが尋ねたところ,当時流行っていた格闘ゲームのシステムへのアンチテーゼであると述べていました。それはいわゆる連続技によって体力ゲージがどんどん減っていくという現象でした。やられたら体力ゲージが減っていくという概念に対して,スマッシュブラザーズは蓄積ダメージという概念を取り入れています。
 岡本さんはこのことを「定数」と「変数」という概念で説明しています。ゲームを制作するにあたって手を加えるべきパラメーターが変数であって動かしてはいけないものが定数です。岡本さんにとっては体力ゲージは「定数」であって「変数」として見なして手を加えることは全く考えたこともなかったということでした。それに対して,桜井さんは,まさにそこに注目し,体力ゲージの在り様が変化すると考え,例えば,同じパンチであってもダメージが蓄積されている状況とそうでない状況では吹っ飛び方が違うという状況を編み出したわけです。

3.研究の着想としての「定数」と「変数」

 研究者にとっては定数と変数と聞くと多変量解析を思い浮かべてしまいますが,私がこのYouTubeを観て感じたのは,研究モデルを組み立てる時やリサーチ・クエスチョンを立てる時に参考になるのではないかと思いました。研究のモデルを組み立てる時にもちろん先行研究に基づいてボックス&アローを構成しますが,本当に見たいもの以外はあまり動かさないある意味実験群と統制群の考え方に近いかもしれません。
 あるいはもう少し大きく考えると,今まで自明として思われていた概念を要素分解するであるとか,「定数」として扱われていた概念の存在を疑ってみること(「定数」→「変数」への変換)が新しい概念の発見であるとか,新たな因果関係のパスを見いだすことになるという話と繋がりそうだなと自分の研究に引き寄せて勝手に共通点を見出しました。こういう発想の転換ができる論文が書くことができるといいなと日々思います。

 それにしてもお二人とも若い。桜井さんにいたってはとても50歳を超えてるとは見えないです。人生を楽しんでいることが若さの秘訣だということもここから学びました。

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