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コロナが狂わす音楽家の人生

まだまだ危ないんですよ!

世間はもう色んなダークなニュースで溢れかえっていて、もう2年前からあるような病気の話なんて飽きちゃって……ってなるのも分かるけど!
まだまだ流行ってて気を抜くとサクッとやられるんですよ。重症化したら目も当てられないはもちろん、「罹った」というだけで狂ってしまうものもあるんです。スケジュールとか。タイトルには「人生」とか仰々しく入れちゃったけど。

音楽祭最終日のケース

室内楽の音楽祭、結構な確率で最終日に「動物の謝肉祭」持ってくるんですね。楽しい曲だし皆知ってて大好きだし、音楽祭の最後を飾るのにピッタリ。ナレーターに面白い人入れれば笑いも取れる。これ最強。
ただあまりに有名でベッタベタなので「そんなん誰でも弾けるでしょ」と思われがちなのだけど、実際のところちゃんと練習しないと難しいフレーズが満載。特に2人組のピアニストは息がピッタリでどっちも上手くないと困るんですね。
そのピアニストのうちの1人が本番2日前に「あ、陽性…」ってやるんですよ。そりゃもうパニックです。慌ててあちこち電話して「『動物の謝肉祭』いける?うん、2日後…うん、しかもピアノ1パート…あ、無理?だーよーねー☆」とかやったんです。
そのうち年老いた音楽監督が「仕方ない、ワシが…」とか言い出したので「すわ、往年の天才が久々に一肌脱ぐ胸熱展開か!」と思ったんですが、音楽ってやっぱ日々の練習がものを言うのですごくヨタヨタと弾いてました。
何とかかんとかコンサートそのものはやり切ったもののすごい不完全燃焼……

オペラのケース

オペラって準備大変なんですよ。準備に物凄い額のお金かかるし、ことさら歌手の人たちの稽古の量は半端じゃない。オケ?割りと気楽に来て「あ、ミスったwww」とかやってますよ。ほんっとプロですよね。
たまに熱くなりすぎた音楽監督と舞台監督が胸ぐら掴み合って取っ組み合いするという(※誇張表現)ドラマをくぐり抜けて、ようやく初日の幕があがるんですね。感動ものです。
で、曲が始まる前に監督が出てきて「実は主役のテノールがコロナに罹ってしまいまして…」とアナウンスするんです。絶望感すごい。
主役の代わりをスタンバイさせておくって大型劇場とかダブルキャストじゃない限りなかなかできないんですね。「舞台に出る可能性ほとんど無いけど全部の曲を暗譜して振り付けも全部覚えてね!」ってなかなか言えないし、いざという時に代役を務められるだけの力量がある人のスケジュールを抑えておくのも大金かかるし。
結局どうしたかって、違うテナーの人が舞台袖から楽譜見ながら歌い、振付師が主役の格好だけして舞台に出て演技部分だけを担当するという二人羽織みたいなことやって切り抜けました。2週目以降はその人治って出てきたけど。

ツアーのケース

代役が効くタイプの欠員ってまだ可愛いんですね。「打楽器の一人(又はセクション全体)がコロナったので今すぐ飛んできて!」という連絡受けたこと、この数ヶ月でも結構ありました。今でもあります。
室内楽の、さらに長年組んでてそのグループじゃないと演奏できない曲を主軸にしてるコンサートと言うのはその中の誰かが病気になったら「ちょっと誰かに代打頼むか」とはいきません。
自分はといえば今月、国内を北から南へと突っ切るヴァイオリン・マリンバのツアーが計画されていたのですが、出発三日前になって相方が「ちょっと大事な話があるので電話して良い…?」と連絡してきて「あ、これアカンやつや」と一発で分かりました。
大急ぎでツアーの企画してくれてる会社に連絡。もうかれこれ2年ほどコロナでの急なキャンセルや延期に慣れっこになっていた会社の手際の良さたるや、脱帽ものでした。
結局ツアーの前半だけを延期して再スケジュールしてもらい、後半の直後に来るようにしてなんとかツアーとしての体裁は保ちましたが、一箇所だけ「どうしてもホール抑えられなくて…」と言うことでキャンセルになってしまいました。あぁ~採算が取れなくなる音ぉ~。

今日起きたこと

地方オケに出張で行くんですがお金のないオケなので「どうにか打楽器4人で出来ませんか……?」とか言われてるんですね。コルサコフとかやるんですけど。5人要るんですけど。
この時点ですでにいっぱいいっぱいで、なんとかかんとか楽器振り分けをやりくりして大事なパートだけ落とさないように4人で回せるようにしたんですが、今日になってその大事な4人の奏者のうち1人から連絡が来て「体調がちょっと……」と。
「すわ!またコロナか!」と白目を剥いていたところ、その奏者が「いやあの、実はインフルエンザで…」って……

そこはコロナ罹っとけよ