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再生

正月休みに、両親と姉と私の4人で、つまり子供時代の家族と、外で食事をした。
そんなことは、ひどく久しぶりだった。私には夫と子供がいるし、姉は仕事で移動が多い。両親は数年前まで不仲だった。みんな、それぞれの理由で、別の方向を向いていた。だから、食事に行くことになっても、家族で過ごすことより、その店の料理を私は楽しみにしていた。
だが、食事は思いのほか楽しかった。笑いが絶えず、なにを話しても嫌な気持ちにならなかった。
それは驚きだった。こんな日が来るとは想像もしなかった。素直にうれしい。うれしいと感じることがうれしい。

帰宅後、母は「お父さんが(私と姉を)一人前の大人として話すようになった」と言った。
それに、母と父も話をしていた。今でも時々、テレビとラジオが同時についているみたいに、それぞれ自分の話をしていることがある二人(その様子は印象的で、他人を混乱させる。私は「並列話法」と呼んでいる。同じテーブルについて話しあいながら、話題は別なのだ。2ヶ月ほど前も、私は笑いながらそれを指摘したが、その際、自分が笑えていることと指摘できていることが喜ばしかった。それが、「言ってはいけないこと」ではなくなったということだ。)だが、その日は会話が成立していた。
私と姉の間の空気も変わった。姉とは、長く、顔を合わせても言葉を交わさなかった。連絡先も知らなかった。けれど、私は過去のわだかまりに囚われなくなった。10年前に姉に言われたことを、今ではどうでもいいと思える。完全に水に流すことはできないが、被害者意識やこだわる気持ちはない。胸を衝くような激しい怒りは消えた。

この数年、仕事や転居を通じて、私は自分の望むことを形にしはじめている。両親は互いに歩み寄りつつある。姉のことはあまり知らないが、以前より安定しているように見える。
なんだか、私と両親、姉は、今、気持ちが一致しているのかもしれない。各自の場所で、明るい方に進んでいる。今は。

そんなことがあるのだ。冷え込んだ関係も、また穏やかになることもあるのだ。期待さえしていなかったのに。

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