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批判は鋭いがストーリーは鈍い 『ザ・ハリウッド』ポール・シュレイダー(映画 2013)

ブレット・イーストン・エリスが原作の映画を見たかった。この作品では、彼は脚本も担当している。

だが、率直な感想としては、ピンとこなかった。

感情移入させないストーリーだ。というのも、登場人物が皆、中身のない人間として描かれているのだ。女優を諦めたタラは、映画プロデューサーのクリスチャンと暮らしているが、その経済力に頼るため彼の言いなりだ。クリスチャンはただのクレイジーな金持ちだ。俳優志望だが芽の出ないライアンは、仕事のために平気で身体を許す。
それぞれ生活はしているのだが、つまり、誇りのない人たちである。魅力的な人物がいないので、共感できない。

それに、音楽が画面と不釣り合いに思われる。スタイリッシュなオフィスのシーンで、ロックとか。

これらは、ハリウッドの現状を批判するために、意図的にやっているのかもしれない。
タイトルロールの背景はさびれた映画館だし、タラには次のようなセリフがある。
「あの映画には感じるものがないの。一番最近、いつ映画館に行った?あなたは映画を愛していないんじゃない?」
ラストカットは、凶暴な目をしたライアンの顔のアップだが、これは殺害された元恋人のために復讐を誓う表情であると同時に、映画界に対する本作の立場表明だろう。

しかし、お決まりの筋書きをあえて排除した結果、つまらなくなってしまったら逆効果ではないだろうか。

さて、私だったら、どう作るだろう。
例えば、冒頭のシーンを変える。
本作ではタラ、クリスチャン、ライアン、ライアンの恋人の4人の会食シーンだ。あまり中身のない会話が交わされる。タラとライアンは浮気をしているが、ここでははっきりと分からない。この映画全体を表しているような、ドラマチックではない幕開けだ。

私だったら、この場面の前に、別の場所でタラとライアンが一緒にいるシチュエーションを入れる。観客は、二人は正当な恋人同士だと思う。そして、続く会食場面の状況から、浮気なのかと推測することになる。

⭐︎食の場面
冒頭のシーンは会食場面。そのほかに食べるシーンが思い出せない。

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