見出し画像

『ミツバチのささやき』オジュエロス村

映画『ミツバチのささやき』(ビクトル・エリス監督・1973)の撮影地であるオジュエロス村を訪ねた。

水道橋の街セゴビアから車で40分くらい。バル一軒ない小さな村だった。

映画では主人公の少女たちの住まいとして使われた屋敷が、今もある。カサ・ルラル(一棟貸切を基本とした田舎の宿泊施設)となっている。事前に連絡を取り、中を見学させてもらうことができた。(できれば宿泊したかったが、満室だった。)

パティオを囲むコの字型の屋敷を、オーナーの女性が案内してくれた。500年前からこの土地を所有している一家のメンバーだという彼女は、『ミツバチのささやき』についてもちろん知っていた。
「宿泊客で映画のことを知っている人はほとんどいない。スペインでは有名ではない。2年に一度くらい、その映画が好きな日本人が来る」
ということだ。
「あの窓があの場面のそれで、この部屋は…」と説明してくれる様子から、彼女自身は映画を何度もみていて、この建物にも愛着があるようだった。

他にも、映画に登場する建物や風景が村の中に散在していた。
たとえば屋敷のそばの小川。アナが迷子になった時に、フランケンシュタインの幻を見た川だろうか。黄緑色の藻に覆われた川面に、時折、カエルが顔を出す。
林の向こうはどこまでも麦畑。
私はその日の夕方にはマドリードに戻っている予定だったけれど、そんなことは現実ではないような気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?