8月、エイリアンを折る。

画像1 これは2013年に折って、ずっと家に飾っていたエイリアン。 強い紙で折ったために、自重と紙の目の張力で、ねじれ始めてきていました。 それで、修復すると同時に新しいピースを折る計画を去年から立てていたのです。 去年から…というのは、使いたい紙を入手するのに手間がかかるのと、 150センチ四方以上の大きさの紙で折るには、集中できるタイミングが必要だったのです。 デザインそのものも見直したかったこともあり、 そんなわけで準備が整うまで、長くかかってしまいました。 この8月、ついに着手することにしました。
画像2 160センチ四方。 なかなか大きいですね。まずはこれに折り目をつけてゆきます。 紙が大きくて両手を広げてぎりぎり持てる感じで、自由にコントロールできません。 ゆっくり動かさないと予期せぬところに張力がかかり、自重で破れる危険があります。 慎重に、一本の折り目をつけるにも時間をかけます。
画像3 この作品は、線の数は少ないのですけれど、 1辺を3等分したり、 それをさらに5等分したりという、 イレギュラーな等分線を割り出す必要があります。 丁寧にやります。
画像4 数日、毎日少しずつやって、だいたい基本的な展開図の折り線をつけることが出来ました。 ここから20日くらいかけてゆっくり折り進めるつもりだったのですが、 たまたまこのタイミングで、 今家にかざっている前のエイリアンが、自重と紙の目の力で破損を始めました。 偶然でしょうけれど。 それが悲しかったりもしましたので、 この際、集中して一気に折ることにしました。 まずは折り線にしたがって、基本形をたたみます。
画像5 真ん中に、エイリアンの頭部の「キャノピー」を作ってあります。 キャノピーに余分な折り目がつかないように、 注意して折り進めてゆきます。 両側に広がっているひし形の平面は後に胴体になります。 その平面につながって、指となるパーツがジャバラ状に畳まれています。 胴体を畳むと、腕と脚もはっきりするはず。
画像6 全体として「ツルの基本形」に似た形になりました。 中央の、「ツルの基本形の四角い背中」に相当する部分から、 いろいろテクニックをつかって、「エイリアンの背中の突起✕5」を折り出しておきます。 これをやると、同時に「尾」も明確になります。
画像7 大体、すべてのパーツが揃いました。 ここから、造形の勝負になります。 この先の作業はバランスも細工も難しさが増し、 ここまで頑張ったのに、結局「失敗」ということになることも多いのです。 集中力を上げるため、この日は休み、 明日、すっきりした頭と指で臨むことにします。*   *   *
画像8 眠りました。 各パーツの造形を進めます。 どこを肘にするのか、膝にするのか、角度をどうするか。 明確なポイントは決まっていないので、随時判断してゆきます。 紙の重なりによるテンションは、ケースバイケースで逃し方を考えてゆきます。 また、同じ紙でも、その時折っている紙そのものの個性により、 微妙に折り方を変えてゆかねば、うまく折りが収まりません。 それらと「折り合い」をつけながら、 目指す形に近づけてゆきます。
画像9 解像度が上がってきました。 頭部のキャノピーに折り目をつけずに進めることができています。 ですが、腕と脚に予期せぬテンションがかかっています。 また、背中の突起が、思ったより下方になってしまいました。 すべて、折りの工夫を蓄積して、少しずつ良い方向に寄せていきます。
画像10 指も、指らしく表情をつけてゆきます。
画像11 エイリアンは6本指なのです。
画像12 ほぼ全体に表情が付きました。 頭部キャノピーは無事です。 自立するように、各部のバランスを整えます。 大きな紙なので自重が大きく、 特に腰の強度が足りません。 また、今回はビッグチャップらしく尾を前に向かってカーブさせたいのですが、 そのためますます立つための強度バランスが難しくなります。 折りを加え、強度を上げてゆきます。
画像13 自立しました。
画像14 正方形の頃の写真と、サイズを比べてみましょう。160センチ四方の紙から…
画像15 …50センチの背の高さのエイリアンになりました。 ずっと立たせておくと、歪んでしまうので、 台座を用意します。
画像16 見た目にはわかりませんが、 台座からアルミ棒の支柱が2本伸びており、脚を支えています。 折り手が、紙を相手にどんな時間をすごしたのか。 それが表れることは、僕が折り紙を好きな要素のひとつです。 造形そのものも魅力ですけれ 僕は自分の作った折り紙作品を眺めるのが好きです。 自分が紙と過ごした時間を眺めて楽しむことができるからです。 折り紙は、 「紙一枚を相手に、諦めずに挑み続けた時間の彫刻」 のようなものですね。 それはどんな芸術も同じかもしれません。 演劇も。

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