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「流浪の月」を読んで

つい先日「ムゲンのi」を読了し、物語を読む楽しさ、読み切ったあとの爽快さに心揺さぶられました。それで、自分読書に目覚めたようです。

読み切った翌日には本屋に赴き、次の獲物を探していました。ただ、自分には誰が書いた作品がいい、とか、こんな物語が読みたい、とかは特にありませんでした。とにかく、読んだあと何か心に残る物語りを読みたい!

それで、手っ取り早く本屋大賞を受賞した作品で、一番目立つ位置に陳列されていた「流浪の月」を手に取りました。実は、知念実希人著の「十字架のカルテ」も気になっていたのですが、「ムゲンのi」で医療ドラマにどっぷり浸かったあとだったので、違った嗜好の話がいいかなと思い、決めました。

あらすじ

全ての物語りは雨降りの公園で小学生の更紗が男に誘拐された事件から始まります。そのニュースは瞬く間に世間に広まり、誘拐した男は変態の小児性愛者、誘拐された女児は可哀想な少女として認知されました。誘拐事件が解決され、女児と加害男性はそれぞれの人生を歩み出しますが、その事件によるレッテルは酷く付き纏いました。

しかし、真実は事実とは違いました。事件から時がすぎ成長した少女と男。彼らが出会った時、物語りは再び動き始めた。

歪んでしまった人たちが、自分たちを取り戻す

生きていれば誰しも困難や苦悩に突き当たるものですが、人によっては乗り越えれらないほど大きな壁もあるのでしょう。そうしたどうしようもないものから逃れるために、時に人は間違った方法をとることもある。

更紗と事件を起こした文はそれぞれ問題を抱えており、自分を守るため行動しました。しかし、それは周囲には理解されないことで、結果としてより孤独になりました。そんな二人が、恋人とも友達とも違う、特別な存在になれたことはこの世の中に存在する形ではないけれども、とってもあったかい気持ちになりました。

昨今では現実世界の繋がりは希薄になり、SNSの様な誰とも知れない人物の声がよく聞こえる時代です。そんな時代だからこそ、自分を守るため、大切な人を守るため、人とは違う形であっても繋がりを大切にすることが大切だなぁ。そんなことを感じました。

ゆっくりと回る毒のようなストーリー

幸せだった生活が少しづつ狂い始め、ゆっくり落ちていく話は知らず知らずに毒が回るよう。急激な展開はないものの、そんな生々しい感覚がある読書体験ができます。おすすめです。

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