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創業経営者と創業メンバーの関係は、やっかいだった

創業経営者と創業をともにしたメンバーには、他のメンバーとは違う絆ながあるようです。
私にはわからない創業期の苦難を乗り越えてきた深い絆でしょうか。
私は、ある企業に在籍していましたが、創業経営者が率いる企業は、すでに上場企業になっていました。
私が入社したとき、すでに企業は厳しい状況にあり、赤字を出し、しかも現預金が大幅に減少していたため資金繰りはひっぱくしていました。

数年前に、業務上横領事件も発生しており、企業は末期症状をあらわにしていました。
しかも、横領した社員は、創業経営者と創業期をともにしてきた社員でした。
部長職にあり、それなりの処遇をされていましたから、私には、不自然に感じられました。
私は、この経営者に創業期の苦労話を聞きましたが、それは大変な毎日だったようです。
創業メンバーとは、寝食を共にする間柄だった、と聞きました。

この企業だけではありませんが、創業期をいっしょに働いてきた創業経営者と創業メンバーには、独特な雰囲気があります。
企業が順調に成長し、拡大していくことで株式公開されると、創業経営者と創業メンバーの間に、多くの乖離、いわば格差が生じてきます。
あくまで私の想像ですが、創業メンバーが考えていることは、自分たちが支えたから、この会社は、これほど大きくなった、という思いでしょうか。

一方、創業経営者は、株式公開で大きな創業者利益を得ます。
さらに経営者として高額な報酬をとり、そのうえ毎年配当が入ります。
創業メンバーは、このような状況をまじかにみることになります。
もっとも、創業経営者もある程度の配慮はしているようでしたが、問題は創業メンバーが納得しているかどうかでしょうか。

私が在籍していた企業の創業メンバーには、創業経営者を信頼しているといった言動が微塵もありませんでした。
そのような中で横領事件が起きています。
私は、この事件を調べているうちに、横領事件を起こした創業メンバーと創業経営者との間にある不満や憤りを知ることになりました。
その本質は、人間の嫉妬心でしょうか。
創業経営者だけが、うまくやっているという根深い恨みのようでもありました。

創業経営者は、企業が大きくなればなるほど、こうした創業メンバーに対して細やかな対応が必要になると思われます。
もちろん、企業が拡大する理由は、創業経営者の経営能力によるものなのですが、創業メンバーは、そうは考えていないようです。
自分たちがいたから、ここまで企業は大きくなった、と考えています。

このような齟齬を防止するには、簡単に言えば、厚遇することしかありません。
結論から言えば、役職を与えるよりは、高い報酬を渡しておくことです。
このような齟齬は、どこまでもお金で解決するしかありません。
役職は、相応な能力がなければ、事業を拡大していくうえで問題を発生させます。
創業メンバーの経営能力に関しては、問題を発生させているケースを、他の企業でも少なからずみてきました。
創業経営者は、創業メンバーに対して迷いがあるのです。
当然でしょう。
多くの苦労を共にしているからです。
また、創業メンバーは、創業経営者が話すことをすぐに理解しますから、部下として扱いやすいのです。
こうして腐れ縁が継続しているように、私には思えました。

しかし、この点が、パブリックカンパニーになれるかの分水嶺になるのかもわかりません。
うまく対応できている創業経営者は、時間をかけながら創業メンバーを役職から遠ざけていきました。
ただし、創業メンバーから不満がでないように、報酬は高額にしています。
また、状況に応じて子会社の役員へ異動させたり、独立させて創業経営者が個人的に支援をしていたようでした。

創業経営者をみて感じたことですが、だいたい苦労を共にしていることで、創業メンバーに対して中途半端な対応になっていることでした。
経営とは、メリハリが求められますから、処遇などを明確にしなければ、事業が拡大すればするほど、新たに入社してきたメンバーからも、創業メンバーの役職と能力などに違和感をもたれ、経営にとって明らかにデメリットになっています。
ストレートな話ですが、高い報酬によって創業メンバーの不満を抑えて、経営の中枢からはずしていくことで、経営活動や機能を正常化させなければなりません。

創業経営者を支えた創業メンバーには、自分たちのおかげで会社が大きくなったという自負心がいつまでもあるのです。
人間の機微でしょうか。
この対応を誤っている創業経営者がいる企業は、残念ですが、その企業が成長拡大していくことはありません。
時間をかけ高額な報酬を払って、事業の拡大に合わせていきながら経営機能からうまくはずしていった創業経営者がいる企業は、事業の拡大に成功しており、現在、主要な役員に創業メンバーはほぼはいっていません。

もっとも、事業の拡大とともに自らが成長できている経営能力が高い創業メンバーを排除する必要はありません。
いうまでもなく、経営とは、経営能力がある人たちの集合体だからです。

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