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第213回全経簿記上級 工業簿記・原価計算 雑感

第213回全経簿記上級試験を受験された皆様、お疲れ様でした。
現在、ネットスクールでは特設サイトにて解答速報や講評動画、解説動画を配信中です。

https://www.net-school.co.jp/event/zenk/kaitou/

その中でもいろいろとしゃべっていますが、改めてnoteでも、今回の工業簿記・原価計算の問題で感じたこと、思ったことを簡単に書き記しておきたいと思います。何かヒントになるものでもあれば幸いです。

工業簿記

※YouTubeで配信している解説動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=IzKkYkAsRzA

問題1

問題1は総合原価計算における仕損費の処理を中心に問う問題でした。

問5では、正常仕損・異常仕損が同月に発生しており、度外視法・両者負担で異常仕損には正常仕損費を負担させない計算が問われており、しかも、正常仕損品に評価額があるパターンなので、難しく感じた方もいらっしゃったかもしれません。

ただ、それ以外の問題の処理については、1つひとつ冷静に見るとテキストなどで学んだ基礎知識で対応できるものがほとんどであり、内容自体はそれほど難しいものではありません。
ですが、それなりに計算量が多かったため、見た目以上に時間がかかる問題だったのではないでしょうか。

「私が作問するんだったら、問4と問5はどちらも仕損の発生点を50%にして、異常仕損費の計算を省略できるようにするのになぁ…」と思ったのは、ここだけの話です。
再度計算し直す手間が増えた分、計算量が増えてしまったことも、体感的な難易度を上げる原因になったのかと思います。

ただ、後述する問題2の方が解けなかったという方もいらっしゃるでしょうから、そういう方は問題1にきちんと時間を割いて高得点を狙う戦略を採るべきだったとも言えます。

問題2

問題2は総合原価計算における材料の追加投入に関する問題でした。

A材料とB材料が2:1の割合で投入されるという条件であるため、完成品12,000kgがA材料8,000kg、B材料4,000kgで構成されているという点を糸口に、A材料・B材料の生産データを整理しながらパズル的に月末仕掛品やB材料の投入量を推定していく流れとなります。

また、問2のB材料は「工程の50%時点から投入を開始し、終点で所定の重量比になるように平均的に投入」するという、変則的な平均的投入の問題でした。
この投入パターンだと、0.8(80%)まで加工が終わった月末仕掛品には、完成品の60%(注)にあたるB材料が投入されているはずなので、60%を掛けた換算量を使って計算を進めることになります。

(注)B材料の月末仕掛品投入量の求め方

$$
{\frac{(80%-50%)}{(100%-50%)}=\frac{30%}{50%}=0.6(60%)}
$$

50%から100%までの間の工程、つまり工程の50%分の長さのうち、50%から80%までの30%分の作業が済んでいるので、50%のうちの30%、つまり60%と考えます。

この考え方に辿り着けないと、問題2の問3の解答も難しかったので、資料の分量(見た目)以上に点数は取りにくかったのではないでしょうか。

問題3

問題3は連産品の原価計算に関する記述式の問題でした。
連産品の特徴と、連産品のみ負担能力主義的な計算が認められる理由を答える問題です。

実は私が担当していた第213回試験向けの上級講座のまとめ講義で、「連産品は理論問題で出るかもしれないので、その特徴や負担能力主義のことも確認しておきましょう」と話していたので、そのことを覚えていた受験生の方には、ぜひ頑張って何かしら書いて部分点でもいいので点数を稼いで頂きたかったなと思っています。

原価計算

※YouTubeで配信している解説動画はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=TQxOrs3DQAQ

問題1

問題1は最適セールス(プロダクト)・ミックスに関する問題でした。

ただ、一般的な最適セールス・ミックスの問題とは少し趣が異なり、2つの連続した生産プロセスそれぞれに生産能力の制約があるというもので、第201回の原価計算の問題2と類似した問題でもあるため、この問題を解いたことがある方は、まったく見ていなかった方よりも解答に至る可能性が高かったのではないかと思います。

プロセスA・B両方が2つの製品に共通する制約条件として考えて、線形計画法(LP)で解答を進めようとした方がほとんどだと思います。

ただ、解説動画の中でもお話ししていますが、解き進めていく過程でグラフを描くと、ある事に気付きます。
それは、「プロセスAで対応できる量の製品は、必ずプロセスBでも対応できる」ということです。
これは、グラフにするとプロセスBの制約条件式が、(P・Qともに正の値の領域では)プロセスAの制約条件式と交わらず、ずっと右上方向にあることから判断することができます。

プロセスA・Bは連続しており、プロセスAで加工した製品がどんな組み合わせの量でも絶対にプロセスBで加工できるのであれば、もはやプロセスBの制約は考える必要がないので、プロセスAに着目して最適セールス・ミックスを考えればよいという問題になっています。

ただ、ここまでの話を本番中に気付けるかというと、なかなか難しいところがあったのではないでしょうか。

ですが、もう1つ注目したいのは問4の条件です。
問4では、プロセスAに機械を(リースで)導入して生産能力を増強するという問題です。
これにより、プロセスAは需要上限を超える量でも対応できる生産能力を獲得するので、プロセスAの制約は一切無視して良いことになります。
そうすると、プロセスBのことだけ考えればよいので、むしろこれまでの条件よりも解きやすい問題になります。

諦めずに問4まで解き進めて、このことに気付いて頂きたいなと思いつつも、時間のことを考えると、なかなか難しかったのかもしれません。

問題2

問題2はCVP分析に関する内容が出題されました。

ネットスクールが刊行している2024年2月対策の過去問題集にも掲載している第193回の問題1かなり似た問題です。

ただ、過去問題に似ているか否かに関係なく、基本的な計算がほとんどで、CVP分析の考え方を理解している方にとっては、比較的易しく感じたのではないかと思います。

その他の問題が(工業簿記を含めて)計算量が多かったり、癖の強い問題が多い分、いかにこの問題を速く正確に処理できたか、他の問題に労力を割けるようにできたかがカギを握ったのではないかと思います。


ざっと今回の試験で感じたことを文章でつらつらと書き並べてみました。
読みにくい点、分かりにくい点があれば、ご容赦ください。

このあと、6月の日商簿記1級試験や8月の税理士試験に切り替えて勉強を続けられる方も多いのかもしれません。

大変かと思いますが、次なるステップに向かう方は、ぜひ今回の経験を活かして、新たな道を突き進んで頂ければと思います。

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