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なんでもない日も、なんだかいい日に!(ホンダ・ビート①)


こんにちは。いつでも行き当たりばったり、のりたまδです。
突然ですが人の嗜好というのは時のように移り変わったり変わらなかったりするものです。飲めなかったコーヒーがある時飲めるようになったりとか、逆に好物だったものがふとした瞬間〇〇はもういいや……ってなるとか、そういうやつ。
小学生の頃読んでいた頭文字Dで見た「11000回転まで回るレース用の4A-G」とかそういうものに惹かれていた私も年を追うごとに「そんな回らんでええやろ……」「高回転型エンジンってとにかく回さんとどうにもならんの言い換えでは?」「そもそもめちゃくちゃやかましくなるじゃん……」みたいな人間になっていって、今に至りまして。
そんなわけでいつものように行った関西舞子でビートの鍵を渡された時は、内心複雑だったりしました。いやその前月に乗ったオートマのコペンでオープンカーの楽しさを知り、いつか次に買う車は屋根開き車しかないと“理解”った身としては割と気になる存在ではあったし、乗ってみたかったのは間違いないのですが、しかし大半の軽スポーツ(※Keiスポーツではない)はどうにも「目を三角にして走ることを要求される」というイメージがあり、そこにホンダお得意の高回転型エンジンが加わるとなればなおのことその傾向が強いのではないか、と。「踏んで楽しい」は「踏めない市街地ドライブが総じてカス」と同義がち。

“スポーツ”ではなく、“アミューズメント”

つーわけでビートです。原付ではない。わたくし原動機がついてる乗り物はタイヤが4つないと乗れませんの。
四輪のホンダ・ビートは1991年にデビューした軽自動車。760kgの車体に組み合わされるトゥデイやアクティにも搭載されているE07Aはリア・ミッドシップに搭載され、660ccの自然吸気エンジンながらも自主規制めいっぱいの64馬力を8100回転で発生。本田宗一郎が最後に公の場に姿を見せたのがこのビートの発表会ということもあり、そのうちエンツォ・フェラーリとフェラーリ・F40みたいな扱いになるかもしれません。(???)
遊び心満載のこのホンダ・ビートで気になるのはお化粧直しのためのミラーとライトがあるのかなんといっても車体色。標準車はカーニバルイエロー、フェスティバルレッド、クレタホワイトにブレードシルバー・メタリックの4色。特別仕様車としてバージョンF、C、Zの3種が存在し、これら特有の塗色としてアズテックグリーン・パール(F)とキャプティバブルー・パール(C)とエバーグレイドグリーン・メタリック(Z)の3色が用意されています。

93年10月に発売された特別仕様車のバージョンZ。
エバーグレイドグリーン・メタリックの深い色味が特徴的。

ビートに乗る機会を下さったのは以前の関西舞子でもフォルクスワーゲン・up!に乗ってきてRMT(ロボタイズド・マニュアル・トランスミッション)車の楽しさを布教していった罪深い方。「どんな車にも得られる知見はある」を信条としているぼくですが、こうやって色々な方に「乗っておいで」と色々な車を運転する機会をいただきまくった結果、知見オーバーフローして何もかも欲しくなってしまうのがダメ。ホントによくない。万が一これで影響されてぼくが車買っちゃったりしたらどうするんすか。だいたい乗せてくれる人が乗ってるのは部品に困りそうな車ばかりなのもどうかとおも
とりあえず乗ってみましょう。ビートの全高は1,175mmということもあり、着座位置はめちゃ低。地面と平行気味に足を伸ばすドライビング・ポジションにびっくり。エンジンを掛ければ背後からは(3気筒であることを鑑みると)割と雄々しいサウンドが……と思っていたんですが、トゥデイ乗りの皆様が口を揃えて「アクティやん」「アクティですねえ」と言うもんだからもうそれにしか聞こえません。
「8500回転まで回しておいで」とのアドバイスを胸に走り出すとステアリングの心地よい重み。ノンパワステなんですね。5000兆点!(甘口のウ○丼)
デケえ道に出て(道端の生垣と目が合う視線の低さ!T字の一停とかは普段の位置からだと来る車が見えません)2速で床まで踏んでみると、どこか田舎のおじちゃんの軽トラが脳裏によぎりつつも、ともすればなんかめちゃくちゃすごい車にでも乗っているかのような背後からのサウンド。そして盛大な風の巻き込み。しかしやっぱり視線の低さだとか、音の聴こえてくる方向とかがこうも違うと新鮮さがダンチでいい感じですね。
4〜5000回転のあたりから明らかに音が澄んで(きたように感じて)、アクセルの入力に対しての反応もさらに鋭敏になる(とはいえ電スロの味付けのように1に2を返すことで鋭くなったと錯覚させようとしているような不快な感覚はない)ような感覚は吸気システム“MTREC”の制御の賜物というやつでしょうか。知らんけど。
瞳を閉じれば田舎のおじちゃんの軽トラが瞼の裏にいるようなエキゾースト・ノートとともに2速8500くらいまで回して3速にシフトアップすると何千回転だったか忘れたいい感じのギアの繋がり。なかなかの加速感、スピード感に満足しつつも、ふと出している速度が気になってしまい恐る恐る速度計の針の位置を見てみると……なんと……60km/hちょっと!速度、全然出てね〜〜〜〜!!!!!!

Ver.Zなので黒メーター。ステアリングの革巻きはオーナーさんのお手製。ビートのステアリング、個人的には素のままでもそれほどやっすい感を感じないし悪くないと思うんですが、いっぱい乗る時はこういうのが地味に効いてきそうです。

しかしなんといっても驚くべきはその運転の楽しさ。普段の何の変哲もないカーブひとつひとつがサーキットを走っているかのよう(※法定速度で走行しています。)で、交差点は差し詰めカシオトライアングルとでもいったところか。いやしかしめちゃくちゃおもしろいぞコレ。ノンパワステ・ワイヤースロットルの反応の良さはあれど決して肩肘は張らずカリカリした感じも皆無。乗り逃げを検討するレベル。
冗談は置いといて、ひとまず1周まわったとこで同じく試乗しておいでと言われていた同乗者に運転を代わり助手席へ。実はビート、ドライバーの空間を少しでも広くとるべくセンターコンソールが助手席側に寄っており、その影響で助手席は若干狭めになっているようなのですが、座ってみた感じではそこまでなんか狭くもなく、割とイケそう。とはいえこの寸法で好き放題した代償がないというわけではなく、助手席側のみシートのリクライニング機構が廃されています。

その助手席の感想としては「屋根開き車のドライブって楽し~~!」。そら人を乗せるには風の巻き込みだのなんだのを考慮すべきですし、ぼくはこれの助手席に自ら人を乗せようとは思いませんが、しかし自分が助手席に乗る分には窓全開でめちゃくちゃになりつつ、背後から聞こえる音をBGM(背後だけに?)に流れる景色とか空をぼーっと眺めるのもなかなかよいものです。
この日本の豊かな四季を運転中により感じるには(命を危険に晒さない程度の)エアコン3ない運動「つけない・効かない・ない」が重要だと思っていましたが、屋根の「ない」もいいですね。
かくして試乗も終わり、「軽スポーツ(※Keiスポーツではない)も悪くないなあ」と思いながら車を降りて眺めていると、ふと目に付いたのはビートのリアフェンダーに貼ってあるステッカー。「BEAT」は遠くから見てもわかるのですが、よくよく考えると下にある文字を気にしたことがない。近づいて見てみれば書いてあるのは「MIDSHIP AMUSEMENT」の文字。MIDSHIPは当然リア・ミッドシップにエンジンが搭載されていることの意として、AMUSEMENT、アミューズメントといえば娯楽とか、遊戯施設を示す単語。もちろん大昔のシビックRSのロード・セイリングのような建前ということもあるかもしれませんが、乗った印象は確かにアミューズメントがしっくりくるものでした。
以下、ちょっと話が逸れます。
ビートはよく小さなNSXだとか、スモール・スーパーカーなんて言われたり言われなかったりしますが、その生い立ちやスケール感は紛れもなく唯一のもの。前にツイート(私は岡山国際サーキットをTIと呼ぶのでXになってもTwitterと呼びます)したことがありますが、デカくて高価で豪華絢爛、高性能な車造ってるとこなんて世界中に腐るほどあります。当のホンダとてNSXでその一端に立っていますが。一方でビートは日本にのみ存在する軽自動車という小さな小さな独自規格に則って造られています。何が言いたいかというと(今でこそケータハムのようなニッチ向け高価モデルはありますが)このサイズのこういう車なんて世界中どんな高性能で豪奢な車造ってるメーカーにだって造れやしません。ポルシェもフェラーリも、ランボルギーニにだって造れません。たった全長3.2m、全幅1.39mの小さな世界にこんなにも色んなものを詰め込んだ、夢いっぱいで、それでいて庶民にも手の届く、たまのご褒美として自分に贈るささやかな贅沢のように慎ましくも魅力的な選択肢になり得る自動車なんてどこを探したってありはしません。AZ-1とCARAも魅力的ですが、ドアが上に開くのをはじめとしてあまりにも「スーパーカーだ~~!(大声)」感が強すぎて「慎ましく」はないと思うので……カプチーノもスーパー・ストイック・スポーツカー(今3秒で作った造語)だし……
以上。それはさておき、個人的には“ミッドシップ・スポーツ”でなく“アミューズメント”であることにこの車の意義があるのではないかと思いました、まる

こんな素晴らしい車を8,000円/24hで借りられるお店があるんでsある~~~~~~~!!!!!!!!!

人生初ビートの約2週間後、居ても立っても居られなくなったわたくしのりたまδが向かったのは京都府は京都市南区上鳥羽、ニコニコレンタカー京都上鳥羽口駅店。京都駅から徒歩30分足らず(最寄りは近鉄京都線の上鳥羽口駅・徒歩5分)のところにあるこのお店ではなんとビートのレンタカーを取り扱っており、6時間5,400円(別途免責保証有)とこの手の車としてはだいぶリーズナブルな価格(それが一概にいいと言えるかどうかは……)でレンタルが可能。ちなみに借りた当時は3台ほどありましたが、(こちらのビートは全て売り物でもあるため)売れたり、貸出中に事故で……などということもあり8月5日現在は1台となっております。マジでこの手の車を普通に借りられる機会なんてそうないのでホント借り物だという意識を持って丁寧に運転しましょうね……普通に乗ってれば道を外れようのない車なので……

お借りしたのはアズテックグリーン・パールが鮮やかなVer.F。
純正色を1台ずつ並べて「この中から1台選べ」と言われればノータイムでVer.Fを選びます。

今回借りたのは9時~翌日15時の30時間。正直以前のちょい乗りで感動を覚え「所有してないけどnote書きたい!」と思っていたので、今度はもう少し冷静にこの車を感じたい・知りたいと思い、30時間と相成りました。買え(買わ)なくても借りられるのってありがたいですね。
この日は朝方こそ雨雲でどんよりとしていましたが、いつものパン屋でパンを食べ、暫く走っていると晴れ間が見えてきたので屋根を開けると……

最高!!この車欲しすぎ!!!!誰か買って!!!!!
普段なら天井に遮られているところを全て空が埋め尽くしているのだからその開放感といったらもう半端ではなく、例えどれほど素晴らしい、高価な車と遭遇しても屋根が開いている車で風を受けながら走っているという事実の前には無力といえるほど。屋根を開けたホンダ・ビートはまさにフィン・ファンネル・バリアを展開したνガンダムといったところで、道端のうどん屋に赤いアルファロメオ・75が停まっていても、屋根が開いているの一点張りでこちらが勝利(何に?)。
片側1車線、交通量の少ない1本道の道路を走っていて感じたのは懐の広さ。といっても~2000回転では走れませんけど常用回転域としてはだいたい2800~4000回転くらいで、まあ前述のような道であれば5速時々4速で事足りるほどでした。

いい気分 この車で色んなとこに行って色んなものを見たり食べたりしたい

しかしながらこうやってのどかな風景の中、青空を天張り代わりに、田舎のおじちゃんの軽トラみたいな音を背負ってトコトコ走っていると、なんともいえない趣のようなものを感じます。もちろん六甲如何にもなカーブの連続するワインディング・ロードをちょっといい調子で走ってもきっと楽しいのでしょうが、なんでもないただの田舎道を特にアクセルを不必要に踏み込んだりギアを1段落としたりすることもせず、ただただ普通に走ることで見えてくるもの、味わえるものもあるように思うのです。家帰る前にちょっと寄り道してこ。

ホントいい色ですね。

2日目。返却に向かう……のですがこの日は1日中雨(そこそこの強さの雨)。幌を閉めると雨音がしますが、なんかテントみたいでいいんじゃないでしょうか。個人的には好みです。普通の屋根の車より雨の日が楽しくなるかもしれません。この車両の幌の状態が一般的なビートと比べてどうなのかはわかりませんが、雨漏りは減速時にポタポタする程度で大したこともなかったので、もしこれが平均的な程度のものなら「気になって運転どころではない!」っていうレベルのものではないかなと思います。

燃費の方も18km/Lとなかなか。別に燃費を気にした運転はしていないのですが、適当に乗ってこれくらい走ってくれるのはありがたい話。燃料タンクの容量が24Lであることだけが難点らしい難点でしょうか。ともあれこれにて30時間のレンタルも終わり、無事に返却。大変美味でした。ごちそうさまでした。

~~借りた2ヶ月後~~

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めげない、懲りない、学ばない。おかわりタイムです。今回のレンタカーは幌がロビンスかどっかのキャンバス幌×ガラス窓タイプ。これだと信号の合間に開けられなくも、閉められなくもない感じ。正しく畳めてないのか終始ボリューミーな乗っかり方。
しかし「ホントに欲しいんならその金で部品を買いなよ」というその道の方々からのアドバイスはどこへやら、また30時間借りています。2回目の今回はいよいよ「また乗りたくなったから」。得られたのはもはや一時的な満足感のみ。もう車体を買いなよと言われても全く返せる言葉がありません。
ちなみに今回は高速道路を利用してみましたが、ハッキリ言って下道の方が燃費も心地も何もかもいいです。基本的にキツい。馬力でいえば前に乗っていたチンクエチェントはカタログ54馬力(イタリア車の公称なので……)でしたが、排気量の差かはたまたギア比か、あっちの方が圧倒的に巡航はラクでした。まあ何馬力でも100km/h出しとくのに5速5000回転じゃ話になんないよな
逆に下道のんびり旅行なんかにはぴったりの車ではないかなと思います。屋根も開くし車体が小さいので道草もよりどりみどり、バイキング形式で堪能できます。

これまでの人生、「PGのガンプラはなあ」と思いながら買ったHGやMGの総額がPG買えるくらいになってるみたいなお金の使い方ばかりですが、ビートにおいても多分に漏れず欲しい欲しいというけど結局買わない方のムーブに近いです。ビートなんかはまだマシとか聞かないでもないですが、それにしたってホンダの部品といえばネタにされるくらいですし、そもそもその「マシ」はもっと出ないホンダ車の人の声だったりもしますし。ぼくみたいな人間は借りて満足!くらいの世界に留まっておくのが幸せな気がします。

オブジェという言い訳が利く範囲で
好みのパーツがついてないことは普通である中古車において気になるところは抑えておきたい
(抑えるのは機関部とかもっと基本的なところでしょ?)
ホントに欲しいなら本とかミニカーじゃなくて部品を買いなよ
それは言い訳利かなくない?

おわりに

何はともあれ、ホンダ・ビート。凝り固まった先入観をぶち壊してくれる、めちゃくちゃ楽しい車でした。
正直かなり気に入った車なので、もう一度何かしら書きたくなりそうですしまた借りるなど機会があれば書きたいと思います。ということで①、完とします。フォロワーさんもよく見たらビート乗ってる人がちょいちょいいたので機会あれば見せてくださいな。飛んでいきます。あと1~2ヶ月もすればどんどん屋根開きに適した季節がやってくるのではないでしょうか。楽しみですね(誰が?)

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