見出し画像

囚人


僕は夜の囚人
異邦人の心を
感じてみてわかった
自分の心の正体
傷つきたくないから
昨日に続いて
僕は逃げる旅をする

その暗い暗い闇は
僕を蝕むというより
僕を僕から引き剥がしていて
何人たりとも僕に寄せ付けない
ここに囚われて長いけれど
僕にはまだここがどこだか分からないから
今日も壁を削って
生きている証を確認する他ない
証明というより
なんの論理もない自明の理を
確認する他ない

いつか僕は心が内側から腐っていって
腐る場所すら無くなっていって
土と一緒に眠りにつくのかな
微生物に分解されて
今世の業と共に
来世へと、無限の旅へと誘われて
煩悩性の心の活動を止める為にまた
命を授かり、同じ場所に
囚われてしまうのかな

それでもいいからさ
どうか安心して眠れる夜を
孤独に潰されない夜を
不安が血管を巡らない夜を
暖かい温もりを感じられる夜を
炎天下でも極寒でもない
絶対的な暖かみと共に
ゆるりゆるりと舞う風と共に
揺蕩うことができる夜を
そうやって緩やかに流されながら
君を好きになれる夜を
僕が君を好きになった僕を好きになれる夜を
君が僕を好きになれた僕を好きになれる夜を
言葉を優しく包み込める夜を
ビニール袋が爪楊枝で破けないように
僕の手で世界を抱きしめることができる夜を
その世界の中で君が幸せに暮らしていける夜を
殻を破ってひび割れた夜を
産まれたばかりの世界を抱っこして
深い眠りにつかせる夜を
冷たい眼差しを遮断する夜を
心無い言葉を受け止める確固たる決意と共に
全身の脈動が熱い血を巡らせる夜を
そういう君と愛し合える夜を
夜が僕を認めてくれるようになるまで
僕はそういう君とそういう夜を
旅したい
そうして君と過ごす中で
僕は囚人に別れを告げて
人間世界と手錠を共にする人になるのだろう
だから僕は、夜の囚人からは嫌われないだろう
たとえ嫌われたって
僕は繋がる心と友達だから
君に愛されることができる
そうして僕はまた旅を続けるのだろう
昨日とは違う歩き方で

逃げていた方向は
いつしか前に向くだろう
それが僕の旅だと
そう実感してみせる
君の為に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?