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就労支援や職業教育を通じて地域の中小企業を活性化 大阪地域職業訓練センター(A´(エーダッシュ)ワーク創造館)

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NPO法人福祉のまちづくり実践機構ではホームレスや障がい者、ひとり親家庭など職につくことが難しい人たちを就労につなげるしくみづくりとして、「行政の福祉化」の発展につながる調査研究に取り組んでいます。

ここでは、大阪版ソーシャル事業所認証にかかわっているさまざまな団体、企業を紹介します。

今回は就労支援や職業訓練を通じて、中小企業の人材育成やそれを通じて地域の産業振興に取り組んでいる大阪地域職業訓練センター(A´ワーク創造館)の活動についてご紹介します。
館長の高見一夫(たかみ・かずお)さんにお答えいただきました。

大阪地域職業訓練センター(A´ワーク創造館)

前身は職業能力開発促進法に基づいて作られた地域職業訓練センターで、厚生労働省により1991年に全国82ヶ所に設置されたものの一つ。地域の中小企業、特に小規模企業の経営者およびそこで働く人たちに対して、講座、就労支援、貸館などを通じて、職業訓練の場を提供することを目的としている。
愛称のA´(エーダッシュ)には最寄りの駅の芦原橋からダッシュしようという意味と、アルファベットの一番最初の文字であるA、基礎から始めようという意味が込められている。

1年で6万人程度が利用する職業訓練施設

--A´ワーク創造館の役割を教えてください。
 就職にむけてスキルを身に着けようとしても、ハローワークの職業訓練の試験に通らない。なかなか就職できない。という負のスパイラルの問題が、A´ワーク創造館のある芦原橋をはじめ大阪府内の複数の地域課題としてありました。そういった方たちに職業訓練なり支援なりをするためにここが立ち上がりました。
2009 年より、LLP(現大阪職業教育訓練機構)がA´ワーク創造館の運営に関わることになりました。当初は年間1万7000人ほどの利用でしたが、今では     1年で6万人程度が利用するようになりました。

--これまでA´ワーク創造館ではどのような事業をされてきたんですか。

おおまかに言うと1.職業教育訓練、2.中小企業支援・協働、3.就労支援を柱としています。

職業教育訓練については、自分たちで企画・立案したレディメイド講座と、企業からの研修や運営を受託して実施するオーダーメイド講座、府が実施する公共職業訓練があります。
レディメイド講座は開館当初からCAD、Illustrator、Photoshopなどのパソコン講座、ウェブ制作、ビジネススキルなどの講座を開講してきました。特に近隣の工場や事業所で働く在職者の方たちが夜間、土曜日に学べるように配慮しながら運営し続けてきました。

公共職業訓練については自治体や国経由で、求職中や離職中の人に対して職業訓練をすることで、次の仕事に就くサポートをするものです。かつては、雇用保険に加入していた求職者を対象とする公共職業訓練だけでしたが、今は雇用保険に入っていなくても、条件が揃えば月10万円の生活給付金をもらいながら受講できる、求職者支援訓練もあります。

--中小企業支援・協働についてはいかがですか。

ここ3年ぐらい取り組んでるのが、地域の中小企業と連携をして一緒に人材育成をする事業です。企業さんができるだけ主体となり、その企業さんのニーズに合ったスキルを育てたり、職場作りをすることでその企業の人材確保と育成を担う事業を始めようとしています。

そのためにエスペランサ靴学院という靴学校を作りました。この地域の地場産業である靴の生産を担う人材育成のための学校です。学校の前身は浅草で1973年から始まった日本で一番古い靴学校です。全国の跡継ぎの方が靴づくりを学ぶために通う学校だったのですが、閉鎖する話になりました。そこで大阪の学院卒業生が権利を引き継ぎA´ワーク創造館でやることになりました。2021年に大阪校の第1期生が入学しました。今は海外製品に押されてしまい、価格で負けてしまうので、オーダーシューズの生産に切り替えて販路を広げていけたらと考えており、オリジナル商品を作れるように値決めや発信など売り方やブランディングなど、靴作り+ビジネスをトータルに教えるカリキュラムを実施しています。

また、認定職業訓練を実施しています。これは民間の企業が自社の社員を研修したり、職業訓練したいと考えたときに、そのカリキュラムを作って大阪府に申請をし、府に認められたら、大阪府知事の名前で修了証がもらえます。さらに、人材支援開発助成金も使えます。
しかし、小規模企業の場合は一社でなかなかそんな訓練やカリキュラムを作ったりできないし、受講者も集められません。そこで、「大阪ものづくり企業認定職業訓練協会」という協会を作り、地域の地場産業を担っている小規模企業を集めて連携して講座を作るということをやっています。現在、会員数は14社です。

日本版のコミュニティカレッジのような存在
--A´ワーク創造館がこのような取り組みをするのはどうしてですか。

やはり、今技術の進歩も変化も早い時代なので、学生時代に学んだことや入社したときに教えただけの知識では足りません。しかし、一社で取り組むことは難しい企業さんが多いんです。そこで、社員に技術を身につけさせなければ会社が潰れるかもしれないし、不安もあるので、地域で受講することでスキルアップを目指しているところです。

海外ではコミュニティカレッジなどがあり、社会人教育が充実していますが、日本ではそのような社会人教育機関が企業まかせになってきました。特に大企業では内部で学校を作ったりと、研修をやっていましたが、中小企業はそういうことをできる体力がありません。私の若いころは中小企業でも親会社からの研修があり教育体系がしっかりとしていましたが、今はそのようなことをする企業も減ってしまいましたので、このような取り組みを始めたところです。

--就労支援についてはどうですか。

A´ワーク創造館は大阪府の障がい者や就職困難者の就職支援について定めたハートフル条例の「職場環境整備等支援組織」に認定されています。認定分野は生活困窮者ですが、分野に限らず、障がい者や就職困難者の就労支援を実施しています。地域若者サポートステーションが全国展開される以前から若者支援に取り組んだり、リーマンショック後は若者や生活保護受給者、就職困難者等を対象としたプログラムに取り組んできました     。

現在は生活困窮者支援の受け入れ企業の開拓と就労準備事業を大阪府や大阪市から受託しています。事業の実施主体である自治体に関わり、就労支援の仕組みづくりのお手伝いや相談員の研修を行っています。

また、最近では高校生の就労支援も行っています。今大学進学率が60%を超えているので、高卒の求人がどんどん減っているのが実情です。特に教育困難校の生徒たちの就職は非常に難しく、就職しても半分ぐらいが3年間のうちに辞めてしまいます。近所に西成高校がありますが、そこに入り込んで、生徒たちの支援を先生と一緒になってやっています。具体的には、実際に実習や体験をさせさせてもらえる企業さんの開拓と体験プログラムを作り、就職した後の定着支援やフォローアップをしたりといった取り組みをしています。

これからの展望について
--今後の方針はどのようなものですか。

今後考えているのは、地域連携です。
就職困難層の支援以前に、受け入れる会社がなくなってしまっては困るということで、企業の支援もしようと考えています。地域の地場産業を担っている企業を群として支援することで、雇用の受け皿になってくれることを期待しています。
やはりその際には地域の企業さんとの関係性が大事だと思います。物事というものはこちら側が描いた通りに全部進むわけではなく、出会った人と関係ができ、その中で要望を受けてこちらが実施するようなやり取りの中から事業が繋がっていくことが多いのではないでしょうか。特に浪速区や西成区     の地場産業である靴製造や、近隣の金属、プラスチックやゴム製品、中小企業が多く立地している地域性も大事にしたいと思いますね。

--最後にS認証に対する期待やご意見がありましたら教えてください。

特定非営利活動法人法ができた1998年以降、コミュニティビジネスは急速に広がり、大阪市も立ち上げ資金の提供や支援団体を通じて支援に取り組んでいました。その時の評価基準はテーマ設定の妥当性、解決策の有効性、新規性、波及効果、持続可能性等でした。
以来、活動の主体も活動内容も多様化しています。中には、一見社会課題解決を謳い、効果的な活動をしているようでも、「新手のビジネス?」「社会のしくみになるの?」と違和感を感じるものもあります。S認証を考えるにあたっては、改めてその価値観を明らかにする議論をお願いしたいと思います。


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